「良識の府」と昨日の参議院法務委員会

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「議会は言論の府」
 
私自身、議会での討論の場などで用いるなど、この言葉を常に念頭に置き、議会人としての行動規範を意識しているところ。
 
これと同じような言葉に、主に参議院に対して使われる「良識の府」という言葉がありますが、昨日はこれを疑う事態となりました。
 
自民、公明、日本維新の会及び国民民主党と立憲、共産とで対応の分かれる「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(以下、入管法改正案)」に関しては、8日、参議院法務委員会にて採決が行われましたが、この際、れいわ新選組の山本太郎代表が委員長席に飛びかかるなどの暴力行為があり、近くにいた自民議員らがけがをしたと訴え、採決後の法務委理事懇談会では、懲罰動議を提出する方向で調整。
 
また、この日の法務委員会には、入管法改正案の採決に反対する議員らの怒号に加え、東京新聞の望月衣塑子記者が傍聴席から発言を繰り返したとして、日本維新の会の鈴木宗男参院議員が「あってはならないことだ」と批判。
 
鈴木議員は「傍聴に来た国会議員は発言してはいけない。今日は『良識の府』の参院とは思えないほど、立民や※共産の人たちが声を出していた」と指摘。その上で「許せないのは、東京新聞の望月という記者が何回も発言していた。厳重注意なり、ルールを守るべく正してもらいたい」と委員長に求め、「院の秩序を乱した」との報告を受けた参院議院運営委員会は同日の理事会で、法務委理事会で今後の対応を協議していくことを確認しました。
 
※共産党の傍聴議員は、これに加わっていないとの見方あり。
 

【反対する議員らが委員長席に詰め寄り、怒号飛び交うなか採決が行われた参議院法務委員会】
 
一方、こうした中で、「言論の府」ならびに「良識の府」である参議院の秩序をもって対応されたのが、国民民主党の川合孝典議員(UAゼンセン組織内国会議員)。
 
こちらは騒然とする委員会室において、15項目にも及ぶ「附帯決議案」を読み上げました。
 
附帯決議とは、法律案を可決する際に、当該委員会の意思を表明するものとして行う決議のことで、法律の運用や将来の立法措置によるその法律の改善についての希望などを表明するもの。
 
法的拘束力を有するものではありませんが、立法府としての意思が示されていることから、政府はこれを尊重することが求められるものです、
 
今回、川合議員が読み上げた案は、自民、公明、日本維新の会及び国民民主党新緑風会の各派共同提案によるものでしたが、単に賛成・反対ではなく、こうした附帯決議によって、委員会として決議する責任、将来に亘る法案への責任を示したものと認識するところ。
 
採決後、Twitter上にありました川合議員ご本人の言葉を引用しますと「附帯決議の有無が今後の入管行政の実務に及ぼす影響を考えたら緊張してしまいました、、、これで救われる方が1人でも増えることを願っています。」とのこと。
 

【思いを込めて附帯決議案を読み上げる川合議員。この時の心中はそうだったのかと。】
 
「良識の府」と昨日の委員会室のギャップに怒りすら覚えていたのは、この川合議員であったかと思いますが、そんな中でも冷静に、気持ちを落ち着かせながら満身創痍で話す姿には改めて、尊敬の念を覚えた次第です。
 
さて、こうして書き綴ったブログの「前段」と「後段」で、どちらが「良識の府」として相応しいのかは言うまでもありませんが、国民の望む姿はどちらなのでしょうか。
 
「いかなる時でも暴力はダメ」、「人の話しは黙って聞く」、「意見があるなら手を挙げて言う」
 
小学生でも分かることを、なぜ最高の議決機関で繰り返されるのか。
 
他党のことを批判しないと決めた私としてはこれ以上申し上げませんが、ただただ理解できません。
 
 
《参考まで、川合議員が魂を込めて読み上げた附帯決議案を掲載します。関心のある方は以下ご覧ください。》
 
閣法第48号 自由民主党、公明党、日本維新の会及び国民民主党新緑風会の各派共同提案による付帯決議案を提出致します。
 
出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(案)
 
政府は、本邦の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 
一、 紛争避難民のみならず、国籍国等に帰国した場合に生命の恣意的な剥奪、拷問等を受ける恐れがある者や残虐な取り扱い若しくは刑罰を受ける恐れがある者、又は強制失踪のおそれがある者など、真に保護を必要とする者を確実に保護できるように努めること。
 
二、 難民等の認定申請を行った外国人に対し、質問をする際の手続きの透明性・公平性を高める措置について、検討を加え、十分な配慮を行うこと。
 
三、 難民審査請求における口頭意見陳述の適正な活用を進めるとともに、難民認定に関連する知識等を十分に考慮した上で、難民審査参与員の任命を行うこと。
 
四、 送還停止効の例外規定の適用状況について、この法律の施行後、五年以内を目途として、必要な見直しを検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
 
五、 送還停止効の例外規定を適用して送還を実施する場合であっても、第五十三条第三項に違反する送還を行うことがないよう、送還先国の情勢に関する情報、専門的知識等を十分に踏まえること。
 
六、 「難民の認定等を適正に行うための措置」の実施に当たっては、令和三年七月に国連難民高等弁務官事務所との間で締結した協力覚書に基づき適切な措置をとること。
 
七、 難民の認定等を迅速かつ適切に行う当たって必要な予算の確保及び人的体制の拡充を図るとともに、難民調査官、難民審査参与員など当該認定等に関与する者に対し、必要な研修を行うこと。また、研修の成果が実際の難民等の認定実務に活かされるよう、研修の内容および手法の改良に継続的に取り組むこと。
 
八、 難民該当性判断の手引のみでなく、事実認定の手法を含めたより包括的な研修を実施すること。さらに、実際の難民認定実務における難民該当性判断の手引きの運用状況を踏まえつつ、関係機関や有識者等の協力を得て、同手引きの定期的な見直し・更新を行い、難民該当性に関する規範的要素の更なる明確化を図ること。
 
九、 国連難民高等弁務官事務所との協力覚書のもと、難民調査官の調査の在り方に関するケース・スタディの取り組みをより一層強化し、難民認定制度の質の向上に努めること。
 
十、 最新かつ関連性および信憑性のある出身国情報の収集を行う体制を整え、とりわけ専門的な調査および分析に必要な予算および人員を十分に確保すること。日本における難民認定申請者の主な出身国や申立内容に関する出身国情報を取りまとめて、業務に支障のない範囲内で公表するとともに、難民不認定処分を受けた者が的確に不認定の理由を把握できるよう、その者に対する情報開示のあり方について検討すること。
 
十一、 監理措置制度を適正に活用し、収容が不必要に長期にわたらないようを配慮すること。
 
十二、 管理措置・仮放免制度の運用に当たっては、管理人と被管理者の信頼関係および関係者のプライバシーを尊重するとともに、管理人に過度な負担とならないよう配慮すること。
 
十三、 健康上の理由による仮放免請求の判断の際には、医師の意見を聴くなどして、健康状態に十分な配慮を行うこと。
 
十四、 在留特別許可のガイドラインの策定に当たっては、子どもの利益や家族の結合、日本人又は特別永住者との婚姻関係や無国籍性への十分な配慮を行うこと。
 
十五、 「外国人との共生社会の実現」を推進するため、出入国在留管理庁の予算・組織・体制のあり方について検討すること。