議会運営委員会視察② 〜茨城県取手市議会〜

ブログ 敦賀市議会

高気圧に覆われる日本列島。
 
太平洋側を中心に気温が上昇した昨日、静岡市駿河区では午後1時台に39.3度まで上がり、この地点での観測史上最高となったほか、全国914の観測点のうち、最高気温35度以上の猛暑日は63地点で今年最多となったとのこと。
 
本日は、福井県にも既に、環境省・気象庁から「熱中症警戒アラート」が発表されていますので、こまめな水分補給や室内でもエアコンをかけるなど、十分注意してお過ごしください。
 
さて、私の方は議会運営委員会の行政視察2日目。
 
昨日は、「議会改革度調査」2020、2021は全国1位、2022は2位と、3年連続で全国トップスリーにランクインしている茨城県取手市議会にお伺いしました。
 
まさに「トップランナー」と言える取手市議会さんからは、大変お忙しいなか、澤部信議長、議会運営委員長からは赤羽直一委員長、議会事務局の皆さんに対応いただきました。
 

【ご多忙のなか対応いただいた澤部議長(左)と赤羽委員長】
 
取手市は、平成17年に旧取手市と旧藤代町が合併し、総人口113,000人余を有する茨城県南部の中核的な都市となりましたが、冒頭、意外や議会改革のきっかけはこの合併時、藤代側から見た取手市議会が硬直化していたことにあり、改革が必要であったとの説明がありました。
 
これは、最後に述べることにもつながる訳ですが、その後の説明においては、あらゆる角度で取り組まれた事項を実経験も織り交ぜながらご紹介いただき、大変勉強になった次第です。
 
以下に、ご教授いただいた主な内容をご紹介いたします。
 
1.オンライン委員会等の取り組み
・タブレット導入は令和2年8月とそんなに早い訳ではない。
・従前の採決システムの動作不安定化(押しボタン方式)の際、リプレースに800万円要するため、タブレット(アプリ)を用いた採決方式を導入したのがきっかけ。
・タブレットを導入した令和2年9月定例会こそペーパーとタブレット(データ)を併用したが、次の12月定例会からはペーパレス。
・現在、議会はフルペーパレスとなっている(執行機関側は議会を追うようにペーパーレスが進んでいる)。
・タブレット導入とコロナ感染拡大の偶然の一致があり、オンライン化が加速。
・令和2年4月8日 取手市議会災害対策会議(zoom)で開催したのが、オンラインで対応した初めてのこと。
・現在では、本会議以外での事項はすべてオンラインで対応可となっている。
・なお、本会議での対応については令和5年6月に制度整備済み(つくば市議会では質問実績あり)。
・オンライン委員会を行う場合、音の話が一番面倒なことになる(複数端末を置くと必ずハウリングするので)。
・普段からのタブレット使用におけるサポート役は「周囲の人全員」。
・オンライン委員会と傍聴に関しては、リアル会場での傍聴のみ可。フルオンライン時の対応は課題。
・取手市議会では、議員から開会の1時間前までにオンラインの申し出があれば対応することとしている。
・YouTubeの設定や配信機材のセッティング、録画配信時の編集など、すべて議会事務局職員が対応している(操作を覚えてしまえば、さほど負荷ではないとのこと)。
・タブレット導入時は議員間で差があったが、1年が経過して以降はほぼ差がなくなっており、今ではタブレットがない状況の方が不安になるほど。
 
2.取手市議会での官民学連携
・デモテック戦略協定(令和2年7月締結)
 
3.市議会の住民参画とオンライン
①オンライン併用型の市民との意見交換会(平成30年から方式変更)
 ・従来は議会報告会だったが、車座での対話を重視した意見交換会に変更。
 ・以前は1回/年だったが、現在は2回実施。全会場一斉開催。
 ・市内4会場(54名)とオンライン会(6名)が参加(市内要件は設けていない)。
 ・議員と職員にて分散対応しており、挙げられた意見は次回にフィードバックしている(理事者にも確認したうえで)。
 ・オンライン併用により高評価(79%)を得ている。
 
②中学生との共同事業(平成28年度から実施)
 ・各学校、手挙げ方式で実施しており、学校に負荷をかけない、学校のやりやすい方法でというのが基本的考え。
 ・どういうことを生徒に体験させたいかは、学校ごとに違いがある。
 ・「取手市をどう良くするか」をテーマに、前後半の2部制、オンライン(YouTube)を併用したハイブリッド開催。
 ・会場は教室、議場(クラスの代表者が出席。代表者リアル議会に近づけている)+教室でオンライン視聴。
 ・中学生から提出された議案は、実際常任委員会にて協議し、執行機関に諮っている。
 ・テーマを考える前の「取手市の課題」を教えてもらえないかとのニーズあり。学校と協議している。
 ・参加した生徒の議員に対するイメージは、授業前後で180度反対になっている(ネガティブからポジティブへ)。
 ・学校からも好評をいただいている。
 
4.AI音声認識技術を活用した議会の仕組みづくり
 ・AI音声認識リアルタイム字幕配信(ほぼ誤植がないレベル)。
 ・会議の見える化(視覚化システム)。
 ・取手市議会の会議録作成は、外注せず自前作成(音声認識システム(AmiVoice)による会議録作成)。
 ・会議の閉会と同時に議事録がほぼ出来ているため、それを委員長に渡し、委員長が審査報告(読み上げ文)を作成している。
 ・音声から文字に変換された内容を、音声を確認しながら、誤りがないか確認する「リライト作業」を行なっている(誤りがあれば修正)。
 ・議員の発言修正や執行部側の答弁修正などもタイムリーにできるのもメリットのひとつ。
 

【音声認識システムによる会議との同時議事録作成のイメージ】
 
以上、主にはこのような事項をご教授いただき、効率化を求めるのみならず、災害時などのリスク対応や議会力の向上のため、常に「改善する」との意識のもと進められていることを、これでもかというほど感じた次第です。
 
なお、先にありました、合併時にあった取手市議会の硬直化を指摘したのは、実は赤羽委員長。
 
旧藤代側の議員をされていた赤羽委員長は、議長に手を挙げ、以降、自ら音頭を執って改革に取り組まれたとのこと。
 
その赤羽委員長からは、次のような言葉があり、こちらも大変重みのあるものでしたので、以下書き留めます。
 
・良かれと思うことはやってみようという気質が取手市議会にはある。やってみて良かったら進めば良いし、やってダメなら戻れば良い。
議会改革度ランキングを上げるためという認識は全くない。目の前にある課題の解決を続けていたら、いつの間にか1位になっていたというのが実感(結果としての改善)。
・議員と議会事務局がスクラムを組んで取り組めば、必ず良い議会になる。
取手市議会の事務局は日本一だと思っている。
 
この言葉を聞き、DX(デジタルトランスフォーメーション)と同じく、「議会改革」を目的化してしまっては本末転倒であること、議会と理事者の関係同様、議会事務局ともリスペクトし合うことが、より「議会力」を高めることになると確信した次第です。
 

【一昨日の飯綱町議会でもあった「チーム議会」が取手市議会でも。いかに「ひとつに」なれるかが最大のポイントと認識。】
 
各種方策の素晴らしさのみならず、言わば「魂」と「信念」を込めて取組みを進める取手市議会さんに敬意を表するとともに、昨日対応いただいたことに感謝申し上げる次第です。
 
充実した視察は、はや今日が最終日。
 
本日は愛知県豊橋市議会にお伺いし、敦賀市議会でも検討を進める「委員会のオンライン配信」を中心に視察してまいります。
 

【対応いただいた取手市議会の皆様、誠にありがとうございました。】