日本では「タブー?」な、脱炭素化に向けた「世界の共通認識」

エネルギー ブログ

「しびれる試合」というのは、こういう試合を言うのでしょう。
 
昨晩の東京五輪ソフトボール決勝。
 
宿命のライバルで、一昨日は今大会唯一の黒星をつけられた米国との試合は、日本が2-0で「しびれる試合」を制し、金メダル獲得。
 
ソフトボールが五輪競技に復帰したのが13年ぶりであっただけに、選手の喜びもひとしおのように映りました。
 
また、試合後のインタビューでは、上野投手が「(13年ぶりの五輪金メダルに)諦めなければ夢は叶うということをたくさんの方に伝えられた。」、宇津木監督は、「正直に言うとこの1週間、怖かった。このご時世の中で開催する(ことについての)迷いもあった。でも国民の皆さんが支持してくれたことが一番我々の力になった」とチームへの応援に感謝する言葉を述べられました。
 
宇津木監督の言葉にあるよう、コロナ禍での五輪開催に反対する国民の声は、こうも選手や指導者を苦しめていたことを改めて知ると同時に、逆も然り、選手の後押しは、これまた国民の声でしかない訳であり、やはり自国民が自国の選手を苦しめることだけはするべきでないと思う次第であります。
 
昨日は、ソフトボールのほか、お家芸の男子柔道では、4階級連続の金メダル、さらには新種目のサーフィンなどでもメダルを獲得し、新旧競技で上手く噛み合った活躍により、日本の金メダル獲得数は10個。
 
現在のところ中国を抑えトップに立った訳ですが、今日も引き続きの快進撃を期待したいと思います。
 
気づけば、毎日同じような期待のコメントをしていますが、その点ご容赦のほど。。。
 
さて、昨日は「予定」としておりました関西電力美浜発電所3号機(定格電気出力82万6千kw)ですが、27日17時00分に総合負荷性能検査を終了し、無事に営業運転を再開しました。
 
営業運転再開にあたり、関西電力がコメントを発表していますので、ご紹介させていただきます。
 
(以下、関西電力コメント)
新規制基準施行後、全国で初めて、40年を超えての再稼動に向け、立地地域をはじめ、これまで一方ならぬご尽力を賜りました皆さまに、あらためて心より厚く御礼申し上げます。
40年を超えて原子力発電所を最大限活用していくことは、「電力需給の安定化」や「ゼロカーボンの推進」の観点から、非常に有意義であると考えています。
当社は、美浜発電所3号機において、16年前に発生させた重大な死傷事故の反省と教訓を深く心にとどめ、安全性をたゆまず向上させていくとの強い意志と覚悟のもと、安全・安定運転の実績を一つひとつ積み重ねてまいります。
 
ここに書かれていることをつなぎ合わせていくと、原子力発電は今後も、我が国のエネルギー政策の基本にある、安全を大前提に、電力の安定供給と環境面を同時達成する「S+3E」(もうひとつのE:経済性の記載はありませんでしたが)に貢献していくとの姿勢を改めて示されたものと、私は理解したところです。
 
こうして美浜発電所3号機の営業運転再開を踏まえ、世界全体の脱炭素化、日本がめざす2050カーボンニュートラルに向けての原子力発電の位置付けを考えるに、
 
◉脱炭素化に向けた原子力の長期運転の重要性は世界の共通認識であり、現在多くの国々では、高経年化に伴う許認可の更新や健全性の確認を行ったうえで、既設原子力発電所の運転延長が進められており、例えば米国では運転中94基のうち9割超が60年までの運転延長が認可され、うち6基が80年までの認可を取得していること。
 

【原子力のポテンシャルの最大限発揮と安全性の追求(令和3年4月14日 資源エネルギー庁資料より抜粋)】
 
◉こうした中、ドイツなど一部の国を除き、消費電力量が大きくカーボンニュートラル(CN)を表明している国の多くが将来にわたり原子力を利用する方針を掲げており、国際エネルギー機関(IEA)も、脱炭素目標の達成とエネルギー安定供給に大きく貢献している原子力の利用無くして、クリーンエネルギーへの移行は困難としていること。
 
◉また、IEAは、低炭素電源の中で既設原子力発電所の運転期間の延長が最も費用対効果が高いと評価し、今後世界各国において、新規建設等とともに運転期間の延長が進まなければ、追加的なコスト負担が急増しCNの実現可能性が低下すると指摘するなど、脱炭素化に向けた原子力の長期運転の重要性は世界の共通認識となっていること。
 
などが、世界の常識になっている訳ですが、先の次期「エネルギー基本計画(素案)」然り、エネルギーコスト検証結果を見るに、日本においては、こうした潮流を敢えて聞かないようにしているのではと疑いたくなる内容となっています。
 
少資源国の我が国にとって、足元の構造的課題である電力需給ひっ迫やエネルギーコストの高止まりの解消はもとより、将来にわたり低廉かつ安定的にエネルギーを確保しつつ、今後の脱炭素社会やデジタル社会を実現するためには、再生可能エネルギーの適切な範囲での導入拡大、火力発電の一層の高効率化や技術開発等とともに、既に確立された脱炭素技術である原子力を最大限に活用していくことが不可欠と考えるものであり、とりわけ、原子力に関しては、より安全性に優れた技術を用いた新増設・リプレース等、将来に向けた明確な道筋を国が示さなければ、「尻すぼみ」となることは火を見るより明らか。
 
こうして考えるに、美浜発電所3号機の営業運転開始は、我が国のエネルギー政策を考えるにあたって極めて大きいことであり、関西電力のコメントにもあったよう「安全・安定運転の実績を一つひとつ積み重ねていく」ことが、原子力に対する国民からの信頼と、将来に亘り最大限活用していくことへの理解につながるものであり、私自身、現場第一線で働く皆さんとともに、その取り組みに汗をかいていきたいと考えます。