「第43回 敦賀市総合美術展」始まる

ブログ 敦賀の歴史・文化

アート(=芸術)を辞書で引くと、「一定の材料・技術・身体などを駆使して、鑑賞的価値を創出する人間の活動およびその所産」とあります。
 
人類が自らの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体である文化との関係でみれば、その形成の中核を担ってきたのがアートであり、それは私たちの習慣、信念、価値観の一部を反映している。
 
つまり、人間が人間らしく生きる上でアートは必要不可欠なものである。
 
まさに、このアートの持つ意味合いを体現する「第43回 敦賀市総合美術展」(市美展)が昨日から始まりました。
 
昭和56年から続くこの市美展は、敦賀市文化協会が主催し、新人の育成と芸術文化活動の高まりを促進するために、文化交流の一環として、敦賀市、美浜町、若狭町の方々のご支援をいただきながら公募型で行われているもので、今回も※7部門に248点の作品が出品されています。
 
※7部門→①日本画・水墨画、②絵画・造形、③デザイン・版画、④彫刻、⑤工芸、⑥書道、⑦写真
 

【「市美展」開場のプラザ萬象には大きな看板が掲げられています。】
 
開場式では主催者代表のご挨拶に続き、堤副市長、力野県議会議員、そして市議会を代表して私と、祝辞を述べる機会を頂戴。
 
挨拶の後にはテープカット(私は初体験)が行われ、開場後は早速作品を鑑賞しましたが、創作者の思いがストレートに伝わる感動や癒し、そして生きる力(決して大げさでなく)を感じた次第です。
 

【僭越ながら、私の方より市議会からのお祝いのご挨拶】
 
ここ数年は毎年、市美展を訪れていますが、どこか気持ちが満たされ、「自分も頑張ろう!」というマインドが自然に湧いてくるのがアートの力といったところ。
 
文化芸術に触れることは、まさに「人生と心をゆたかにする」ことですね。
 
この市美展の会期は、6/23(日)まで(但し、6/17(月)は休館)。
 
市内外を問わず、皆様ぜひ、会場のプラザ萬象に足を運んでいただければ幸いです。
 
なお、自身の挨拶でも触れたことでありますが、昨今、アートと健康、ウェルビーイングとの関係に注目が集まっており、そのきっかけは、2019年11月にWHO(世界保健機関)による「健康とウェルビーイング向上におけるアートの役割」のレポートにおいて、認知症などの病気の予防、孤独や社会的孤立など身体的、精神的健康にアートが良い影響を与える可能性が示されたことによります。
 
つまりは、これまでボンヤリ「芸術は健康に良い」とされていたものが、科学的データとして証明されてきているということになる訳であり、本レポートでは、個人や地域、国レベルでアートと健康をしっかりと結びつけていくことが奨励されており、すでに海外では、美術館や自治体はもちろんのこと、政治家もアートを政策に落とし込み、実践につながっている事例もあるところ。
 
また、日本においては、「文化は『ともに生きる社会基盤の形成』(文化庁)」の実践の場として、地域における芸術文化の活動も年々盛んになっており、実例としては2000年代中頃から、ビエンナーレ、トリエンナーレの実施数の増加や規模の拡大などが見られ、地元自治体でも、地域の活性化にもつなげようと積極的な取組みが見られています。
 
芸術文化観光専門職大学の古賀弥生教授によれば、「人づくり」と「まちづくり」、両方をあわせて「地域づくり」と捉えられる。
 
「地域づくり」といえば、「地域経済の活性化」を思い浮かべる人が多いかもしれない。
しかし、地域が元気になるためには、そこに住む人々が元気でなくてはならない。元気な人々が自分たちの地域の将来を真剣に考え、地域の課題解決や活性化のために自ら行動する、そんな地域こそが元気な地域といえるだろう。つまり、「人づくり」と「街づくり」の循環により「地域づくり」が行われる。
 
アートイベントの開催や文化施設の建設でまちが活性化するものではなく、その地域で暮らす人々が地域への愛着や誇りを胸に、地域のあるべき姿を真剣に語り合い行動することこそ重要であり、そのためには、人々が創造性を発揮できるような土壌を文化芸術でつくることが求められている。
 
人が元気で、気な人が地域を元気にし、完気な地域に元気な人々が集まってくるーーこのサイクルに文化芸術の持つ力が作用することが「文化芸術を通じた地域振興」、つまり文化芸術による地域づくりなのである。
 
もちろん、このような「文化芸術を通じた地域振興」に関する活動は、行政だけでなくその地域の運営に関わる多様な当事者(市民)がその担い手となっていることを忘れてはならない。
 
(引用終わり)
 
このように、文化芸術には多様で高い付加価値があることを理解するとともに、長きに亘り続く「市美展」を見るに、先にあった「土壌」が、ここ敦賀にはあると思う次第です。
 
「芸術は爆発だ」は、かの岡本太郎さんの名言ですが、今では「芸術は融合だ」といったところでしょうか。
 
人口減少、多様性、共生社会の現代において、人と人、気持ちと気持ちを結び、力に変える。
 
そんな文化芸術の分野がさらに発展するよう、引き続き応援、支援していく所存です。