2025年1月28日
Googleなど名だたるIT企業が原子力発電と直接契約 〜その意味とは?〜
1月26日までを提出期限としていた、現在策定中の次期『エネルギー基本計画』(原案)に対するパブリックコメント。
電気事業連合会(電事連)や全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)なども提出したとあるなか、24日には日本原子力産業協会(原産協会)も同じく付したことが原子力産業新聞(原産新聞)に掲載されていました。
なお、原産協会の意見としては、原子力産業の意思決定となる明確な指針を求め、主には以下のとおり。
(1)原子力の価値と必要性を明記し「原子力依存度低減」の記載を削除
(2)既設炉の早期再稼働、長期サイクル運転、運転中保全の拡大、出力向上など、既設炉の最大限活用に適切な支援を行うこと
(3)原子力発電の新規建設を前提に新増設・リプレースの必要な容量と時間軸を示し、同一敷地内に限られた建設制限を解除
(4)原子力発電所の追加安全対策や新規建設の投資回収の予見性を回復し、投資家が投資でき、事業者が資金を調達できる事業環境整備を早急に整備
(5)革新軽水炉にかかる規制整備の早期進展の必要性に鑑み、規制整備のスケジュールを示すこと
(6)原子力事業者が無過失・無限の賠償責任を集中して負うこととされている原子力損害賠償制度の見直しについて方向性を示すこと
いずれの項目も「原子力の最大限活用」を現実的に進めていくうえで必要なことであり、自身の考えと合致するもの。
こうした意見が反映され、より具体性のある計画となることを切に期待する次第です。
さて、日本がようやく原子力発電を将来に亘り活用していくとの意思を明確に示すなか、世界は原子力発電所の新増設や革新炉開発を急速に進めており、その状況は原産新聞の海外NEWSから実感するところ。
こちらはぜひ、ご覧いただいた方が早いので、以下のリンクから記事のタイトルだけでもご覧いただきたいのですが、欧米のみならず、中国、ロシア、アジア、豪州、アフリカに至る世界各国で、今後を見据えた「新規電源」を求め、原子力開発が展開されていることが分かります。
→原子力産業新聞『海外NEWS』はこちら
とりわけ、長い間、原子力の新設がなかったアメリカが猛烈な勢いで開発しており、特徴的なのは、名だたるIT企業が、必要とする莫大な電力を原子力発電で、しかも発電事業者への直接出資や契約により、独占的かつ安定的に供給されることを確実なものにしようとしていること。
誰もが知っているGoogle、Amazon、メタ社(Facebookなどを運用)だけでも、取り上げたタイトルは以下のとおり。
◉Googleと米ケイロス・パワー社が先進炉導入で提携(2024年10月17日)
◉Amazon SMRプロジェクトを支援(2024年10月18日)
◉米IT大手メタ社 原子力から電力調達へ(2024年12月5日)
【Amazonが出資するX-エナジー社製SMR「Xe-100」中央制御室の想像図(原産新聞より引用)】
こうしたニュースを見るに、既に1周も2周も遅れをとっている日本の原子力開発に危機感すら覚える訳ですが、次期エネルギー基本計画の背景にもあるよう、電力安定供給がままならないことは=生成AIなどのIT分野(半導体やデータセンター等)でも遅れをとるということ。
なお、ここでいう「電力安定供給」とは、超精密製品を生むうえで、単に電気を受電するのみならず、極めて「周波数変動の小さい」電源供給を求めていることを補足しておきます。
日本においては、熊本のTSMCに続き、現在、北海道でラピダスが工場建設を進めていますが、北海道電力泊原子力発電所の再稼働なくして成り立つのかと、電力安定供給に対し懸念を呼んでいるところ。
こうしたことからも、必要な電源容量と時間軸を示し、原子力開発を進めていくことが極めて重要と考える次第です。
最後に参考まで、原産新聞によると、アメリカに関しては、自国での開発のみならず、視点は月にまで。
『米国 WE社が月面マイクロ炉開発を継続へ』
米ウェスチングハウス(WE)社は1月7日、米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)から月面に原子炉を設置する「月面原子力発電(FSP)」プロジェクト向けのマイクロ炉の概念設計開発を継続する契約を獲得したことを明らかにしたとのこと。
【NASA 月面原子力発電(FSP)プロジェクトのイメージ図(原産新聞より引用)】
世界の「熾烈な電源(資源)獲得競争」はここまで来ているのかと、驚愕する次第です。