原油、天然ガス価格高騰の背景にあるのは、熾烈な「エネルギー資源獲得競争」

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国会の方は衆参両院での代表質問を終え、いよいよ本日衆議院解散。
 
31日の投開票までは選挙モード一色になると思われますが、同じ盛り上がりでも、どこまで上がるか分からないのが原油価格。
 
経済産業省が13日発表した11日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は、4日時点の前回調査と比べて2円10銭高い162円10銭となり、平成26年10月以来約7年ぶりの高値となりました。
 
これで値上がりは6週連続となり、調査を委託された石油情報センターによると、世界経済の回復基調を背景に原油の需要が高まる中、天然ガスなど他のエネルギー価格の高騰や米国でのハリケーンによる石油生産設備への被害の影響で原油の需給逼迫感が高まり、原油価格が上昇しているとのことですが、私も長期トレンドを確認すべく、経済産業省発表データを基にプロットしてみるとやはり、今年に入ってからは常に上昇傾向を示していることが良く分かります。
 

【2021年に入ってからの給油所レギュラーガソリン価格推移(経済産業省 給油所小売価格調査データを基に自身で作成)】
 
経済活動の再開と見事にシンクロし、世界的に高騰する原油価格ですが、国内のガソリン価格は今後170円を突破する可能性が高いとあり、家計や企業にとっての逆風が新型コロナウイルス禍からの経済回復に水を差しかねないことを危惧するところです。
 
また、価格が上昇しているのは原油に留まらず、天然ガス、さらに原子力発電所の稼働に必要なウランも値上がりしているという報道も相次いでおり、アメリカでは先んじて値上がりしていた天然ガスが13年ぶりの高値となっていて、ガスの価格上昇が原油価格をさらに押し上げるのではないかという見方もあるとしています。
 
つまりは、これから寒さが深刻になれば、天然ガスの代替手段として原油を使って火力発電所を稼働する動きが出てくる可能性もあり、そうなれば原油の需要が高まるという訳だそうです。
 
一方、EU(ヨーロッパ連合)の執行機関であるのEC(ヨーロッパ委員会)は今週、高騰する天然ガスに対して、自らの身を守るために共同で購入することを検討していると報じており、電気代が急激に上昇するスペインなどが提案しているとのことですが、ドイツでは、風力発電が期待した発電量を賄えないことによる代替エネルギーの問題(頼みの綱であるロシアとのパイプラインの関係)などが顕在化しています。
 
さらに、脱炭素化への転換を見越して、CO2を排出しない原子力発電所の稼働への期待をもとに、その燃料であるウランに対する注目が集まり、ヘッジファンドがウランを大量購入する中でウランの価格が37%上昇しているとも伝えられており、見た目から「イエロー・ケーキ」とも呼ばれるウランの先物価格は、2012年以来の1ポンド=50ドルの高値に迫ったとしています。
 
なお、リーマンショック前の2007年6月には1ポンド=136ドルまで挙がったという実績もあるとのこと。
 
こうして、原油、天然ガス、ウラン、さらには石炭の世界的な価格上昇は、グリーンエネルギーだガーボンニュートラルだと口では言いながら、自国の電力安定供給や経済活動を維持するためには脇目もはばからず化石燃料を使うというのは、まさに綺麗事ではない、熾烈な「エネルギー資源獲得競争」な訳であります。
 
こうした状況は、言わずもがな日本も同じ。
 
昨冬に経験した電力需給逼迫は、経済産業省の見通しにおいて、実はこの冬も東京管内ほかで厳しい需給となると予想されています。
 
加えて、このエネルギー資源価格高騰。
 
コロナ第5波が落ち着き、経済活動を徐々に再開していくことに明るさを取り戻す一方、経済活動は愚か国民生活に影響する電力需給逼迫がこの先待ち受けていることは大きなリスクであり、私自身はこうした点をしかと認識するとともに、この後の衆議院選挙においては、こうした「綺麗事」では済まされない「エネルギー資源獲得競争」の世界の中で、日本がどうして生き残っていくのか。
 
将来のことの前に、目の前に横たわる危機に「理想論」ではなく「現実論」で論戦を繰り広げられることを切に期待するところです。