2020年7月30日
日本原燃「六ヶ所再処理工場」の事業変更許可申請が許可される!
昭和30年に制定された「原子力基本法」。
第一条の「目的」にはこう記されています。
『この法律は、原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。』
エネルギー資源に乏しい日本が、ゆたかな国民生活や経済成長を目指すために必要不可欠である、安定した電気の供給のため選択されたのが「原子力」であり、現時点においても本法律が存在する以上、我が国の将来を見据え、国家観を持って判断された先人の魂は今なお生き続けていると理解しています。
昨日、将来におけるエネルギー確保という観点から実現すべき「原子燃料サイクルの確立」を目指すうえで大きな鍵を握る、日本原燃の使用済み核燃料「再処理工場」が約6年半に亘る原子力規制委員会の審査を経て、事業変更許可申請の許可を得ました(簡単に言うと「審査に合格」)。
「再処理」とは、貴重なウラン資源をより有効に利用するために、原子力発電所の使用済燃料から再利用できるウランとプルトニウムを取り出すシステムのことであり、青森県六ヶ所村にある日本原燃がしゅん工を目指し取り組んでいるもの。
【青森県六ヶ所村にある日本原燃】
【日本原燃の事業説明(ホームページより)】
今回合格した再処理工場は、2014年1月に新規制基準への適合性に係る事業変更許可申請を行い、これまで審査会合の場において安全性向上対策について議論を重ねてきており、審査においては、火災・爆発対策や地震・津波対策、外部火災対策、竜巻対策(最大風速100m/sを想定)、火山対策などの「設計基準」に加え、臨界事故や水素爆発への対策など「重大事故等」に対し、何と21回もの一部補正(見直し)をされ、ここに至ったものであります。
この日の許可は、再処理工場のしゅん工、その後の安全な操業に向けて大きな一歩になるものであり、関係者の皆さまのこれまでの努力に心から敬意を表するものであります。
再処理工場がしゅん工し、MOX燃料工場が完成すると、ウラン濃縮から再処理、MOX燃料加工、廃棄物管理までの環(サイクル)が完結し、『準国産エネルギー』の安定供給に大きく近づくことになります。
石油・天然ガスなどの化石燃料は、一回燃やしてしまうと二度と燃料として利用することはできません。
これに対してウラン燃料は3~4年間使うことができ、さらに再処理することで繰り返し利用することができます。
多くの原子力発電所で利用されている軽水炉では、主にウラン235からエネルギーを取り出していますが、ウラン238が中性子を吸収すると、ウラン238の一部がプルトニウムに変化します。
このプルトニウムとまだ使えるウラン235を再処理して取り出し、ウラン燃料やMOX燃料(Mixed Oxide Fuel)の原料として使えるようにするのが再処理工場の役割です。
つまり、再処理工場は「準国産エネルギー資源の創出の場」であるといえます。
再処理により回収したウランやプルトニウムを軽水炉で利用することにより1~2割のウラン資源節約効果が得られ、さらに将来的にプルトニウムの転換効率に優れた高速増殖炉(もんじゅは廃止措置に入っていますが)でプルトニウムを利用することができれば、利用効率は格段に向上すると期待されています。
【(出典)鈴木篤之「原子力の燃料サイクル」より】
つまり、冒頭に述べた「原子力基本法」の目的である「将来におけるエネルギー資源を確保し」との目的につながるものであり、我が国のエネルギー政策においても大きな役割を果たすものであることは言うまでもありません。
こういった話しをしますと、「あなたは原子力発電所に勤めているからそう言うのでしょ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、国際情勢や現在の状況を客観的に捉えた考えとして、今もこの先も使えるエネルギー資源を使わないことの非効率性と、その非効率が及ぼす影響は国民生活や経済、さらには国力の低下にもつながりかねないリスクであることすれば、至極真っ当な考えである思う訳でありまして、その点は「賛成」「反対」の二項対立ではなく、是非とも皆さまにも冷静にお考えいただきたく思うところであります。
日本原燃は令和3年度上期の工事終了を目指すものの、昨日の会見で増田社長は「これからが大事。安全審査で約束した事項を現場の工事に反映させ、安全に安定して操業するのが使命」と述べられています。
「原子力基本法」の第二条(基本方針)にはこうあります。
『原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。』
役割を果たすためには、この先超えなければならないハードルはまだまだあるものの、法律の趣旨に則り、何をおいても「安全第一」の事業運営が不可欠。
日本原燃の審査合格を踏まえ、今一度、先人たちの思いと法の精神を深く念じ、我が国が「原子力を選択した意味」を忘るることなく信念を持って取り組む所存です。