2021年10月10日
気候変動について考える(前編)
8日に所信表明を行った岸田首相。
所信表明に対する与野党それぞれの見方は既に新聞報道等にあるところですが、期待した岸田政権を担う一部閣僚に対して早や懸念の声が挙がっているところ。
その矛先は山口環境大臣で、原子力発電を可能な限り低減、レジ袋有料化見直しには慎重など、前小泉大臣の考えを踏襲するかの発言に落胆するばかりか、「スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんと温暖化に対する実感を共有している」との認識に対しては、有識者から「新環境大臣は前任者と同じで科学音痴。中学高校の理科を理解していないと自白しているようなもので、それではまともな環境政策はできない」とまで揶揄されるなど、一難去ってまた一難。
仮に衆議院選挙で政権を維持し岸田政権が続いたとて、このまま環境大臣を留任させるようでは、理想論の前大臣への批判が相次いだよう、政権の「新たな火種」になることは間違いないでしょう。
そもそも、環境省の所管するのはエネルギーではなく環境問題であることからすれば、確立した脱炭素電源である原子力発電を「可能な限り低減させる」というのは、「原子力発電が環境的に好ましくない」と考えているから言っているのかどうか、深く突っ込んで伺ってみたいものです。
その環境問題に関して、山口大臣も当然熟読されているであろう「IPCC」の報告書。
正式には「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)第1作業部会報告書(自然科学的根拠)」(以下、AR6/WG1報告書)といい、少し前になりますが、今年の8月9日に公表されたもの。
気候変動分野において重要な政府間組織であるこのIPCCでは、2015年2月に開催された第41回総会において、第6次評価報告書(AR6)は第5次評価報告書(AR5)と同様、5~7年の間に作成すること、18ヶ月以内にすべての評価報告書(第1~第3作業部会報告書)を公表することなどが決定され、今回はその第1作業部会の自然科学根拠が示されたという位置付けになります。
ちなみに3作業部会の構成は以下の通り。
第1作業部会(WG1)- 自然科学的根拠
第2作業部会(WG2)- 影響・適応・脆弱性
第3作業部会(WG3)- 気候変動の緩和
AR6/WG1報告書の政策決定者向け要約(SPM)の承認、同報告書の本体等が受諾されたIPCC第54回総会及び同パネル第1作業部会第14回会合は、報告書各国政府の代表並びに世界気象機関(WMO)、国連環境計画(UNEP)、気候変動枠組条約(UNFCCC)など国際機関等より300名以上が出席、日本からは外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、気象庁、環境省などから計21名が出席し、7月26日から8月6日にかけてオンラインで開催されました。
ここで承認された気候変動の自然科学的根拠に関する最新の科学的知見がまとめられた「政策決定者向け要約(SPM)の概要」(ヘッドライン・ステートメント)は、以下4つのカテゴリーごとに示され、
A. 気候の現状
B. 将来ありうる気候
C. リスク評価と地域適応のための気候情報
D. 将来の気候変動の抑制
例えば、
A.1では「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている。」
B.1では、「世界平均気温は、本報告書で考慮した全ての排出シナリオにおいて、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続ける。向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球温暖化は1.5°C及び 2°Cを超える。」
D.1では「自然科学的見地から、人為的な地球温暖化を特定のレベルに制限するには、CO2の累積排出量を制限し、少なくともCO2正味ゼロ排出を達成し、他の温室効果ガスも大幅に削減する必要がある。メタン排出の大幅な、迅速かつ持続的な削減は、エーロゾルによる汚染の 減少に伴う温暖化効果を抑制し、大気質も改善するだろう。」
など、脱炭素化による地球温暖化対策の必要性を謳う拠り所がここになっていると言えます。
詳細は、環境省ではなく気象庁HPに和訳版が掲載されていますので、以下リンクよりお読み取りください。
→→→IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書(AR6)和訳版はこちらから
世界各国の関係者、科学者が示した報告書ですので、私なんぞが意見を述べる知識も術もない訳ですが、ひとつあるとすれば、この報告書を全て丸呑みして良いのかという疑問。
これに関しては、各分野より、こちらも有識者の方が異論を唱えたりもしている訳ですが、一方の考えを鵜呑みにしないという意味において、私の勉強も兼ね紹介できればと思います。
と、ここまで記載をしておきながら何ですが、その紹介をすると長くなってしまいますので、続きは明日にさせていただきます。
秋晴れが続いた敦賀の天気も、明日からは下り坂のようです。
既にやや風が強い朝となっておりますが、貴重な日曜日を有意義にお過ごしください。
【写真は昨朝の散歩で出会った風景。秋の雲、青空に映える野坂山。何とも胸の澄く景色が近くにあることに感謝です。】