北海道寿都町と神恵内村の文献調査報告書案が公表される

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関西電力が昨年10月に策定した「使用済燃料対策ロードマップ」を踏まえ、2月8日には、美浜発電所、高浜発電所、大飯発電所における「使用済燃料の乾式貯蔵施設設置計画」について、福井県、美浜町、高浜町、おおい町に対し、安全協定に基づく事前了解願を提出したことは既にお知り置きのところ。
 
なお、乾式貯蔵は、東日本大震災時も、福島第一原子力発電所に設置された同貯蔵方式の頑健性が保たれましたが、原子力発電所構内の乾式貯蔵施設の設置については、日本原子力発電の東海第二発電所でも運用されているほか、現在、中部電力浜岡、四国電力伊方、九州電力玄海に関しても、原子力規制委員会による審査や、設計・工事認可の申請準備などが進められています。
 
先般開会した福井県議会においては、本件が大きな焦点だと取り上げられていますが、こうした背景や技術的観点を踏まえ、冷静な判断をお願いする次第です。
 
また、昨日開催された資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス分科会事業分科会 特定放射性廃棄物小委員会 第1回 地層処分技術ワーキンググループ」においては、原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定を巡り、全国で初めて文献調査を進めてきた北海道寿都町と神恵内村の調査報告書案が公表され、政府が平成29年に公表した科学的特性マップで「好ましい地域」としたエリアとほぼ重なり、2町村いずれも次の段階の概要調査に進む適地があるとして、移行が可能としました。
 
文献調査は令和2年11月から開始し、対象地域の火山活動や活断層の記録、経済的価値の高い鉱物資源の有無などに関する約860点の研究論文や地質データを収集したものであり、同ワーキンググループでは、事業主体の原子力発電環境整備機構(以下、NUMO)が評価ならびに検討プロセスについて説明していますので、以下リンクよりご覧いただきたく。
 

→NUMO「文献調査段階の評価の考え方」 に基づいた評価及び検討のプロセス(2月13日 地層処分技術WG第1回会合 資料5より)はこちら
 
最終処分地選定を巡っては、次の概要調査に進むには地元の知事や市区町村長の同意が必要となりますが、北海道の鈴木直道知事はかねて調査反対を表明しており、この公表を受けて「現時点で反対」とするコメントを発表しています。
 
知事の考えの拠り所となっているのは、平成12年に制定された北海道における特定放射性廃棄物に関する条例が「処分場を受け入れる意思がないとの考えに立って制定されている」ことにあると考えられますが、一方、今後は道議会での議論とともに、様々な機会を通じて把握した道民意見を踏まえて「適切に対応したい」としており、「現時点で」の言葉と合わせ、まだ含みを持たせているものと認識する次第です。
 
国家的課題に果敢に手を挙げていただいた寿都町と神恵内村には心から感謝するとともに、次の段階に進むことを後押したい気持ちで一杯である他方、このまま鈴木知事がお考えを変えないまま判断された場合、また「ゼロ」の振り出しに戻ることから、全国で複数の自治体が文献調査に手を挙げることを、これも心から期するところです。
 
なお、繰り返しになりますが、本件は先送りできない「わが国が抱える課題」であり、「国主導で」とのスタンスは当然のこととしつつ、原子力発電所立地地域においても、真にわがこととして行動を起こす時期にあるのではと考える次第。
 
あくまでも私見ですが。
 
(お願い)
このブログをお読みいただいた方だけでも結構ですので、負のイメージを与える「核のごみ」ではなく、(少し長いですが)「原子力発電所で発生する高レベル放射性廃棄物」と称していただけるようお願いいたします。