誰ひとり取り残さない「校内フリースクールF組」

ブログ 敦賀市議会

文教厚生常任委員会の行政視察(最終日)は、徳川家康の生誕地でもある愛知県岡崎市へ。
 
同市が進めている「校内フリースクールF組」について、岡崎市教育委員会 学校指導課、教育相談センター様より、取組み内容についてご教授いただきました。
 
なお、視察の報告もこれで3日連続となっており、得たことをほぼ全てレポートしていることに、やや「うんざり」感もあろうかと思いますが、委員会の行政視察は「議会費」を使用しています。
 
つまりは「税金」を使って行かせてもらっていることを踏まえれば、得た知見を市民の皆さんと共有することは議員の責務。
 
そうした思いのもと、本日もご報告いたしますので、何卒、ご容赦とご理解のほどお願いいたします。
 
まず「校内フリースクールF組」とは、岡崎市内の中学校に設置されていた「適応指導教室」を発展的解消させ、2020年度に市内3校で校内フリースクール「F組」として始め、2023年度には20校全てに設置が完了したもの。
 
名称の「F組」は、Free(自由)、Fit(みんなに合う)、Fun(楽しい)、Future(未来に向かって)の頭文字を取ったもので、学校生活に困り感があったり、長期欠席傾向のある子の「個別最適な学びの場」として運営されています。
 
その上で、岡崎市教育委員会のご担当様からありましたご説明、質疑のやり取りで得たことを以下に記載いたします。
 

【岡崎市役所での視察の様子】
 
<背景・F組設置の経過など>
◉全国の小中学校における不登校数は過去最多の34万人(令和5年度)。
◉愛知県は全国平均を上回る小学校2.37%、中学校7.05%。小学校は増加傾向にある。
◉F組は岡崎市が2020年から始めた新たな不登校対策。不登校になった一部の子ども達が民間のフリースクールに通い始めたことがきっかけ。
◉元々、この取組みのモデルになったのは横浜市。その際の成功、失敗談を直接聞く機会があり、教育長以下、指導主事が話を聞く中で「衝撃を受けた」ことがきっかけとなり、その後機運が高まっていった。
◉さらに、そもそも「学校に魅力を感じていない」子ども達が増えていることを当時の教育長が危惧し、「魅力ある学校づくり」を目指して取組み始めたことも要因としてある。
◉現在では、小中合わせて23校に配置(市内全中学校に設置完了)。市内約350名の生徒が活用。割合で言うと中学校で3%程度。
 
<「F組」の理念>
◉学校に行けない子、休みがちな子も「心のエネルギー」が溜まってくると、自然と通常のクラスに戻る子が増える。自己肯定感が高まると自ずとそうした方向になると認識している。
◉教室復帰ではなく、社会的自立を目指す(現に「F組」に通った生徒はほぼ100%、高校あるいは専門学校などに進学しているとのこと)。
◉フリースクールの機能は、未然防止(全ての児童生徒が対象)、初期対応(兆候のある児童生徒が対象)、自立支援(不登校の状態にある児童生徒が対象)。
◉支援のあり方を「見える化」したのが「F組」。
◉長期欠席者減少のカギは「F組の理念の浸透」であり、適応するのは「子ども」ではなく「学校」である。
◉支援のあり方を先生達がしっかり分かって、子ども達の「心理的安全性を担保」し、全学級に浸透されることが目的。
◉通常の学級から、新たな不登校を生まないことが重要。
 
<「F組」の運営状況・特徴>
◉子ども達が「多様な学び」を欲しており、学校側が「多様な学び」に対応していくとの理念を持っているので、必ず支援員などがついて活動している(子ども達だけで活動することはない)。
◉保護者との連携は、校長先生が「F組」のことをことあるごとに話すことで、理解の醸成につなげている。「F組」に入る際は、保護者と入念な面談をしている。
◉とにかく担任を置く(力のある先生に)。支援員については、会計年度人用職員(5時間/日)を採用(教員免許の条件はなし)して全クラスに配置。
◉その子にあった学習、学びを実施。いつ来ても、いつ帰っても良い。
◉ハートフルスクール(ハートピア岡崎:2箇所)も設置しており、学校のF組と併用している子もいる。選択肢があることで支援につながればと考えている。
◉ 自分でやりたいことを支援するのが「F組」。個々の勉強のアドバイスや悩みごと相談に対応している。まず「自分を取り戻すこと」を意識している。
◉先生もそういう姿を見て、ともに成長していきたいとの感想もあり。
◉活動から入る(慣れる)子ども達にとって、学校は体育館・音楽室・家庭科室などもあり、他にはない設備が豊富に揃っている。
◉これまでの教室にない空気感を創出(一人が良い子のために個室もあり)、カードゲームなどを使ってのコミュニケーション時間、他者との交流の機会(保育園児との関わり)の設定。
◉F組が「あってよかった」、家とはまた別の「居場所」ができたとの生徒の声あり。
◉子ども達が「真に学びたい」という場所の選択肢に「学校がなる」との意識で取組んでいる。
 
<これからの取組み>
◉今年度から、夕方・夜間学級「S組」(Starのように輝くとの意)を5校で開設。ある学校では、登校8人のうち、2人が「F組」への登校につながった。
 
<その他:質疑応答含む>
◉通常学級の生徒が「F組は自由で楽だから、私も行きたい」ということはないのかとの問いをよく受けるが、岡崎市では「無い」。なぜなら、「F組」にいる子の状況を理解しているから。
◉「F組」を設置することが、不登校の子ども達が減ると直結するかの報道がされることもあるが、決してそう考えていない。市では、国が対応する以前から、独自で学校教育支援員を拡大してきているが、これも先生の通常業務の負担を減らし、先生達が問題に対応できるようにすることも「不登校対策」と考えている。
◉学校に来てくれれば、生徒とのコミュニケーションを図れるばかりでなく、家庭訪問の時間が減るなど、物理的なメリットもある。
◉「F組」を担任する先生の授業分は、学校長の采配により校内で分担している。
◉年に2回「担任会」と「支援員さんだけ」を集めて、各校の取組み紹介や課題の共有をしている。
 
<さいごに>
◉多様性を受け入れる、認める学校に変わることで、市内全小中学校に広めていきたい。そして、そのことが当たり前になり、すべての子ども達が明るく、光が当たるような社会につなげていきたい。
 
以上が、お伺いした内容となります。
 
一昨日の「川崎市子ども夢パーク」では、民間のフリースクール(不登校対策)を学びましたが、公の学校も「目指しているのは、教室復帰ではなく、社会的自立」、「心のエネルギー」や「自己肯定感」のキーワードが合致しており、改めて、こうした視点が重要で、取組みの鍵を握るものと認識しました。
 
そして、「さいご」にあった言葉がすべてを物語っていました。
 
単に「不登校対策」で括るのではなく、岡崎市がチャレンジしているのは、「魅力ある学校」とは何かを自ら追求し、個々の多様性を認め、尊重し合う学校づくりを通じ、そうした社会を目指す。
 
先進的に取組むその姿勢に最大限の敬意を表するとともに、こうして学んだことを私たちがどう生かしていくか。
 
敦賀市の実情を把握した上で、しっかり考えていく所存です。