防災の根幹は「正常化の偏見」を取り除くこと

ブログ 敦賀市議会 防犯/防災

Facebookでフォローしている「人道の港敦賀ムゼウム」のページを拝見し、どこか嬉しい気持ちに。
 
投稿には、敦賀市役所の新規採用職員研修をムゼウムで行ったとあり、館内で真剣に展示を見学された後の感想として、「展示で当時の敦賀の様子に浸ることができた。映像で孤児や難民一人一人のストーリーを知ることで興味が増して、何度来ても知識が深まっておもしろい!」、「市内外の学生にも敦賀の歴史について知ってもらえているのがうれしく感じた。ムゼウムから発信していくことで、敦賀のイメージが変わると良いと思います。」等の言葉があったそう。
 
どなたかから聞いたか忘れましたが、新人行政職員の研修では、まずまちの歴史や文化を学び知ることで、自分の仕事は誇りあることであり、そこに意義や価値を感じてもらうようにしているとの話しを聞いたことがあります。
 
ムゼウムで感じたことが、この後も新採用職員の皆さんの仕事への情熱につながることを期待したいと思います。
 
当該Facebookページは以下にリンクしておきますので、宜しければ写真とともにご覧ください。
 →→→「人道の港敦賀ムゼウム」facebookページはこちら
 
さて、研修と言えば、昨日午前中は、我々議員もリモートにて受講。
 
毎年1回開催している敦賀市議会議員研修として、東京都板橋区の行政職員を経て、現在は一般社団法人「福祉防災コミュニティ協会」代表理事や「TEAM防災ジャパン」アドバイザーをお務めになられている鍵屋一氏を講師にお迎え(実際にはスクリーン越しですが)し、「災害時の議会の役割」と題し、防災時の対応について講義を拝聴しました。
 
長きに亘り板橋区の行政職員として福祉や危機管理関係、最後は議会事務長などもご経験され退職されたとのことで、まさに叩き上げの豊富な実務経験に加え、何故か故郷(秋田県男鹿市)の秋田なまりが抜けていないという親しみやすい語り口もあり、時間を忘れて話しに聞き入ってしまいました。
 

 
冒頭、必ずアイスブレイクを行うということで、左手はグー、右手はパーを交互にチェンジしたり、ひとりジャンケンをしましたが、単に場を和ませることではなく、仰りたかったことは「初めてのことは失敗する」、「だから訓練が必要」なんだということ。
 
併せて、「なので職員をあまり責めないで」とも付け加えられました。
 
導入部分から身をもって「なるほど」となった訳ですが、その後も改めて気付かされることが大変多く、特に東日本大震災の揺れや津波の映像が流れた場面では、当時現地ボランティアに行った際に見た惨状を思い返しながら拝聴した次第。
 
拝聴した内容については、超概略となりますが以下にポイントだけ記載します。
 
◉コロナで避難所の少人数や分散避難が叫ばれているが、感染症(風邪やインフルなど)やプライバシーなどの観点を踏まえれば、コロナでなくとも本来考えておかねばならなかったこと。
◉災害の大きさは、ハザード×人口(暴露料)×社会の脆弱性により決まる。
◉防災の正四面体は、自助、共助、公助と「近助」。ご近所さんや地域のつながりが大事。
◉各市町の防災計画では「任務放棄」の基準を決めておくことが重要。これを決めておかないと死者が増えることは、地元の消防団員などが多く亡くなった東日本大震災の教訓。
◉災害時の議会、議員の役割やルールも決めておくべき。
◉行政も議会も計画に魂を込めることが大事。魂なき計画は、ただの紙である(本番で機能しないとの意)。
◉役所は、危機の際は全庁横断的に対応する必要があるため、議会がその重要性を訴え続ける必要がある。
 →防災関係を所管する常任委員会以外の委員会で各部署の防災意識を高めること。
◉仙台市の防災枠組みにもある「誰ひとり取り残さない」との言葉は、一番弱い人に目を当てて非難できるようにすること。知らない人同士でそれは出来ないので、人の人とのつながり、福祉と防災(危機管理)をつなぐことが大事。
 
など、まだまだ書き足りない訳ですが、ポイントはこの辺とさせていただきます。
 
この日鍵屋先生が「災害対策の根底にあるもの」として、繰り返し強調して仰られたことは「正常化の偏見」。
 
「正常化の偏見」とは、一人ひとりの意識にある「自分は大丈夫」の心。
 
「正常バイアス」などとも言いますが、この「根拠なき楽観」は人間の本能としてあるものでありますが、「災害ではアダ」になる。
 
ジャングルに住む動物とは違い、「人間は危機管理に弱い動物」であることを強く意識したうえで「正常化の偏見を取り除くこと」が最も大事なことであり、訓練は「防災モードにスイッチを入れる」こととのこと。
 
議会に対しては、行政に物申す意味でも「議会が正常化の偏見を破ろう!」との呼び掛けがありました。
 
リモートでスクリーン越しであることを忘れるほどの、どこか人懐っこい先生の話しに引き込まれつつ、災害対策の根幹を学ぶ大変貴重な2時間となりました。
 
敦賀は災害の少ないまちとは言え、そう思うこと自体が「正常化の偏見」ですね。
 
地震、台風、水害、雪害と自然災害はいつやってくるか分からないとの意識を改めて持ちつつ、昨日学んだことを今後の議員活動、さらにはまちの防災に生かしていきます。