GE日立ニュークリア・エナジーが「小型モジュール炉」を受注

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原油価格高騰による国民生活や経済活動への影響で示されるよう、エネルギー資源の価格安定というのは極めて重要なことが分かります。
 
世界的な動きを見てみると、高騰しているのは原油だけではなくガスや石炭も、そして「ウラン」も同じであり、ウランに関しては国際価格が長期・スポットとも8月頃から上昇を続けている状況にあります。
 
スポット価格は1ポンド当たり、当初の30ドル前後から11月には約1.5倍の45.75ドルに高騰しており、直接の原因はカナダで設立された上場ファンドがウランの現物を大量買いしているためですが、その他にも投資家の動きが活発化している背景には、脱炭素化の流れで原子力発電が見直されていることが影響しているとのこと。
 
このカナダに関しては、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の原子力合弁会社、GE日立ニュークリア・エナジーは2日、次世代原子力の「小型モジュール炉(SMR)」を電力大手カナダ・オンタリオ・パワー・ジェネレーションから受注したと発表しています。
 
日本勢の小型の商用原子炉の受注は初で、既存の原発よりも炉が小さく、理論上は安全性が高いとされるものの、脱炭素の流れが強まるなか、日本の原子力発電輸出が再開されることとなります。
 
決して原子力ひいきの視点で申し上げるのではなく、欧州や米国、中国にロシアなどの主要国の動きを始め世界全体の動きを見ても間違いなく、世界の潮流は「脱原子力」ではなく「原子力再利用」であると認識すべきであり、日本はこの潮流に目を逸らしていてはいけないものと考えるところです。
 
さて、そのGE日立が受注したSMRですが、日経新聞の報道によれば、受注額は非公表としているものの3000億円規模と見られ、GE日立は設計と機器の調達を担うとし、2022年内に建設許可を申請し最大4基を建設、早ければ2028年に初号機が完成するとのこと。
 
日立が強みを持つ軽水炉技術を使った出力30万キロワット級の「BWRX-300」と呼ばれる小型原子炉を納入する訳ですが、小型原子炉は現在商用化している出力100万キロワット級の原子炉に比べて出力が小さいものの、従来の原子炉よりも構造が簡素で発電規模も小さく、炉心を冷却しやすいのが特徴であり、脱炭素の流れの中、温暖化ガスを排出しない電源として世界で開発が進んでいます。
 

【GE日立が受注した小型原子炉のイメージ図(日経新聞ネット記事掲載より引用)】
 
半面、日本国内での導入には原子力発電所への信頼回復や耐震性など課題も多いとのことから、日本では2000年代に政府主導で原子力発電の輸出が進められましたが、2011年の福島第一原子力発電所の事故を機に安全やコスト面から見直し機運が高まり、計画が相次ぎ頓挫した経過があるとしています。
 
こうして紆余曲折を経てきた小型モジュール炉ですが、再びスポットを浴びることとなったことを始め、海外輸出ではあるものの日本の原子力技術が生かされること、さらには国内の原子力人材と技術の継承につながることを期待するところです。
 
昨日の繰り返しのようになりますが、世界の潮流が「脱炭素化」であることはもはや誰もが知るところですが、どのように達成するかの道筋についても、確立した脱炭素電源である「原子力発電」を利用拡大していくことが潮流となりつつあることは、各国が現実路線に舵を切っているということ。
 
「原子力の平和利用」の言葉通り、地球規模で貢献するこのエネルギー源に対し、今後も引き続き、安全を第一義とし英智を結集して取組むのみと心に誓う次第です。