エネルギー政策は、S+3Eのバランスを取り続けることが大前提

エネルギー ブログ

梅雨が明けたという気分のせいでしょうか、吹く風もどこか乾いたように感じた昨日。
 
気温のほうも待ってましたとばかりに上昇し、新潟県新津では35.0度と北陸初の猛暑日となり、15日15時時点の気温としては全国最高になったとのこと。
 
敦賀の最高気温は31.9度(15時38分)ということでしたが、ここからは軒並み30度超えの天気が続くことから、こまめな水分補給など体調管理に留意していきましょう。
 
さて、国の政策議論の動きと連動し、私のブログもエネルギー関係が続き恐縮ですが、本日は13日に行われました次期「第6次エネルギー基本計画」策定に向けた検討を進める、経済産業省総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(第45回会合)について、確認した論議の内容を書き留めておきたいと思います。
 
まず、一昨日、同調査会の「発電コスト検証ワーキング(以下、コストWG)」で報告された内容を踏まえ、「太陽光が初めて原子力のコストを下回った」との報道があったことへの考えを記載しましたが、これに関しては、この日出席されたコストWGの山地座長より、「個人的な見解だが、技術経済的に見れば、再稼働待ちの原子力発電所は、追加安全対策も既に投資済であり、追加コストの点でも、最も安い脱炭素電源になると思っている。」とのコメントがありました。
 
「前提を変えれば、結果が変わる」という前提のもとでの試算であることからすれば、さらに原子力の稼働率を試算モデルの70%でなく、現在実績の80%に置けば、さらにコストは下がることは明白でありますが、エネルギーはコスト至上主義ではありませんので、これ以上論ずるのは止めておきます。
 
ただ、個人的見解としながらも、座長ご自身が発言されたことについては、事実として認識しておきたいと思います。
 
「今後のエネルギー政策に向けた検討」を議題に置いた基本政策分科会は、座長含む24名の錚々たる顔ぶれの有識者が集う中、①2050年シナリオ分析の結果比較、②発電コスト検証における議論について(先のコストWG報告)、③2030年に向けたエネルギー政策の在り方に関する資料説明がされ、そのうえで各委員からは闊達な意見提起がされました。
 

【第45回基本政策分科会 資料3「2030年に向けたエネルギー政策の在り方」より抜粋】
 
挙げられた意見を全て拝聴し、私の視点でしかありませんが、議事メモ的にポイントだけ書き留めさせていただきます。
 
◉杉本委員(福井県知事)
2050年カーボンニュートラルという、より高い目標を達成したり、原子力発電の安全性をより一層高めて立地地域や国民の理解を得ていくためには、原子力の技術革新に向けた研究を計画的に進める必要がある。この点について現行のエネルギー基本計画では具体的に書かれていないが、次期計画では2050年に向けた政策対応として原子力の研究開発や人材の確保育成策をもっと具体的に示して頂く必要があると考えている。
 
◉豊田委員(日本エネルギー経済研究所 理事長)
・発電コストに関する山地座長の説明を大変興味深く伺った。一部のマスコミは、「太陽光が最も安価な電源であることが示された」と報道しているが、不正確な報道だと思った。2030年に新設された伝統的な脱炭素電源の中で原子力が最もコストが低いグループの一つであるということは確認されたといって良いと思うが、資料をよく見ると、また山地座長の説明を伺うと、脱炭素電源の中でも依然として原子力が最も安いと言っているように私には思えた。
・再エネは大きな幅があるが、このインプリケーションは何かと言うと、全ての地域においてこの安い再エネのコストでは発電しないということを言っているわけで、どの地においてどのコストになるか、やってみないと分からない。その意味では、脱炭素電源の中で原子力が最も安いと言っていると思う。 
 
◉工藤委員(三井住友銀行専務執行役員)
・再エネの最大限導入に賛成の立場であるが、拙速な導入に伴うレジリエンスの脆弱化を懸念している。再エネ設置による国土への負担、例えば国立公園などへの自然環境、斜面の新規造成、農業への影響というのは十分検討いただきたい。3E+Sがあくまでも前提だと思うので、これを堅持したエネルギー政策を検討していかなければいけないと思う。
NDC達成に向け、再エネの最大限導入を前提としても、原子力に対する期待は大きい。加えて、化石燃料の価格が高騰していることや、夏に向けて国民の安定供給への意識が高まることから、政府と事業者が協力して原子力発電の信頼回復に向けて努めていき、エネルギー政策の中に反映していくものと思う。
 
◉柏木委員(東京工業大学 特命教授)
計算すると発電量が9,500億kWhで1割減る。熱と電気の最終エネルギー比率は25%である。今、25%が電力で、74%が非電力である。ほとんど2030年でも変わらない。そうすると熱はどうするのかという話になるので、熱の脱カーボン化ということも併せて考えていかないと、電力ばかりがいっても、たかだか25%の話の中の話になってしまうので、併せて考えるべきである。
 
◉崎田委員(ジャーナリスト・環境カウンセラー)
地域とのコミュニケーションということを強くお話する。特に原子力だけでなく全てのエネルギー源のことを入れて、やはり地域でのコミュニケーション、エネルギーに対する全体的なそういう場を作っていくということは大変重要だと思っているので、変わらずに皆で考えていきたいと思っている。
 
