電力需給ひっ迫が現実のものに。根本的要因は明確だ。

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ひたひたと忍び寄るかのように近づいてくる新型コロナウイルス感染再拡大。
 
昨日6日は、ここ敦賀市でも1名の新型コロナウイルス感染者が確認されました。
 
福井県の発表では、敦賀市の感染者を含む、昨日の感染者20代男女8人は、検査の結果、いずれもデルタ株ではないことが分かったとあり、県はオミクロン株の可能性が高いとみて遺伝子解析を行うこととしています。
 
このオミクロン株は、既に疑い例が陽性者の46%を占める(厚生労働省試算による)など、この切替わりの速度を見るに、従来株より感染力が強いことは明らかであるため、今後県内でも急速に感染拡大すると想定したうえで、医療体制はもとより、公共施設の運営やイベント(近々では成人式など)への対応などについて、昨日も述べたよう危機管理意識を高めた対応に努めねばなりません。
 
さて、全国的なコロナ感染拡大と相まって、昨日ニュースで取り上げられていたのは関東地方を中心とした降雪や大幅な気温低下。
 
これによる転倒や交通事故などもさることながら、想定事象とはいえ現実のものとなったのが「電力需給ひっ迫」であります。
 
とりわけ、東京電力パワーグリッド(東電PG)供給域内の今冬の需給の厳しさは以前から国の需給検証委員会の中でも明らかとなっていたことから、1月4日からは長期停止していた姉崎火力発電所5号機(千葉県)を再稼働させるなど、供給力確保にも努めてこられた訳ですが、その供給力をもってしても、昨日の需要増への対応は非常に厳しく、予備率3%を切るまでの状況となった次第。
 
実際、東電PGホームページの「でんき予報」では、「日常生活に支障のない範囲での効率的な電気のご使用にご協力いただきますようお願いします」のタイトルで節電を呼び掛けたうえで、「1月6日~7日にかけての低気温による需要増や悪天候による太陽光出力の低下により、電力需給が非常に厳しくなっておりますが、火力発電の増出力運転、冬季追加公募電源の市場供出、電源Ⅰ´厳気象対応調整力の発動、他の一般送配電事業者からの融通電力の受電等により、安定供給を維持できる見通しです。当社といたしましては、お客さまに電気を安定的にお届けできるよう、様々な需給対策に努めてまいります。」と状況説明をしています。
 
このうち「一般送配電事業者からの融通電力の受電等」に関しては、ひっ迫する需給状況改善のため、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が※電気事業法第28条の44第1項及び業務規程第111条第1項の規定に基づき、6日13時2分と14時56分に以下の会員に供給を指示したもの。
 
【指示を受けた会員】
◉北海道電力ネットワーク株式会社
◉東北電力ネットワーク株式会社
◉東京電力パワーグリッド株式会社(受電側として)
◉中部電力パワーグリッド株式会社
◉関西電力送配電株式会社
 
※電気事業法第28条の44第1項:推進機関に指示により、当該電気の需給の状況の悪化に係る会員に電気を供給すること。
詳細は、以下リンクより参照ください。
→→→電気事業法へのリンクはこちら
 

【6日17時39分時点の「電気使用状況(でんき予報・エリア計)」(OCCTOホームページより)】
 
これにより、最大192万kwの電力の融通を受けることができたことにより、何とか17時から18時の需要ピークを乗り切ることができた訳であります。
 
ピークを乗り越えた電力需要はその後低下傾向を示し、やや安堵したところでありますが、「停電」という最悪の事態を回避できたのは、先にあったような火力増出力運転などの対応もあってこそのことであり、厳冬期の安定供給を、まさに「死守」した関係者の皆さんには最大限の敬意を表するところです。
 

【ピークを乗り越え、低下傾向に転じた電力需給(東電PG「でんき予報」より)】
 
なお、ニュースなどでは単に「気温低下による暖房需要増」が需給ひっ迫の要因としていますが、それは全くもって上っ面だけのこと。
 
日本では電力自由化以降、常に発電できない再エネ電源の導入拡大が進む一方、火力発電設備量は減少を続けており、その火力も燃料供給のリスクを抱えるほか、何といってもベースロードで稼働していた原子力発電分の供給力が低下しているという根本的な構造に要因があります。
 
国際環境経済研究所所長の山本隆三氏は、コラム「『そのうち停電』は困ります」の中で以下のように述べています。
 
日本では自由化以降火力発電設備量は減少を続けている(図参照)。いつも発電できない再エネ電源が増えれば停電のリスクが高まる。火力発電設備も燃料供給のリスクを抱えている。安定供給のために必要なのは、電源の多様化の徹底だ。脱炭素政策の下、脱石炭火力を進めた欧州のように一つの電源、ここでは天然ガス火力だが、への依存度が高まると、一つのエネルギーの影響を大きく受け、場合によってはエネルギー危機を招くことになる。
 
脱炭素を進める日本が安定供給を確保する手段は限られている。欧州諸国が電力供給量の25%を依存し、米国が20%を依存している原子力発電を使うしか方法はない。再エネ電源が増加し停電の可能性が高まらないうちに原子力発電を整備しなければ、停電にびくびくしながら暮らすことになる。
 

【日本の火力発電設備容量推移。電力自由化以降、激減していることが分かります。(コラム「『そのうち停電』は困ります」より引用)】
 
この先、再エネ導入割合をさらに高めるということは、夏冬の時期「停電」に怯えながら暮らすことを覚悟するということであり、私はそのような脆弱な電力供給体制の日本にしては絶対にいけないと考えます。
 
昨日の電力需給ひっ迫を見るに、問題がどこにあるのかは明確であり、これを放置したままにすることは、我が国が「亡国」の道を歩むことと同義であると強く認識する次第です。
 
(参考)
山本隆三氏のコラムを以下にリンクしますので、宜しければご覧ください。
→→→コラム「『そのうち停電』では困ります」はこちらから