2025年4月25日
2026年度の電力供給力500万キロワット不足
4月18日に開催された新潟県議会において、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非を県民投票で決める条例案が否決されたことは既に報道のとおり。
「賛成、反対の二者択一では多様な意見を把握できない」「原子力は専門分野であり県民投票には適さない」などの理由で、最大会派の自民党が反対に回ったことから「否決」となったとあります。
この結果を受け、花角英世知事は県民に「信を問う」と繰り返すものの、23日の記者会見では、自身が再稼働の是非を判断するにあたり、県民の受け止めを確認する方法について、今、手元にあるわけではないとしたうえで、公聴会などを例示し、「できるだけ早く開催場所や方法、時期を示したい」と述べています。
なんとも悠長な対応に忸怩たる思いは募るばかりですが、まさか、任期満了に伴う来年6月の知事選まで引っ張ることを考えてはいないか。
電力需給ひっ迫の夏は目の前であり、時間軸と国家観をもった早期の判断を求める次第です。
さて、そうしたなか、電気新聞の4月24日の記事では、『2026年度、供給力500万キロワット不足/エネ庁、容量市場で追加入札へ』とのタイトルで、経済産業省・資源エネルギー庁が23日開いた有識者会合で、容量市場の2025年度追加オークション(実需給26年度)を全国で実施する方針を示した。
22年度メインオークション時点から目標調達量が増える一方、市場退出する電源が一定数生じたことなどで、供給力が500万キロワット程度不足した。追加オークションの開催は2年連続。6月上旬に入札を実施する。
とありました。
聞き慣れない「容量市場」の言葉に何のことか分からないかと思いますが、まず、ここで言う「容量」というのは「必要な時に発電することができる能力(kW)」のことを意味しています。
例えば火力発電のような、電力が必要となった時すぐに発電できる設備を持っている発電事業者は、その能力があるといえるでしょう。
こうした発電所の設備を維持するためには、人件費や修繕費など、さまざまなコストがかかることや、新設もしくはリプレース(建替)する場合には長い期間が必要となりますが、電力の市場価格が低下する傾向にあると、卸電力取引市場などでの電力(kWh)の取引や相対契約では、新設やリプレースにかかったコストを将来的に回収できるという予測が立てづらくなるため、新たな投資が進まなくなってしまいます(いわゆる投資回収の予見性)。
出力を調整できる発電所の設備が維持できなければ、電力需要に見合った供給ができなくなるおそれが生じ、その結果、再エネの出力が下がったときや需給がひっ迫したときに電力が不足したり、需要に対して供給力が不足することで電気料金の上昇につながったり、最悪の場合、停電するおそれがあります。
こうした課題を解決し、電力供給の長期的な安定をはかるために、導入が検討されてきたのが「容量メカニズム」。
「容量メカニズム」とは、そのような「容量」に応じて対価が支払われるしくみで、日本では、海外の制度を参考に、2020年に「容量市場」が導入されました。
電力に関する市場としては、「電力量(kWh)」を取引する「卸電力取引市場」がありますが、容量市場で取引されるのは、「将来にわたって見込める供給力(kW)」です。
つまり、容量市場とは、発電事業者が持っている「容量」に対して、小売電気事業者が、市場メカニズムで決まった額を支払うものであり、具体的には、「4年後の電力の供給力」を取引きすることとなります。
さらに具体的に言えば、まず、「電力広域的運営推進機関(広域機関)」が、4年後に使われる見込みの電気の最大量(最大需要)を試算のうえ、その需要を満たすために必要な「4年後の電力の供給力」を算定。
その際、「気象や災害によるリスク」も含めながら「調達すべき電力」の目標容量を算定したうえで、次に、その調達量をまかなうために、「4年後に供給が可能な状態にできる電源」を募集。

【容量市場のしくみ(資源エネルギー庁HP「くわしく知りたい!4年後の未来の電力を取引する『容量市場』より引用)
これはオークション方式でおこなわれ、価格が安い順に落札されるというのが、一連の「容量市場」の説明となります。
こうしたしくみの中にあって、今回、資源エネ庁が示したのは、来年度の供給力の話。
電力需要に見合った供給ができなくなった際のリスク、しかも不足分は「500万キロワット」。
なお、再稼働を今かと待つ、柏崎刈羽原子力発電所7号機の電気出力は135.6万キロワット。
すぐに使える、大きな供給力を使わずして、電力の供給力不足や需給ひっ迫への対応を議論している日本。
先に「国家観」と申し上げましたが、こうした状況も踏まえ判断していくのが政治家の役割であり責任と、なお強く思う次第です。






