2022年10月7日
「子育て生活応援事業費」に対する討論全文
本日は2部構成で投稿いたします。
先ほど掲載した定例会の関係で、「子育て生活応援事業費」については、市民の皆さん、特に「支給される」と思われていた対象世代の方に対しては、これに「反対」した議会として説明責任を果たさねばと考えます。
ついては、私自身もその責任を果たすべく、本会議で討論した内容を全文掲載いたします。
ご覧いただき、少しでもご理解いただければ幸いです。
【以下、討論全文】
市民クラブの山本武志です。
私は、会派を代表して、第61号議案 令和4年度敦賀市一般会計補正予算(第7号)の件について、委員長報告に賛成、即ち修正案に賛成の立場で討論を行います。
本補正予算に関し、削除、修正するとした「子育て生活応援事業費」以外の事業については妥当と考えることから、当該事業に特化をし、認められないとする理由4点について、以下討論いたします。
まず1点目は、事業の費用対効果と優先順位について。
私の一般質問の場において、市長は、「敦賀市の人口減少に対して対策を打たなければ、なかなか出生数は上がっていかない。そしてその中で一番有効な施策として今回出させていただいた。」との答弁をされています。
また、敦賀市の出生数推移に関しては、これも市長は答弁で、「第一子応援で(出生数は)少し増えているところはある。敦賀市も下がっていないというところまでは来ている。」と仰られました。この見解は、令和3年度の出生数470人を捉えてのご発言かと存じますが、福井県の統計を調べますと、敦賀市の今年度の出生数は7月1日時点で計120人、単純に3倍しますと年360人。多少増減はあるとしても、令和3年度の470人から大幅に減少するものと推察されます。つまりは、現金給付型の第一子出産応援手当支給費の事業効果があるのかどうか、確固たる関連性は見当たらない訳であり、そうしたデータがある中において、この現金給付型の「子育て生活応援事業」が「一番有効な施策」とは言い切れないものと考えます。
また、市長は一般質問の場で、私とは考えが違うと明確に仰いました。違って当然かと思います。私は、行政が行うべきこれからの子育て支援とは、時限的な支援でも、一過性の現金給付でもなく、切れ目ない「子育てにお金のかからない」環境を整備することであると考えます。
そうした考えのもと、24億円もの財源を投じるのであれば、優先すべきは例えば、ゼロ歳児から2歳児の保育料無償化(すべて行うにはあと年間約2千万円)や3歳児から5歳児の副食費無償化(約8千万円)、小学校の給食費無償化(約1.6億円)、中学校では約1.1億円などの無償化施策があり、敦賀にお住まいのすべての子どもに必ず行き届き、保護者の子育てに対する安心や経済的支援にも確実につながり、ひいては、出生数増や人口減少対策としての効果が高い、「有効な施策」であり、「優先して実施すべき事業」と考えます。
つまりは、私は、定説的に効果が低いとされる「現金給付型」の事業に巨額を投じるのではなく、同じく定説的、さらには実際に兵庫県明石市で実施効果を挙げている「無償化」や「現物給付」に類する施策を講じ、国内トップランナー的役割を果たすことこそが、「子育て環境日本一」を目指す敦賀市のイメージアップにつながるほか、出生数はもとより、子育て世代の安心につながるものと主張いたします。
ついては、あまりにも巨額で唐突な提案となっている本事業は、果たして市が議論に議論を積み重ねて「一番有効な施策」としたのかの政策決定プロセスへの疑問、事業の費用対効果、あるいは事業実施の優先順位の観点から、私の考えと大きく乖離すると言わざるを得ません。
2点目は、公平性の担保について
これに関しては、基本理念に係るものとして、私も一般質問で質問した際、「行政として確保すべき公平性」との答弁がありました。子育て支援に関してはすべからく、敦賀に住んでいるお子さんに全てに行き届くことを基本に制度設計すべきとの私のスタンスからすれば、途中の経過があったにせよ今回の事業は結果、マイナポイントで支給するが故の方法論から支給条件が決まっており、この時点で基本理念を見失ったのではないかと考えます。
つまりは、本来、敦賀に住むお子さん皆が平等に受けるべきところ、強制力がなく、行政として「100%取得」と言えない「マイナンバーカード取得」を、行政が付する支給条件として付加したことは、「行政として確保すべき公平性」に類さないものと考えます。
3点目は、財源の裏付けについて。
財政に関しても同じく、自身の一般質問において、「中期財政計画上は影響がないと考えている。」との答弁がありました。これに関しては、まず事務費を合わせ、5年総額24億2530円の事業は、中期財政計画に反映すべき「大規模事業」に十分あたると思います。また、年あたり約6億5千万円の支出規模は、令和4年2月の「中期財政計画」における今後5年間の収支見込みのうち、「扶助費」の約1%にあたります。
なお、市は事業期間を3年に置いたうえで、その効果を検証し、持続するか見極めるとしていますが、これをさらに継続する場合の費用負担、財源の根拠等の見通しは示されておらず、ふるさと納税の充当を見込むとて、中期的視点で財源確保の見通しが立っているのかどうか、慎重な検証がされるべきであり、その説明なく「当面大丈夫」では、現段階で「了」とする判断ができないと言わざるを得ません。
最後4点目は、市の説明責任について。
まず費用について、予算決算常任委員会や文教厚生分科会の質疑において、19億5千万円と説明されていたものが、最後に行った私の一般質問で総額24億2530万円との答弁がありました。これは、事務費込みの場合との金額差であったとしても、質問なければ明らかにされなかったこと自体、説明のあり方として不十分ではなかったかと私は認識しています。
また、マイナポイント付与に関しては、文教厚生分科会の質疑では「今後は決済事業者との協議もあって、来年に向けて協議」との回答に留まっていたものが、こちらも私の一般質問の中で市長からは、「購買付与」との言及がありました。市長曰く「購買によってポイントを付与するということであれば所得に入らないということがありますので、そういう逃げ方が何とかできないかというところの中で今回の政策になっています。」と答弁されていますが、この「逃げ方」の言葉が意味するところは何なのか。行政が用いる手法、概念として果たして正しいのか否か、現段階で私には判断ができません。
ついては、聞かなければ掛かる費用の全容が示されない、ポイント付与方法に関しては、「購買付与」とする考え方や妥当性について、双方の認識の差を埋めるための時間や機会が不足しているものと言わざるを得ません。
最後に、私は、市が子育て施策に財源を重点配分するとの方向性には賛同するものの、これまでひとつ一つ、着実に子育て支援施策を進めてきたことを思えば、今回のような大花火を打ち上げるかの「らしくない」事業を提案されたことを「非常に残念」と受け止めます。
「子育て生活応援事業費」は一旦リセットをし、改めて、敦賀に住むすべての子ども達に行き届くことを基本に、「子育てにお金の掛からないまち敦賀」、「真に子育て世代にやさしいまち敦賀」に向け取り組まれることの期待を込め、今回判断することといたします。
以上、これまで述べた理由により、「第68号議案 令和4年度敦賀市一般会計補正予算(第7号)」の件について、委員長報告に賛成とする討論といたします。
議員各位のご賛同をよろしくお願いいたします。
以 上