納得いかない「大飯発電所3、4号機設置変更許可処分取消請求訴訟」の大阪地裁判決

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【大阪地裁判決が下された関西電力大飯発電所3,4号機(関電HPより)】
 
「今回の判決については、国および当社の主張を裁判所にご理解いただけず、極めて遺憾であり、到底承服できるものではありません。今後、判決内容の詳細を確認し、速やかに国と協議の上、適切に対応してまいります。」
 
これは、昨日、大阪地方裁判所において「大飯発電所3、4号機設置変更許可処分取消請求訴訟(行政訴訟)」について、原告の請求を認容する判決が下されたことを受けての関西電力のコメントですが、至極真っ当で当然の主張と受け止めます。
 
本訴訟は、大飯発電所3、4号機の運転停止義務付けを求めて、2012年6月12日、国を被告として提起された後、原子力規制委員会が関電に対して行った大飯発電所3、4号機の設置変更許可処分の取消しを求める訴えに変更されたもの。
 
この日の判決のポイントは、平成23年の東京電力福島第1原子力発電所の過酷事故を踏まえて設置された原子力規制委員会が両機に対して行った耐震性の審査のプロセスに不合理な点があるとしている点でしたが、裁判長は耐震対策の元となる基準地震動の設定を巡り「規制委の調査審議および判断の過程には、看過しがたい過誤、欠落があるものというべきである」と断じています。
 
因みに、本年1月に広島高裁が仮処分で四国電力・伊方原子力発電所3号機の運転停止を命じた際にも、裁判長は四国電力の主張よりも近くに断層が位置すると解釈し、3号機を合格させた「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした例があります。
 
判決にある、原子炉の「設置変更許可」を取り消すことは、言わずもがな原子力発電所存立の根本に関わる事項であり、ましてや規制委員会の審査に問題があるとされている以上、国が毅然と控訴しても良いくらいの判決であると考えるところです。
 
問題と言われる部分は、具体的には、原子力発電所の敷地における地震の揺れを推定する計算式の用い方に対してのクレームになる訳ですが、福島第一原子力発電所の事故が東日本大震災由来の津波により発生したことから、規制委員会の地盤や基準地震動に関わる審査こそ、地震の大きさや活断層の長さ、連動などあらゆるケースを想定をしたうえで、より大きい地震動が設定されるように拡大設定(すなわち最も安全側の設定)を指示するのが常識となっていて、裁判官が「審査すべき点を審査していないので違法」とする「揺れのばらつき幅」を包含する、それ以上に安全重視の姿勢に立った慎重な審査がされていると私は考えます。
 
過去の原子力発電所の安全審査に関する司法判断を紐解くと、最高裁は平成4年、伊方原子力発電所訴訟の上級審判決で安全基準の適合性について「科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う行政側の合理的判断に委ねると解するのが相当である」との見解を示しています。
 
平成4年時点の見解を踏まえつつ、福島第一原子力発電所事故を経験し、これを教訓に「世界で最も厳格な審査」が行われている日本の原子力規制を見ればなお一層「行政の合理的判断に委ねる」べきと考えるところであり、私個人としてはそうした司法判断の根拠や今回の判断内容について、周囲の人にも分かりやすく説明していきたいと考えます。
 
「当社は、2017年12月7日以降、訴訟参加人として、裁判所に対し、設置変更許可処分の前提となる大飯発電所3、4号機の安全性について丁寧に説明を行い、同発電所の安全性が確保されていることをご理解いただけるよう、真摯に対応してまいりました。」
 
これも昨日の関西電力のコメント。
 
言葉通り、電力社員のみならず協力会社まで関係者皆が力を総結集して安全性向上対策に真摯に取り組まれたことは、先般視察した同社美浜発電所3号機の状況からも疑う余地はありません。
 
どうか、このブログをご覧の皆さまにおかれましては、その点だけでもご理解いただき、本司法判断に対しても冷静に受け止めていただきたく存じます。