2022年3月3日
独、安全保障もエネルギーも「現実が変わった」
昨日の敦賀市議会は来年度当初予算審査のため、予算決算常任委員会(分科会)を開催。
総務民生、産経建設、文教厚生の3つの分科会に分かれ、前日にあった全体会での基本質疑の内容も踏まえつつ審査を行いました。
私が所属する産経建設分科会では、産業経済部、観光部、建設部、都市整備部、水道部が所管する事業や債務負担行為、継続費について確認を行った訳ですが、一般会計予算以外にも港湾施設事業、産業団地整備事業、国道8号防災道路に係る公共用地先行取得事業などの特別会計も含まれることから、審査自体多岐に亘るもの。
分科会までを終えた当初予算審査については今後、3月17日開催の予算決算常任委員会(全体会)にて各分科会長から審査結果の報告をした後、委員会採決に進むことから、まずは、分科会長として報告する内容を精査するとともに、一議員としては採決に向けた判断材料を揃え、決定権者としての役割を果たしていきたいと思います。
さて、私のような一地方議員とは比較にならない大きな政治判断をせねばならないのは一国のリーダーですが、いま世界で驚かれているのがドイツのオラル・ショルツ首相。
BBCが「ドイツが劇的な政策転換」とまで報じ、2月27日はドイツにとって歴史的な日だったとされるのがまず外交安全保障政策で、連邦議会の緊急審議にてショルツ首相は2022年予算から1000億ユーロ(約13兆円)を国防費に追加し、連邦軍の装備強化などに充てると報告。
これにより国防費は国内総生産比で2%以上へと大幅に引き上げることになるとのことですが、これまで他のNATO加盟国に求め続けられても応じなかった国防費引き上げを1日にして大胆に転換したことを捉え、「NATOの長年の目標をプーチンが数日で実現させた」と揶揄する声もあるようですが、これがまず驚きの第一点。
【連邦議会で対ロ政策の転換を発表するショルツ首相(ロイター通信の写真を引用)】
二点目はエネルギー・原子力政策。
2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて決めた脱原子力については、2022年末に全17基の原子炉廃止が計画通り実現することで進んでいましたが、この政策に関してもショルツ首相は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシア産ガスへの依存度を引き下げるためにエネルギー政策を大きく転換する方針を示しました。
国内エネルギー需要の約半分をロシアからのガスに依存するドイツは、他の西側諸国からロシア産ガスへの依存度を引き下げるよう求める圧力を受けても、脱原子力に加え、石炭火力発電所も2030年までに段階的に廃止するとしていることから、ほとんど選択肢がない状態となっている状況を踏まえ、原子力発電所と石炭火力発電所の運用期限を延長することを表明。
先のEUタクソノミーを巡る原子力の取扱いの際、反対国の筆頭であったのがドイツであったことを考えると、「舌も乾かぬうち」の政策転換に複雑な思いも抱く訳ですが、今回のウクライナ侵攻はそれだけのインパクトがあるということに尽きるのかと。
ショルツ首相は現に、「ここ数日の動きにより、責任ある、先を見据えたエネルギー政策が、わが国の経済と環境のみならず、安全保障のためにも決定的に重要であることが明らかになった」と指摘したうえで「わが国は個別のエネルギー供給国からの輸入に依存している状況を克服するため、方針を転換しなければならない」と訴えていることが、それを証明することかと思います。
一国のリーダーに失礼ながら、「現実を直視」したエネルギー政策でなければ国益を失することは、私からすれば至極当然のことであり、ようやく「脱原子力という幻想」から覚め、現実の世界に戻られたことを評価する次第です。
振り返り日本。
先日は経済産業省が電力各社に資源調達の確保要請をしていましたが、ただでさえ電力需給が逼迫する中でのこの情勢は、脅しではなく本当にエネルギー危機であり、お願いベースで乗り切れるものではない、と私は考えます。
これまで「ドイツを見習え」としてきたのであれば、今回のショルツ首相の採った判断も見習い対応いただきたいと、岸田総理に対して強く思う次第です。
兎にも角にも「現実が変わった」のですから。