三菱重工の革新軽水炉「SRZ-1200」を聞く

ブログ 原子力

昨晩は、福井県原子力平和利用協議会(以下、原平協)敦賀支部の令和5年度第1回研修セミナーに参加させていただきました。
 
この日のテーマは、「革新軽水炉 SRZ-1200をメインに次世代軽水炉について」。
 
しかも、実際に設計を担当する三菱重工業(株)の原子力セグメント SRZ推進室の西谷室長にお話しいただけるとあって、大いに興味をもって会場のあいあいプラザに向かった次第。
 
1992年に三菱重工に入社された西谷室長は、原子力畑を歩み、日本原電の敦賀2号にも来られたことがあるほか、美浜、大飯、高浜と主に若狭にある関西電力のプラントの保守管理に携わられてこられたとお聞きし、親近感が湧いたところですが、第1部では、三菱重工が開発を進める革新炉のうち、小型軽水炉、高温ガス炉、高速炉、マイクロ炉、第2部では本題の「SRZ-1200」について、大変丁寧に説明いただきました。
 
革新軽水炉「SRZ-1200」に関しては、これまで24基の加圧水型軽水炉の国内建設および保守に携わってきた三菱重工が、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、既設プラントの再稼働と安全安定運転に貢献するとともに、「SRZ-1200」の早期市場投入を目指すものであり、名称のSRZにはそれぞれ以下の意味を込めているとのこと。
 
S:Supreme Safety(超安全)、Sustainability(持続可能性)
R:Resilient(しなやかで強靭な)light water Reactor(軽水炉)
Z:Zero Carbon(CO2排出ゼロ)で社会に貢献する究極型(Z)
数字の“1200”は電気出力120万kW級を表す。
 

【革新軽水炉「SRZ-1200」(三菱重工ホームページより)】
 
 →三菱重工HP 革新軽水炉「SRZ-1200」のページはこちら
 
PWR4電力(北海道、関西、四国、九州)との共同研究による「SRZ-1200」の標準プラントの開発を進めており、2020年度末にプラント概念設計を完了。
 
2021年度より基本設計を開始し、現在は許認可向けのプラント設備使用検討を実施中であり、今後並行してプラント建設に向けた立地等の固有条件を考慮した個別プラントの基本設計、詳細設計を進め、2030年代半ばの実用化を目指すとありました。
 
国がGX実行会議の次世代革新炉ロードマップで、最も早く開発を進める「革新軽水炉」ですが、まさにこの「SRZ-1200」はこれにあたるものと認識した次第です。
 
開発経緯とコンセプトを伺った後は、「SRZ-1200」の設計目標とプランと仕様、主要機器の概要、安全性の向上、運用性・経済性の向上と、それぞれ現時点の設計の考えをお伺いすることができました。
 
なお、最後の運用性の向上の観点では、「再生可能エネルギーの発電電力量に合わせた大規模な出力調整能力を付加」したとありました。
 
つまりは、系統の負荷に追従した運転を可能にするということであり、これまでのベースロード電源(熱出力一定運転)と発送を変えるもの。
 
これは、19日のブログで紹介した「再循環流量により原子炉出力の調整を容易化することで再生可能エネルギーとの共存も図る」とする東芝ESSの革新軽水炉「iBR」の考えと同じであり、これが潮流であるとも認識した次第です。
 
これまでも「原子力か再エネか」ではなく、「原子力も再エネも」利用していくとの考えからすれば、この負荷追従運転の必要性も理解するところですが、これも時代の変化ということでしょうか。
 
こうして約1時間半のセミナーはあっという間に時間が過ぎてしまいましたが、最新の設計、しかもリアルに設計されている責任者からお話しを伺えたのは大変貴重なことであり、講義いただいた西谷室長はもとより、この場をセットいただいた原平協敦賀支部の皆さんに感謝申し上げます。
 
19日のブログと重複しますが、こうして国内のプラントメーカー(GE日立→BWRX-300、東芝→iBR、三菱重工→SRX-1200)が揃い踏みで「次世代革新炉」の開発を進め、日本の原子力技術が世界に誇るものであると証明することにつながればと切に願い、心より応援する次第です。