介護に関しても「ほっとけんまち敦賀」

ブログ まちづくり

胸が苦しくなるような出来事というのはそうそうあるものではありませんが、私の中でこの事件はそのひとつ。
 
それは、一昨年11月、敦賀市の住宅で介護する同居の夫と義父母を殺害したとして殺人の罪に問われた女性(72)の事件。
 
本件に関しては、義父母らの介護負担などから将来を悲観した女性が心中を決意したとされ、弁護側は、心神耗弱状態だったとして刑事責任能力を争う姿勢を示すとともに親族3人が証人として出廷した公判では、被告への処罰感情について、いずれも「処罰を望んでいない。助けてあげてほしい」と寛大な判決を求めていたところ。
 
その裁判員裁判の判決公判が昨日福井地裁で開かれ、裁判長は完全責任能力を認め、懲役18年(求刑懲役20年)を言い渡しました。
 
以前の新聞記事では、親族3人は被告について、「明るく皆んなに好かれていた。何でも出来る人で、皆んなが頼っていた」と説明。
責任感が強く、介護に関しても強く助けを求めることがなかったと振り返り、「(被告なら)大丈夫だと思ってしまっていた」「頼り過ぎていた」「SOSに早く気付けていたら」と話されたとあります。
 
また、被告の負担を減らそうと、親族らが義父母のショートステイ利用を促すも被告が渋ったり、一層の手伝いを提案するも断ったりしたことがあったことの理由については「責任感の強い性格からでは」との指摘があったともあります。
 
勿論、3人もの命を奪ったことの罪は拭えないものの、同居する自分がやらねばとの思いが心の逃げ場を無くし、自身を追い詰めたことの結末が事件となったと思えば尚のこと、私自身としては情状酌量ある判決を望んだものの先に述べたような結果。
 
女性並びに親族の心中を思うと痛堪れない気持ちになりますが、事実として一旦受け止めておきたいと思います。
 
これに関連し、少子高齢社会に突入している中で、社会的にも1人で2人以上を介護している「多重介護」や高齢者同士が介護する「老老介護」などの割合が増加しているところでありますが、敦賀市内における「多重介護」世帯は、一昨年10月のケアマネジャーを対象とした調査においては「189世帯」あるとのこと(令和2年9月定例会の一般質問答弁より)。
 
敦賀市においては、これまでも介護や認知症に対する制度を拡充するとともに、長寿健康課を始めとする職員さんが思いを込めた献身的な取り組みをされていることを私としては大いに評価をしている訳でありますが、こうした多重介護、とりわけ冒頭述べた市内での事件を踏まえ、昨年8月からは「家族介護者負担軽減事業」を実施しているところです。
 
せっかくの機会ですので、令和2年9月定例会の一般質問での福祉保健部長答弁を引用し、本事業の内容についてご紹介します(以下の通り)。
 
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家族介護者負担軽減事業について御説明をまずさせていただきます。
家族介護者負担軽減事業は、高齢化の進行、家族形態の変化などにより多重介護の増加等、介護の形態も変化している中、介護者が負担を抱え込まず在宅介護が継続できるよう、介護者の身体的、精神的負担を軽減する目的で今年8月より実施しております。
家族介護者負担軽減事業には、介護者同士の集いの場、介護やすらぎカフェと、訪問型サービス、介護やすらぎ訪問があり、市内の5つの事業者、団体に委託して実施しております。
介護やすらぎ訪問につきましては、2人以上の方を在宅で介護している介護者自身が少しでも休息時間をつくりストレス解消につながることを目的に実施いたします。
1枚当たり1時間利用できる年間24時間分の助成券を使用して、無料で健康相談や家事援助等の訪問サービスを受けることができます。
このサービスの利用に当たりましては、市役所の長寿健康課のほうに申請書を出していただくという形になります。
その際には、担当しているケアマネジャーさんにお願いして市役所のほうで申請をしていただくことも可能だと思っております。
この事業につきましては、先月より開始したばかりでございますので、利用を希望される方はお気軽にお問合せいただき、積極的な御利用をお勧めしております。
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目的にある通り、何らかの形で、介護者が負担を抱え込まず在宅介護が継続できるよう、介護者の身体的、精神的負担を軽減することは極めて大事なことであり、市においては「介護予防・生活支援サービス協議会」での議論や各地区での「支え合い井戸端会議」などによる地域支え合いの輪を広げているところでありますが、まさにこれから必要となるのは、行政によるいわゆる「公助」任せではなく、地域で見守り支え合う「共助」がどこまで出来るかが、こうした不幸な事件を再発させないための鍵であると考えるところ。
 
認知症に関しては、「認知症ほっとけんまち敦賀」の合言葉のもと、地域で支えるまちづくりに取り組んできているところですが、今後ますます増加するであろう介護の問題に関しても、「支える側」としてそうした困難を抱え悩んでいる人が「自分は1人じゃない」、「頼っていいんだ」と思い、様々な制約を抱える中でもやり甲斐や生きがいを持って暮らせる環境づくりに向け、先進的に取り組む市の皆さんや地域の皆さんとともに知恵を絞っていかなくてはと考えます。
 
つまりは、介護に関しても「ほっとけんまち敦賀」ということかと。
 
コロナによって、今は人と人との距離を確保することが求められていますが、時代に即した社会環境(少子高齢や過疎など)において求められるのは、地域住民同士の気持ちや心のつながり、助け合い支え合うこと。
 
地域コミュニティをより一層高め、地域共生社会に向け皆で取り組むことこそが、胸が苦しくなるこの事件を無駄にしないことにもつながるものと自身の思いに留めることといたします。