2022年12月12日
「ちえなみき」は教養主義復活への一歩
少し前に、2017年6月5日の日経新聞「時流地流」に掲載された「市営書店、教養主義への扉」との切り抜きをいただきました。
切り抜きは、青森県八戸市が市営書店「八戸ブックセンター」を開業して半年を迎えようとしていた頃のもので、記事には、「自治体直営の書店は離島などを除けば全国初となる同センターは、民間の小規模書店では扱うのが難しい専門書や良書を中心に販売し、読書文化を育むのが目的だ。」から始まり、「開業から5ヶ月で10万人を突破し、1日当たり約660人で目標の330人を大きく上回る。」とありました。
続いて、当時の小林真・八戸市長は「『本のまち八戸』構想を掲げ、2014年度から新生児に本を贈り、小学生に市内で使える2000円の図書券を配ってきた。書店はその総仕上げで、施設整備に1億4千万円、毎年4千万円の赤字を見込むが、小林市長は『市民が本と出会う場所を創出する公共サービス』と話す。」とあり、「最近、電車で読書をする人をほとんど見ない。片やネットでは下劣な言説が飛び交う。市営書店が教養主義復活への一歩となればと思う。」と社会風刺も絡めた形で締め括られていました。
この記事を読んで重なるのが、敦賀駅西地区で「本屋でも図書館でもない『知の拠点』」をコンセプトとする「ちえなみき」ではないかと思います。
→「ちえなみき」の詳細はブログ「『ちえなみき』はワクワク感あふれる書籍のジャングル」(10月11日)をご覧ください
奇しくも昨日の福井新聞「ふくい日曜エッセー時の風」のコーナーで、常々教えを請うている気比史学会の糀谷好晃会長が「迫り来る新幹線敦賀開業」とのタイトルで寄稿されており、「地政学的優位性と深遠な歴史など敦賀が持つ真の価値と可能性が発揮できていないことに忸怩たる思いできたのは筆者だけではあるまい」としつつ、新幹線開業を前に「今こそ我がまちのポテンシャル(潜在的可能性)を引き出し、敦賀としてのアイデンティティを世に送り出す絶好のチャンスであり、このチャンスを前にして、官の覚悟と、民の動向が問われる所以でもある。」と述べられていました。
また、9月に駅西地区で開業した「otta(オッタ)」の中核・公設書店「ちえなみき」に触れ、「図書館や一般書店とは一風変わった書籍群を歴史・文化・生命など「文脈」で並べ、本との出会いを自らが楽しむ場としている」こと、「全国的に稀有な今回の挑戦が、読書の真髄に迫る教養主義復活の一歩ともなればと願うのは大袈裟か」と記されていました。
先日の報道では、9月1日の開業から3ヶ月で来場者は10万人を超えたとのことで、コロナ禍を差し引いても八戸を大きく上回るペースに、その役割と期待は大きく膨らむもの。
【「ちえなみき」の店内。書棚配置や本の陳列すべて、考え尽くされたものとなっています。】
インターネットやSNSの急激な普及で、知りたいことがすぐに手に入る時代ですが、それでも読書の重要性や価値が変わることがないのは何故か。
単に答えを求めるだけではなく、そこには新たな出会いや感動、希望が生まれ、そして何より「知」を得ることは、個々の幸せや満足感が得られることと同義であると考える次第。
「知の提供」は基本的には「官」の役割と認識しつつ、好調な出足の「ちえなみき」が文字通り、市民はもとより新幹線開業で敦賀を訪れる方々にとって「知の拠点」となることに加え、糀谷会長が仰るよう「教養主義復活の一歩」になること、そしてさらには、こうした学びの姿勢がやがて敦賀の文化となり、アイデンティティとなって根差すことを期待して止みません。
→敦賀市知育・啓発施設「ちえなみき」のホームページはこちら