「エネルギー安全保障」とは「政治・地政学・気候」あらゆるリスクに備えること

エネルギー ブログ

昨日は、私の母体組織であり、日頃からご支援を頂戴している福井県電力総連の代表者会議が開催され、他の3名の推薦議員の皆さんとともに出席。
 
コロナ禍でありますが、敦賀市あいあいプラザ2階ホールを会場とし、十分な離隔距離をとって座席配置するなど、十分な対策をとった形での集合開催ということで、久しぶりに見る元気な役員の皆さんのお顔にどこか安堵した次第です。
 
貴重な会議の時間を頂戴し、福井市議の堀川秀樹議員、南越前町議の山本優議員、高浜町議の小幡憲仁議員(現在議長)、そして私の4名からそれぞれ活動報告をさせていただいた訳ですが、各市町のトピックスや議会の実情などを聞けるというのは自分自身にとってもありがたいこと。
 
引き続き、推薦議員の皆さんとは強い連携のもと、厳しい電力需給のなか、日夜安定供給に励む福井県電力総連の職場の方々の思いを胸にしかと頑張らねばとネジを巻いた次第です。
 
さて、活動報告においても、私が知り得たエネルギー情勢のトピックスをお話しさせていただいたのですが、私自身、特異的に発生した事象を捉えるには深層要因を把握することが大事だと感じたことがありましたので、そのことを1点ご紹介させていただきたく存じます。
 
それは、日本にも大きな影響を及ぼしている「LNG(液化天然ガス)価格の高騰」について。
 
一昨日、エネルギー経済社会研究所代表である松尾豪氏から「世界のエネルギー危機」について説明を受けたことの一端を書きましたが、この際知り得たこととして、「天然ガス・LNG価格の高騰」について、欧州では昨年比2%減の電力となっている風力発電分を補うためにガス火力を炊き増ししていることや、アジアでは中国の電力需要が半端ではない速度で進んでおり、供給が追いついていない状況から「価格高騰」していることは認識していたところ。
 
ところが今述べたことはほんの一部の要因でしかなく、元々あった背景に、世界各地で起こっているさまざまな事情が複雑に絡みあって生じていることを知った次第。
 
松尾氏が作成された「欧州天然ガス価格および世界のスポットLNG価格高騰の経緯」を以下に示しますが、そもそもの背景として、
 
◉アジアでは
中国の電力需要増に加え、スポットLNG増加による各地域のLNG・天然ガス価格の連動性増加
◉欧州では
・欧州域内(特にオランダ)のガス生産量減少
・排出権価格高騰等による石炭火力減少とVRE増加によるガス火力への依存傾向
◉北米では
2016-17年、油価低下による米国を中心としたLNGプロジェクトのFID減少(2022-25年新規LNG供給減少)
 
があったうえに、熱波や渇水など気候の影響、原子力を含めた各電源の停止やトラブル、新型コロナ、ロシアの追加ガス不調など、本当に多くの要因が複雑に絡み合って(松尾氏の言葉を借りれば「多段的」)、ある種必然的に生じていることだということが分かります。
 

【欧州天然ガス価格および世界のスポットLNG価格高騰の経緯(エネルギー経済社会研究所資料より引用)】
 
そして、複雑に絡み合っていることの状況をひとつ一つ取り除くことに加え、背景にある事柄を改善するには長い時間が必要であることは容易に想像できるところであり、有識者の見立てでは2026年あたりまではこの状況が続くであろうとしています。
 
先日も記載しました通り、ウクライナ国境で高まるロシアとの軍事的緊張は暗に欧州へのガス供給量がさらに制限されることを意味することから、欧州諸国にとって深刻な問題でありますが、上表の関係性からすれば、欧州だけに留まる話しでは決してなく、巡り巡ってここ日本にも影響を及ぼすことは必至かと、私は思う訳であります。
 
欧州エネルギー危機では、スペインが電気料金が約2倍に上昇、英・伊でも5割増しとなっており、この厳冬期に国民は悲鳴を挙げています。
 
「政治リスク」、「地政学リスク」、「気候リスク」などあらゆることを想定して備えておかねばならないのが「エネルギー安全保障」の世界。
 
既に電力需給ひっ迫の状況に置かれている日本、自国の資源をほとんど持たない日本こそ「明日は我が身」、いや「既に我が身」として対策を講じねばと一層危機感が増すところです。