2023年5月17日
電気料金値上げの責任はすべて電力会社に負わすのか
以前より大手電力7社が申請していた電気料金(規制料金)値上げについて、昨日、政府が開いた物価問題に関する関係閣僚会議でこれを了承し、7社が即日値上げを再申請しました。
西村経産大臣が近く認可するとあり、電力7社は6月1日から値上げを実施すると発表。
火力発電に使用する燃料価格の高騰などを反映させ、経済産業省によると、標準的な家庭(月の電気使用量400キロワット時)の値上げ率は14~42%となり、月の負担増は2千円程度~5千円程度となる見通しとのこと。
なお、値上げするのは中部、関西、九州の3電力を除く7社で、政府の試算によると、43年ぶりに値上げする北陸電力の値上げ率は42%。北海道電力は21%、東北電力は24%、東京電力14%、中国電力29%、四国電力25%、沖縄電力38%。
【当初申請と今回圧縮された各社の料金(産経NEWSより引用)】
これまで耐えに耐えた末、43年ぶりの値上げとなる北陸電力の長高英常務執行役員は「お客様にご負担をおかけすることになり非常に心苦しく思っている。了承された査定案の値上げ幅は当社にとって非常に厳しいものだが、引き続き効率化を進めて補っていきたい」と述べました。
一方、西村経済産業大臣は閣議の後の記者会見で、「直近の燃料価格などを踏まえ、原価の再算定を行うなど前例に捉われない極めて厳格な査定を行った。」と、さも政府の成果と言わんばかりに述べています。
正直申し上げ、このように電気料金値上げの責任を旧一般電気事業者に押し付けるかの姿勢には大いに疑問があります。
即ち、値上げの主要因となった、海外に燃料を依存する火力発電の比率を高めなければならなくなったのは、純国産エネルギーである原子力発電の長期停止を余儀なくされていることに加え、原子力なきまま進めた再生可能エネルギーの普及拡大によって、※代替する火力の必要性が増したことに原因があるからです。
※日照や風のある時しか発電しない再エネには必ず代替電源(今は火力)が必要であり、再エネ比率を高めれば高めるほどその代替電源の燃料負担が増える。要するに個社の経営判断でなく、国のエネルギー政策(電源比率)によって生じていると言える。
また、東日本大震災以降に進めた電力システム改革や電力自由化は聞こえこそ良いものの、結果して電力需給逼迫と料金高騰を招いているほか、自由化なのに何故、旧一般電気事業者だけ国の厳格な審査が必要なのか。
これ以外にも、電力市場が高騰した際には、調達価格の上昇に耐え切れず、いくつもの新電力が撤退したり、需給逼迫時には旧一般電気事業者が所有する、本来停止していた年数の経過した火力を再稼働させて対応したことなど、様々な事柄が思い出されるところであります。
要するに、こうして国が整備してきた制度自体に理不尽な点や根本的な問題があると、私は思う訳であり、そのような中で「大手電力の料金値上げをギリギリと絞り上げた」と言わんばかりの姿勢は、責任から逃れる政府のパフォーマンスとしか思えません。
制度自体が複雑化し、専門家でなければ分からなくなっている状況において、まさにこうした点を国会で指摘しているのは、国民民主党の竹詰ひとし議員(参議院比例)でありますが、わが国の安価で安定した電力供給の根幹に関わる制度につき、悪しき点があるのであれば改善すべきと、強く望むところであります。
そして何と言っても「電力危機」の改善に向けて鍵を握るのは原子力発電。
「再エネか原子力か」ではなく「再エネも原子力も」使わなくては、この日本は成り立たないことを改めてお伝えし、本日のブログを閉じます。
本日はやや批判的な論調となりましたが、昼夜を分かたず、懸命に安定供給を守り続ける全国の電力関連産業にお勤めの皆さんが、上っ面の報道だけで批判に晒されることだけは我慢なりませんでしたので、思いの丈を書かせていただきました。
考えに間違いがあればご指摘いただきたく存じますが、記載の趣旨についてはご理解賜りますよう宜しくお願いいたします。