ドイツから学ぶ「地政学」と「政治」

ブログ 政治

月日が経つのは早く、「ゴールデンウィーク」の言葉が懐かしく思える今日この頃。
 
今週は、複数の方からの相談やご指摘対応、大先輩との歴史・政治談義、国民民主党福井県連の幹事会など、私にとってはどれも貴重な時間を過ごすことが出来たように感じています。
 
月日が経つのが早く感じるということは、それだけ充実していることとは良く言いますが、今後も受動的、能動的に関わらず、ひとつ一つの物事を丁寧に対応していきたいと思います。
 
さて、話しは変わり、世の中「評価が分かれる」ことは多々ありますが、ロシアの軍事行動を機に揺れるドイツのショルツ政権もそのひとつのようです。
 
「脱原子力」の急先鋒国家であったドイツは、この軍事行動を踏まえ劇的な政策転換。
 
2022年末までに国内の原子力発電所全機を停止するとしていた計画を撤回し、火力とともに原子力発電所の使用延長を決めた訳ですが、その際述べたのが、「ここ数日の動き(ロシアの行動)によって、責任ある先を見据えたエネルギー政策が我が国の経済と環境のみならず安全保障のためにも決定的に重要であることが明らかになった。」との言葉。
 
私自身、まさにこの考えが「地政学リスク」を踏まえた現実的な政策選択であると称賛したところでしたが、何とそのショルツ首相の支持率が急落しており、最近の世論調査では「首相に満足」とする回答は39%と3週間で12ポイントも下落したとのこと。
 
また、8日に行われたドイツ国内の地方選では首相の中道左派与党、社会民主党(SPD)がライバルの保守系野党、キリスト教民主同盟(CDU)に大敗したとあり、15日には国内経済の最有力州で議会選を控えていることから、連立政権内で緊張が高まっているとありました。
 
原因は、ウクライナへの兵器供与をめぐる煮え切らない態度にあるようで、ショルツ氏は2月末に「紛争地に兵器を送らない」という戦後ドイツの原則を変え、こちらも「現実的な選択」により、「自衛のため」として殺傷兵器の支援を決めた訳ですが、以降、米国や東欧の軍用ヘリコプターや戦車など大型兵器の供与に併せる形で支援に乗り出すも、例えばポーランドが戦車200台以上を供与する方針としたのに対し、ドイツは新型自走砲7台の追加供与に留まるなど、ドイツの慎重ぶりを返って際立たせていることに国民の不満が高まっていることが背景にあるとのこと。
 
ウクライナの駐独大使からは、「具体的な支援策を示して欲しかった」と失望感まで示されたようでありますが、もうひとつウクライナがショルツ政権に不信の目を向けるのは、SPDとロシアとの固い絆。
 
ある記事によると、東西冷戦中の1970年代、SPDのブラント西独首相はソ連との対話によるデタント(緊張緩和)を主導し、ソ連の天然ガスパイプライン建設を進めた。98年に就任したSPDのシュレーダー独首相はプーチン露大統領と親交が深く、退任後はロシア国営石油大手の会長に就任。ロシアのロビー活動に協力してきた。ドイツがガスや石油をロシア産に依存するために、欧州連合(EU)は対露制裁でエネルギー禁輸を即時発動するのが難しくなった。
 
とあり、ドイツと旧ソ連からの結び付きの強さから、「切っても切れない関係」にあることが見え隠れする状況にあるという訳であります。
 
まさに「地政学」の世界になるのですが、この「地政学」を辞書で調べると、地理学と政治学を合わせた用語で「国の地理的な条件をもとに、政治的、社会的、軍事的な影響を研究する学問における研究分野を意味する」とあります。
 
スウェーデンの政治学者チェレーン(1864―1922)によって第一次世界大戦直前に作られた用語ですが、地政学を大成したのはドイツの軍人K・ハウスホーファーであったとあり、彼はヒトラーのナチス党と結び付き、地政学は、第三帝国の領土拡大政策の基礎としてゲルマン民族至上主義と民族自給のための「生活圏」を主張するプロパガンダの手段と化したともありました。
 
暗い過去の歴史から東西統合、現在は西側に位置するドイツですが、こうして今まさに「地政学」の上に立っているかを思えば、いかにこの学問を誤った解釈で利用しないことが極めて重要なことと、勉強になったところです。
 
海に囲まれているとはいえ、近隣諸国との関係の複雑さ、リスクの高さから言えば、我が日本の置かれた環境はドイツと同じな訳であり、そう思えばやはり「評価が分かれる」ような国内不一致課題に対しては、世界を「俯瞰」する視点をもって考えねばならないと、こちらは改めて強く認識する次第です。
 

 
【やまたけ報告会でも使用しているスライド。現実主義者と思えたショルツ首相の今後はいかに。】