決断の時迫るドイツ。「2022年までの脱原子力」はいかに。

エネルギー ブログ

7月13日のブログでご紹介しました、ロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプライン「ノルドストリーム」が定期検査で供給停止となった件について。
 
欧州が科した経済制裁への報復やウクライナへの武器供与を理由に、ロシア側が検査終了後も供給停止を続ける恐れがあるとも見られていましたが、21日に予定通り保守作業を終え10日ぶりに稼働したとのこと。
 
但し、ガス供給量は保守作業前と同じ6700万立方メートル/日で、輸送可能総量の4割に留まっていることに変わりはなく、ノルドストリームを運営するロシア政府系天然ガス企業ガスプロムが6月中旬に発表した、ドイツへのガス供給6割削減が続く状況にあります。
 

【ドイツにあるガスパイプライン「ノルドストリーム」の施設(ロイター提供)】
 
この状況に対し、独エネルギー規制当局の幹部は21日、「6割削減と政治的不安定さを踏まえれば、警戒を緩められない」とツイートしており、この先も「ノルドストリーム」からのガス供給を喉元に突き付けられた状態が続くことは、同国の「エネルギー危機」もこの先続くと認識するところです。
 
そのドイツ。
 
元を正せば、メルケル前政権時代、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて「2022年までの脱原子力」を決めたうえで、ロシアからのガス供給割合を高め、再生可能エネルギーに偏重してきた経過のもと、今の状況がある訳ですが、いよいよ今年末に迫った「脱原子力」計画に対し、延期を求める声が高まっているとのこと。
 
ロシアによる天然ガス供給削減を受け、エネルギー資源確保が最重要課題となったことが要因であることは明らかな訳ですが、ショルツ政権では国内に残る※原子力発電所3基の稼働延長の是非を巡り、連立与党が真っ二つに割れており、産業界に近い第3与党、自由民主党(FDP)の党首でもあるリントナー財務相は21日、「現実的な選択を採るべきだ」と述べ、原子力発電所の稼働延長を訴えたのに対し、ショルツ首相の社会民主党(SPD)、緑の党の中道左派2与党は稼働延長に難色を示しています。
 
※ドイツの発電に占める原子力発電の割合は6%まで低下
 
ショルツ政権は昨年、再生可能エネルギーの推進を掲げて発足しましたが、ガス不足ですでに石炭火力への回帰を余儀なくされていることや欧州委委員会が、ロシアのガス供給が止まった場合に備え、今年8月から来年3月末まで、加盟国に15%のガス使用削減を求めるほか、ガスに代わるエネルギー源を確保する方策のひとつとして原子力発電を挙げていることなどを踏まえ、今後どう判断されるのか。
 
ショルツ首相は以前に、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、「ここ数日の動きにより責任ある先を見据えたエネルギー政策が我が国の経済と環境のみならず安全保障のためにも決定的に重要であることが明らかになった」と、2022年末の原子力発電停止の延期を表明し、「歴史的な政策転換」と称されました。
 
危機と期限が迫るいま、国民生活や経済活動への影響(主に安定供給と電気料金高騰抑制)を踏まえ、現実的な判断がされるのか否か。
 
「再エネ主力化」を掲げる日本の姿とも重ね注視する次第です。