原子力人材の将来と「もんじゅサイトを活用した試験研究炉」

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6月定例会も後半戦に入った昨日は、予算決算常任委員会から議会運営委員会、議員説明会、さらには広報広聴委員会と続きました。
 
予算決算常任委員会においては、本定例会に提出された補正予算に関し、各分科会長からの報告、討論を踏まえ採決が行われ、全議案について原案通り認めるべきと決しました。
 
補正予算については、最終日29日の本会議にて予算決算常任委員会委員長からの審査結果を報告した後、採決の運びとなります。
 
さて、上記委員会審査と併せ、昨日の目玉は議員説明会。
 
内容は、文部科学省からの「もんじゅサイトを活用した試験研究炉に関する調査の概要について」の説明。
 
本件に関しては、突然決定された「もんじゅ廃炉」の後の平成28年12月、原子力関係閣僚会議における「もんじゅの取扱いに関する政府方針」により、「将来的には、もんじゅサイトを活用し、新たな試験研究炉を設置する」、「我が国の今後の原子力研究や人材育成を支える基盤となる中核的拠点となるよう位置付ける」との位置づけのもと、これまで外部委託により「新たな試験研究炉のあり方に関する調査」が行われてきているもの。
 
令和元年度までの外部委託調査結果については、本年5月20日に文部科学省の審議会(原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会)において報告がされており、令和2年度中には概念設計に着手、令和4年度中に詳細設計開始とのスケジュールまで示されているところ。
 
昨日の説明会では、ここまでの調査結果概要の説明に加え、質疑までが行われました。
 
もんじゅ敷地を活用した試験研究炉に関しては、私もこれまでの一般質問でも取り上げている他、福井県が進める「嶺南エネルギーコースト計画」との絡みや、先の国の審議会報告などの内容を注視してきたところでありますが、私も強く望む「原子力人材育成と産業利用」と背景にもある「地域振興」との兼ね合いから、大変シビアで難しいテーマであるとつくづく感じているところでもあります。
 
この日は、基本的な発電用原子炉と試験研究炉の違いや国内の試験研究炉の現状説明のうえで、本題の「もんじゅサイトを活用した新たな試験研究炉に関する検討状況」について報告がされました。
 
ちなみに、ここでは詳細説明まではありませんでしたが、研究炉については、学生など原子力人材の育成という用途、物質の性質を調べる基礎研究や放射線を使った医療、産業技術開発などの産業利用用途などがあり、京大研究炉では探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰った微粒子の解析も行われるなど、まさに「原子力の平和利用」がされていることを補足させていただきます。
 
そのうえで、とりわけ注視すべきは、我が国の原子力人材育成と試験研究炉の現状。
 
これは私も以前から調べてきていることでもある訳ですが、原子力に係る人材は東日本大震災以降、大学院を含めて国内で原子力を専攻する学生は減少の一途を辿っている他、教員の減少と高齢化も深刻化していることに加え、現在4施設の稼働のみとなっている人材育成を支える試験研究炉に関しては、各大学が保有するその多くが建設から40年以上経過するなど高経年化が進んでいることや新規制基準への対応が困難となっていること、さらには国立大学法人に対する運営費の減少(研究費への影響)や使用済み燃料の問題などにより廃止の方針を示す研究機関もあることなどから、今後の運転再開予定は多くて8施設(現在稼働中を含む)となっており、将来に向けても大変危惧されるべき状況となっています。
 
代表的に取り上げられる京大複合原子力科学研究所(大阪府熊取町)の湊・京大理事からは「国が原子力や放射線の人材育成・研究が不可欠と考えるのならば、使用済み燃料の引受先を含めて政策を示して欲しい。京大だけではなく、国の将来像に係る問題だ。」と訴えているように原子力人材の育成と大学研究炉の将来については、政府としても早急に方策を示していく時期にある(2019年9月14日の読売新聞記事より)とされています。
 

【京都大学研究用原子炉(KUR)炉室 @同大学ホームページより】
 
話しがかなり拡散してしまいましたが、そういった国内の状況もある中で新たに検討されているのが、この「もんじゅサイトを活用した試験研究炉」であり、国の危機意識や本気度が示されるべきであろうと考えるところです。
 
文科省の資料によれば、「我が国全体の研究基盤が脆弱化する中、将来的にもんじゅサイトに設置する試験研究炉には、西日本における、研究開発・人材育成の中核的拠点としての役割が期待される」とあります。
 
私は、これまた議会でも発言している通り、原子力研究と言えば「東の東海村(茨城県)、西の敦賀」となり、「今後国内で原子力を学ぶ学生さんは必ずや敦賀の地を踏み、技術者として敦賀から世界に羽ばたく」ようなビジョンを持って進めるべきと強く考えるところであります。
 
なお、こうして学生さんを始め、国内の原子力研究者、さらには国外からも技術者が集うようなまちになれば、自ずと交流人口や定住人口も増え、国際会議なども開かれるようになれば尚のこと、地域振興の一助にもなるものと考える次第であります。
 
現段階においては、「役割が期待される」に留まった文科省の考えでありますが、この先調査が進むにつれ、「役割と位置付ける」との国の力強い考えが示されるよう、引き続きこの課題には注視のうえ対応にあたる所存です。