2021年12月6日
「無秩序・無責任な開発」から敦賀の景観と住民の安全を守るためには
「自分が良ければそれでいいのか」
と思わず憤ってしまうのが、電力市場価格の高騰を受けて高圧供給(特別高圧含む)から撤退する小売電気事業者が出てきていること。
市場高騰に伴う調達費用削減のため、ハルエネ、リケン工業、スマートテックなどが11月、契約期間の更新を行わないと顧客に通達したとあり、冬の本格的な需要期を迎える前に顧客をいち早く手放し、自社の電力調達コストを抑える狙いとのことですが、顧客の契約切り替えがスムーズに進まなかった場合、需要家保護の観点で大きな問題になることは必至。
顧客側がこうしたリスクも承知して契約したか否かは置いておいて、いきなり「契約更新しませんので電気は他社から買ってください」と言われた立場を思うと気の毒でなりませんが、こうして見るに、これらの事業者が最初から「儲からなければ撤退すれば良い」との考えで電力市場に参入してきたのであれば言語道断と思う次第です。
さて、このようなニュースを聞くに、今週行われる市議会一般質問で自身が取り上げる「再生可能エネルギーと地域共生」にも通じてしまうのですが、本日は少しだけ質問内容の解説をさせていただきます。
まずお断りしておかなくてはならないのが、大前提のエネルギー政策に関して、私は決して「再エネ否定論者」ではなく「現実的なエネルギーミックス論者」であることをご認識いただき、今から申し上げることは「再エネを止める」ためではないことをご理解いただければと存じます。
そのうえで、本年7月に「ゼロカーボンシティ宣言」を表明した敦賀市として、脱炭素化の流れの中で再エネをどのように位置付けるのか、国が再エネ比率をさらに高めていく(2030年で電源構成では36〜38%程度を見込む)とし、改正温暖化対策推進法に基づく再エネ促進区域の設定(いわゆるポジティブゾーニング)など各地域に対しても導入拡大施策を講じる中においても無秩序・無責任な開発・設置と引き換えに美しき郷土敦賀の景観が損なわれることや地域住民の安心と安全が脅かされることのないよう、そうしたリスクをいかに未然防止するのかというのが質問趣旨であります。
とりわけ太陽光発電については、2012年7月の固定価格買取制度(FIT)開始以降の急速な導入拡大に伴い、様々な事業者の参入が拡大した結果、景観や環境への影響、将来の廃棄、安全面、防災面等の面で深刻な問題が顕在化している状況にあり、全国でも住民トラブルが絶えないばかりか、7月の静岡県熱海市の大規模土石流災害においては、従前では規制に殆ど引っ掛からない単一で50kw未満の太陽光発電所が10以上も連なっていた(メガソーラー化していた)などの例も確認されているところ。
ここ敦賀市においては、今現在そうした案件が確認されている訳ではありませんが、実際市内をパトロールしてみると、現行の技術基準では必要なフェンスや塀で発電設備を囲うこともなく、簡易な基礎、足場パイプで設置されたものも散見される訳であり、メガソーラーばかりでなく、こうした設備がこの先放置されることのリスクを含めてどのように対応していくのかを具体的に考えねばならないと以前より考えていた次第。
【市内に設置されている太陽光発電設備。ちなみにこの設備の発電出力は「49.1kw」でした。】
従前技術的な規制が緩かった点に関しては、経済産業省が本年4月から太陽光発電設備に特化した技術基準「発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令」を制定(50kw未満設備の事故報告義務など)するなどの動きはあるものの、一方「設置」に関しては、環境影響評価法などの対象となる案件(出力や面積の大きさ)を除き、様々な法整備がされている中においても十分な規制を掛けることができない状況にあるのが現状。
こうした状況を踏まえ、再生可能エネルギー特別措置法においては、「条例」を含む関係法令遵守を認定基準とすることや「地域の実情に応じた条例」への違反に対し、特措法に基づく指導等を可能にすることを定めたほか、第6次エネルギー基本計画においては、各地域の条例等の制定状況やその内容について網羅的に調査し、「各自治体における地域の実情に応じた条例の制定を後押し」するとしているなど、「条例」のある無しが非常にキーポイントになっていると言えます。
こうした経過や状況を踏まえ、ゼロカーボンシティ宣言で再エネ由来水素(いわゆるグリーン水素)を拡大していくとすれば、今後そうした再エネ業者が市内に参入してくることも想定し、今ある土地利用調整条例や景観条例の適用の守備範囲はどこまでか確認するとともに、主義範囲外の点に関しては今のうちから備えておく、つまりは抑止力としての条例制定が必要なのではないかというのが私の考えです。
仮に「今そういう案件がないから不要」ということになると、それはまさに「発生主義」であり、気づいた時には住民の安全や景観が守れなくなってしまう恐れが生じるため、私としてはそうしたリスク意識のもと意見提起していく所存です。
近々で言えば、お隣滋賀県大津市でも条例をすり抜けるかのような太陽光発電を巡るトラブルが起きているのが現実であり、こうした事例を「対岸の火事」と思うことなく、「リアルな教訓」として捉え対応していきます。