◉隅委員(東京海上日動火災保険㈱ 相談役)
資源や立地に恵まれない我が国のエネルギーコスト、これは現在も含めてもともと高い訳である。国際競争力を維持するのは、原子力などの自前のエネルギーで供給の安定とコストの低減を図ることは不可欠である。過度の再エネ依存や統合費用の増加により、エネルギーコストが更に大きく上昇すれば、日本の主要製造業の海外流出による産業の空洞化を再び招くことになる。原子力の人材や技術の維持・向上のためにも、より安全な軽水炉へのリプレース、更に新型炉や小型炉の開発と導入、これを計画にしっかり盛り込んで頂きたい。
 
◉松村委員(東京大学社会科学研究所 教授)
・統合コストがとても重要で、ここに注目が集まるように工夫しなればならない。ガス火力、現状ではLNG、将来的には2050年を目指せばゼロエミッション水素を使ったガス火力というのが統合コストを考えると重要な電源ということが改めて明らかになったと思う。2030年のことを議論しているわけだが、私たちは2050年にネットゼロを目指すことをコミットしているわけで、その途中経過としてバックワードで解いていって、これくらい必要だという側面も計画に入っているのだと思う。その点で2030年は途中経過に過ぎないので、その2030年として打ち出したものが、仮に達成が2031年になった、2032年になったということがあったとしても、2050年に向けての着実な歩み、効率的な歩みになっているであれば、低く評価する必要はないと思う。ここではあくまでも通過点としての2030年を議論していることを私たちは忘れてはいけないと思う。
 

【第45回基本政策分科会 資料3「2030年に向けたエネルギー政策の在り方」より抜粋】
 
◉山口委員(東京大学大学院工学系研究科 教授)
エネルギー政策基本法によれば、エネルギーは国民生活の安定性、経済の維持に不可欠であるので、経済と環境の好循環、環境の保全と経済社会の持続的な発展を両立させるということが重要だと示されている。それをどうやって示すのかというとエネルギー選択の一つのポイントになるわけだが、それぞれのエネルギー、シナリオの3E+S、レジリエンスという視点を加えた特性評価をしっかり行わないといけないと考える。
特に原子力については控えめな条件としているように思う。例えば、原子力の稼働率、世界では2000年以降、ずっと80%を超えているし、日本も90年代から2000年頃にかけては80%の水準にあった。豊田委員からもご指摘あった通り米国ではこの10年、90%程度の水準をずっと維持している。原子力は信頼回復を努め、安全優先で再稼働するという方針を今日示して頂いたが、それについては極めて適切だと思う。また、説明でもあったが、原子力発電、これは新しい規制基準のもとで安全性が著しく向上と言える。それは確率論的リスク評価が義務付けられ定量的に示された、このことはしっかりお伝えしないといけないと考える。
・2030年から先、あるいは2050年から先、失速してしまうようではダメで、そのためには適切なエネルギーポートフォリオ、それによってリスクに備える、そういったものを用意しておくことが重要だし、とりわけ建設に時間はかかるわけだが、建設されれば60年に渡ってカーボンフリー電源である原子力、それの依存度低減というのは論外で、最大限活用という意味では新増設・リプレースに取り組まないといけないと思う。このエネルギー政策の長期に渡る持続性の視点を重視すべきと考える。
 
◉白石分科会長(熊本県立大学 理事長)
・本日の議論を踏まえると2050年のカーボンニュートラルに向けて2030年に2013年比で46%削減することを考えるのは、2030年はあくまでトランジションである。私としては国としてかなり大きな投資をしなくてはいけないと思っているが、そういうことも踏まえて考えることが非常に重要だと痛感している。
発電コストについて、私も本日出た数字が独り歩きすることについては、非常に心配している。さらに2030年を考えると率直なところ、原子力は頑張れば、現行の目標を何とかやれるかなと、そういう感じがないでもないが、同時に資料を見ると太陽光にしても陸上風力にしても地熱にしてもバイオマスにしてもあらゆるところで環境省の関連するところが非常に多い。やはり環境省が中心となってどうやってやるのか、そもそもできるのか、きちっと考えていただきたい。
 
◉保坂資源エネルギー庁長官
レジリエンスの観点、ミックスの数字が独り歩きすると困るというか、この国の安定供給をどういう形で達成していくかも含めて、懐の深いエネ基にしておく必要があると強く思っているので、引き続き皆さんのご意見を踏まえながら、そういうエネ基ができるかどうかということをご議論いただければと思う。
 
以上、端折ると意味合いが変わってしまうこともあるため、議事的に書き留めましたが、実際にはこのような意見がある中において、第6次エネルギー基本計画の中身が策定されつつあるということになります。
 
会の冒頭で梶山経産大臣は「エネルギー政策を進める上では、3E+Sのバランスを取り続けることが大前提である」と述べられました。
 
次の21日の会合にて、その案が提示されるとも言われていますが、大臣の言葉に沿った、真に我が国の国情に見合ったエネルギー政策となるのかどうか、引き続き注視をしつつ、自分なりの考えも持ち合わせておきたいと思います。
 
 →→→基本政策分科会(第45回)の全ての資料はこちら
 
(参考まで)
「2050年シナリオ分析の結果比較」はこのようになっていますので、イメージだけでもお知り置きください。