皆さんが支払っている「再エネ発電賦課金」はおいくらですか?

エネルギー ブログ

野球の侍ジャパンが悲願の金メダル、女子ゴルフで銀となったほか、女子マラソンでも数大会ぶりの入賞を果たすなど、昨日も日本人選手の活躍に興奮と元気をもらう一日となりました。
 
早いもので、東京オリンピックも本日が最終日。
 
今日の男子マラソンでは大迫選手のラストラン、女子バスケットボールでは、王者アメリカとの決勝戦と続きますが、恐らく人生でもうないかもしれない自国開催のオリンピックを閉幕まで見届けたいと思います。
 
さて、話しは全く変わりますが、このオリンピックに紛れるかのように進んでいる、国のエネルギー政策論議。
 
既に新聞などでお知り置きの通り、まず8月3日には、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)発電コスト検証ワーキンググループにて経済産業省・資源エネルギー庁が、2030年の新たなエネルギーミックスを反映した電源別発電コストを提示しました。
 
個別電源(火力、原子力や太陽光)を電力システムに受け入れるための「統合コスト」は、主要電源全てで増加傾向がみられ、特に事業用太陽光は大幅な追加コストが生じる可能性が指摘され、これをいかに抑制しつつ、誰が負担していくのか問題提起がされました。
 
続いて、上記コスト検証ワーキングでの報告も踏まえ、8月4日には、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で、次期「エネルギー基本計画」の素案について大筋合意。
 
経済産業省・資源エネルギー庁の修正案については、橘川武郎委員(国際大学副学長)が強く反対しましたが、概ね委員の賛同が得られたとし、会長一任の結論を得、今後は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までの閣議決定に向け、今後パブリックコメントなどの手続きを進めるとのこと。
 
また、環境省と経済産業省は4日、両省合同の有識者会合で「地球温暖化対策計画」の案を示し、大筋で了承されました。
 
ここでは、温室効果ガスを2030年度に2013年度比46%削減する目標に向けて、産業や家庭など部門別の削減目標や具体策を盛り込み、排出削減によって経済と環境の好循環を推進していく方針を強調したとのことです。
 
詳細を述べることは致しませんが、主力化していこうという再生可能エネルギーについて、「エネルギー基本計画」素案では、今後発電量を200~400億KWhを積み増すことになっていますが、2030年までの9年間で即戦力として拡大できるのは実質的に太陽光に限られるため、これを実現するため60~76GWもの太陽光発電を新設することを想定しています。
 
これだけ大量の太陽光パネルを短期間で導入することについては、その実現性について有識者から様々な疑念や懸念が指摘されているのは事実であり、そのポイントについては、私が認識する限り以下の点かと存じます。
 
◉既に政府資料の中でも、再エネのFIT買取り費用について、2020年度の3.8兆円が約6兆円へと拡大することが示唆されており、現状で3.36円/KWhのFIT賦課金負担(平均的世帯の負担額が年間約1万円)が倍増近く拡大することが懸念される。
 ※言い換えれば、消費税5%以上にあたる国民負担が生じることとなる。
◉電気料金上昇圧力は、このFIT賦課金の負担増だけでなく、自然変動電源を大量に入れることに伴う系統安定化費用や、送電線増強費用なども上乗せされることになるが、最終的に国民や企業が負担することになる電気料金がどれだけ上昇することになるかについて、政府の素案では具体的に示されていない
◉また太陽光パネルの設置場所についても、平地の少ない日本の国土に既に面積当たり世界一太陽光パネルを設置している中、さらに設置拡大を続けることについて、山林を切り開いて設置することによる環境破壊や土砂災害への懸念、さらには寿命を迎えたパネルの大量廃棄問題への懸念が高まっている
◉ちなみに、新設する76GWの太陽光設置に要する面積は約760㎢であり、東京23区(638㎢)に全面的に敷き詰めても足りない計算となる。
◉政府はこの素案を最終的な基本計画にまとめていく中で、そうした懸念に真摯に向き合って、国民に対してそのメリットとデメリットについてわかりやすく説明する必要がある。
 

【ちなみにオール電化の我が家の電気料金明細(7月分)。電力使用料に応じて、国民皆に賦課される「再エネ発電賦課金等」は2,187円で、この月の電気料金の約14%。この先、これ以上負担していくとなることに皆さんはどう思われるでしょうか?】
 
日本国内でもこうした懸念の声が挙がっている訳ですが、他国に目を向けると、英国では脱炭素(ネット・ゼロ)政策を進めるボリス・ジョンソン保守党政権の家庭用のガス使用禁止やガソリン自動車の禁止等の具体的政策が明らかになるにつれ、その莫大な経済負担を巡って与党内からも異論が噴出しているとのこと。
 
野党労働党も黙ってはおらず、英国下院のビジネス委員会は、2050年までに脱炭素化するための「真の経済負担を政権は国民に説明していない」と非難。
 
これを受け、英国財務省は、29年後にネット・ゼロを達成するための経済負担は、累積で1.4兆ポンド(=210兆円)という試算を示したとのことです。
 
一口に210兆円と言いますが、とてつもない規模の数字であることは火を見るよりも明らかです。
 
とは言え、さすが民主主義国家の先輩の英国。
 
批判に晒されようと明確な試算値を国民に示したことは意味のあることと受け止めた次第。
 
こうして、国内での指摘、英国を始め脱炭素化を進める他国の状況を見るに、わが国にとっての電源構成のベストミックスは、長期に亘る影響を見据え、極めて現実的且つ将来に向けて胆力を持って策定することが肝要であることは言うまでもないところ。
 
そのうえで、陸続きや安定した資源確保が出来る他国と違い、島国で資源が少なく、四季のある日本が「再生可能エネルギーの主力化」をめざすという今の計画では、気候変動対策という世界的な潮流に飲み込まれて、二酸化炭素の排出抑制という命題と非現実的なコスト計算に目を奪われ、この国の進むべき道を誤ることになるのではないかと、心配で心配でなりません。