2022年5月7日
対露圧力を高めるための日本の役割とは
一日も早い停戦を願うウクライナ情勢ですが、ロシアの侵略開始から2ヶ月を経過し、最近では「遠のく停戦」の文字が目立つようになっています。
人間の慣れというものは怖いもので、目を逸らしたくなるようなビルが破壊された光景や双方の戦況報道もどこか「当たり前」に感じるようになっている自分にふと気付く訳ですが、決して対岸の火事ではないことだけに、引き続き関心高く状況に注視していかねばと、感覚を改める次第です。
そうした意味において、戦況で言えば昨日は、南部オデッサ沖の黒海海域で、ロシア海軍のフリゲート艦にウクライナ軍の新型対艦巡航ミサイル「ネプチューン」が命中し、火災が発生したとウクライナメディアが報じたほか、日米への威圧が狙いとされる点に関しては、ロシア太平洋艦隊が日本海で最新型の対潜ミサイル「オトベト」の発射演習を実施したと発表し、演習の動画を公開したとロシア国防省が公表するなど、敵視を強める行動があったところ。
余談ではありますが、このウクライナ侵略を通じ、様々な兵器の名前を耳にするところ、今回ロシアが演習で使用した「オトペト」の射程は50キロで、発射後、空中を最大マッハ2.5(音速の2.5倍)で飛行し、潜水艦付近で着水した後、自動で潜水艦を探知して追尾。
最大到達深度は800メートルとインタファクス通信が公開データからの情報として報じています。
演習ではもちろん「目標に命中」したとあり、この攻撃能力、精度の高さには驚くところです。
また、ウクライナに対しロシア軍が使用している巡航ミサイル「オニクス」や「カリブル」の発射も可能な装置から発射されたものだそうで、日米への威圧のみならず、実戦想定しての演習であることを認識するものであり、この行為の意味するところに強い警戒感を抱いた次第です。
一方、アメリカから聞こえてくるのは、「私の政権ならばこんなことは決して起きなかった。可能性はゼロ、ゼロ、ゼロだ」とのトランプ前大統領の言葉。
4月23日に開かれた支持者集会での発言とのことですが、ロシアが共和党ブッシュ政権下の2008年にジョージア(グルジア)へ侵攻し、民主党オバマ政権下の2014年にウクライナ南部クリミア半島を奪い、トランプ政権の4年間は目立った侵略行動は控えていたのに、バイデン政権下の今年2月に同国へ攻め入ったことを挙げ、「自分の時にはプーチンは大人しくしていた」と言わんばかりに自身の外交防衛手腕の高さをアピールした形ですが、これをどう受け止めれば良いのか正直複雑な心境であります。
欧米を始め、西側諸国と緊密な連携を図ることが生命線のわが日本ですが、ちょうど昨日は東南アジアと欧州計6カ国の訪問を終え、岸田首相が帰国したところ。
有識者も述べている通り、日本が果たすべき役割は、ロシアへの独自制裁を強めるばかりでなく、対露圧力が高まるよう、制裁に加わる国を増やすための橋渡し役をしていくことにあると考えるところであり、まさに今回の訪問でその成果が挙げられていることを期待するばかりです。
エネルギー分野を見れば明らかなよう、カネとモノが流れる抜け道があれば、ロシアにとっては経済制裁を課しても痛くも痒くもないばかりか、逆に強気に出てきている状況を見るに、「遠のく停戦」を打開する鍵を握るのは日本の存在にあるように思えてなりません。
ロシアの日本への敵視が強まる中、「報復」のリスクを考えながら、この役割にどこまで徹することが出来るのか。
政府任せではなく、国民ひとり一人が「覚悟」を持つことによって後ろ支えせねばと考える次第です、
【訪問でジョンソン英首相と会談する岸田首相(共同配信)】