2021年12月20日
今冬の需給ひっ迫を救う「姉崎火力発電所5号機」は40年超選手
このブログを書いている趣旨目的の第一は、政治や議会のことを広く知っていただくことにあることから、市議会定例会中はどうしてもそちらに偏重となるところ。
とはいえ、合間合間では私の関心ごとも知っていただきたいと思い、日々ペンを走らせている(実際にはタイプですが)訳ですが、今日はその類のこととなります。
世界各国は「エネルギー資源獲得競争」であることは以前から述べているところですが、脱炭素の流れや欧州での風力発電比率減少(単純に風が吹かないため)、さらには地政学リスクなどの影響も相まって、一層この競争に拍車が掛かっており、原油や天然ガス、さらには原子力発電用のウランまでも価格上昇を続けていて、エネルギー資源価格にも連鎖している状況にあります。
とりわけ、欧州の天然ガス価格が再び急騰しており、こちらはウクライナ情勢の緊迫(ロシアの侵攻懸念)によって新設ガスパイプラインの運用開始がますます不透明になる中、今冬だけでなく、来年度の価格上昇圧力が一気に強まっている訳ですが、この流れに引っ張られ、来年度のアジア向けスポットLNG(液化天然ガス)価格も上昇。
LNG火力の発電コストに換算すると1キロワット時当たり平均20円を超えており、電力市場価格の高止まりが長期化する可能性もあるとしています。
先ほど「連鎖」と述べましたが、国内ではこの影響が「発電用C重油」に現れてきているとのことで、石油連盟の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長)は16日の定例会見で、発電用C重油の需要に関して「かなり強い引き合いが来ており、当初想定比300%程度のオファーがある」と明らかにしました。
LNG(液化天然ガス)価格が高止まりする中、「スポットで調達して発電するよりもC重油を使ったほうが安い」と現状を説明したうえで、タンクや輸送船に限度があるものの「200%程度までは何とか対応したい」と述べたとのこと。
こうして、自国の電力供給を安定的且つ少しでも安価に供給するために、熾烈なある種「戦い」が繰り広げられていることを知っていただきたいと思う訳ですが、ここ日本も欧州などと同様、エネルギー価格の高騰に加え、既に迫っている危機は「冬の電力需給ひっ迫」であります。
この需給ひっ迫は各エリアで厳しい状況にあるものの、特に厳しいとされているのが東京電力パワーグリッド株式会社管内であり、本年5月25日に経済産業省の「電力・ガス基本政策小委員会(第35回)」においても、2021年度冬季の東京電力パワーグリッド株式会社管内の電力需給がひっ迫する見通しが示されている状況にあります。
こうした状況を受け、東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資する「株式会社JERA」は26日、東京電力パワーグリッド株式会社による「2021年度冬季追加供給力の公募」(2022年1月4日から2月28日の追加供給力55万kWを募集)に対し、長期計画停止中の姉崎火力発電所5号機(千葉県市原市、最大出力60万キロワット)の供給力を応札し、落札者に選定されたことを発表。
つまりは、長期停止中の姉崎火力発電所5号機が、冬の需給を守るため「戦列に復帰」することとなりました。
この姉崎火力発電所5号機はLNG(液化天然ガス)を燃料とし、1977年に稼働、2021年4月から計画的に停止していたものですが、先にありました需給ひっ迫予測を踏まえ、7月から再稼働に向けた対応を自主的に行い、10月中旬には確認運転を終えるなど準備を進めていたもの。
【姉崎火力発電所。右から2番目が5号機(JERAホームページより)】
一旦長期停止をしていた発電所を再度稼働させることの決断は非常に重く、困難なことであったと察するところですが、この冬の需給ひっ迫を何としてでもカバーするとのJERAの思いは、ホームページで同社が発表した「当社グループの総力を挙げて、エネルギーの安定供給の確保に万全を期してまいります」とのコメントに表れていると受け止めるところです。
今後、同発電所では2022年1月1日の起動、同月4日の並列に向けた最終準備作業を進めるとのことであり、現場第一線で奮闘される皆さん始め、稼働から44年の時を経て、再度切り札として起用された姉崎火力発電所5号機の無事の運転を願うところであります。
需給ひっ迫をカバーする発電所の戦線復帰に関しては、九州電力管内では、10月から定期検査中であった川内原子力発電所1号機が18日の17時半に原子炉を起動。
19日5時には臨界、本日20日18時には発電を再開する計画としています。
もはや電気がなければ成り立たない現代社会において、低廉で安定した電源供給は何を置いても欠かせないもの。
この一連の対応を見るに、再生可能エネルギーの比率を上げたとて、代替火力が必要なことに変わりはなく、この状況を救っているのは一旦現役を退いた火力発電所、依存度を低減していくとする原子力発電所であることだけはお分かりいただきたいと思う次第です。
そして、この冬の電力コストが上昇するからと、市場から相次いで「撤退」する小売電力事業者に対し、「安定供給」の使命のもと、この電力需給を守るために「戦線復帰」する気概は、根底に流れる「電力スピリット」あってのことであり、そうしたマインドを有する「人」が支えているんだということを、特に霞ヶ関の役人さんや永田町の政治家に知っていただきたいと強く思う訳であり、私自身はこうした現場にある事実を引き続きしっかりとお伝えしていきたいと考えます。