韓国のNGO団体が福島第一原子力発電所を視察

ブログ 原子力

「科学が風評に負けるのは国辱だ」と言ったのは故石原慎太郎氏。
 
今や懐かしい東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題を巡っての発言でしたが、これと同義の「科学が風評に負けてはならない」との言葉は、とりわけ福島第一原子力発電所事故以降に同発電所敷地内に貯留するALPS処理水の海洋放出を巡り、吉村大阪府知事や松井前大阪市長が、科学的根拠や事実に基づいて判断することの重要性を世に問うたもの。
 
とかく本件に関する「風評」については、国内はもとより、周辺国からも揶揄する声が飛び交ってきた訳ですが、その中でも酷いと感じたのはお隣韓国の前政権による福島第一原子力発電所の敷地に保管された汚染処理水は放出してはならない危険物質」という主張。
 
原子力発電所から出るトリチウム水については、韓国を含む世界の発電所が同様に希釈して海洋放出しているほか、福島第一においては多核種除去設備(ALPS)で処理された「処理済水」であるのに対し、これを「汚染処理水」と称すること自体、「風評の流布」と感じるところですが、この前政権の主張は、まだ多くの韓国人の脳裏に強く残っているのだそう。
 
そうした中、26日付の原子力産業新聞に、韓国のNGO団体「The Fact and Science」が12月13日、福島第一原子力発電所を訪れ、廃炉作業の進捗やALPS処理水の放出に向けた準備状況などを視察したとの記事がありました。
 
同団体は、「事実と科学に基づく合理的な問題解決を通じた先進的な社会構築」を目指し、2018年に韓国内で設立されたネットワークであり、処理水がどのように管理されているか直接確認し、正確な情報を韓国政府、国会議員、韓国国民に伝えることを目的に、同団体ディレクターのパク・ギチョル氏(元韓国水力・原子力会社〈KHNP〉副社長)ら7名が福島第一原子力発電所を訪れたとのこと。
 
一行は、1〜4号機全景の他、原子炉建屋内の冷却に伴い発生する汚染水を浄化処理するALPS、ALPS処理水の海洋放出に係る設備の建設現場、測定・確認用タンクエリア、環境モニタリングの一環として行う海洋生物飼育試験の施設などを視察。
 

【敷地内のタンク群を視察するご一行(東京電力ホームページより引用)】
 
視察後、「ALPS処理水の海洋放出については、まずは地元の方々の理解を得なければならない。大変なことだが、信頼を得られるよう願っている」とコメントしたほか、現場を訪れた所感として、「数千人もの人員が復旧のために黙々と働く姿はとても感動的だった」と述べました。
 
そのうえで、ALPSで取り除くことのできないトリチウムに関し、韓国他、多くの国の原子力施設で排出されている事実に触れた上で、「韓国では海洋放出に反対する人々がまだ大勢いる。福島第一原子力発電所に対する歪んだ情報を正し、事実と科学に基づき原子力発電と放射能に対する誤解と恐怖を払拭していきたい」と意気込みを語りました。
 
こうした行動を大いに歓迎するところですが、既に視察のIAEA始め、国外からのレビューにより、安全で適切な処理方法であることの証明が重ねられ、より一層「科学的根拠」に基づく理解が進むよう期待する次第です。
 
なお、国内においては経済産業省が本格的な理解活動を開始し、「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと。」と題したインターネットサイトやテレビコマーシャルの放映を行っています。
 
とかく、日本は大事なことまで「空気」で決まる風潮がありますが、このALPS処理水のことを契機に、自分たち自身で「科学的」に思考することにつながれば、放射線も「正しく怖がる」、さらにその先には、「原子力か再エネか」といった不毛な二項対立議論とも決別できるのではと考えるところです。
 
考えが飛躍し過ぎかもしれませんが、皆様方におかれましても、まずは以下のリンクより「ALPS処理水」のことについて再確認いただければ幸いです。
 
→みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと(経済産業省サイト)