福島第一原子力発電所2号機で「デブリ試験採取」開始

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9月3日に開始された、東北電力女川原子力発電所2号機の燃料装荷が9月9日に完了。
 
同社はホームページで、「今後は、2024年11月頃を想定している再稼働に向けて、『原子炉起動』に係る各種試験 ・検査、作業などを進めていくこととしております。引き続き、安全確保を最優先に一つひとつのプロセスにしっかりと対応し、確実かつ丁寧に進めてまいります。」とコメントしています。
 
以前に記載しました通り、東日本の原子力発電所、沸騰水型(BWR)では初となる再稼働だけに、注目の高まるところでありますが、いよいよ近づく再稼働に向けた取組みを、敦賀の地から応援する所存です。
 
また、原子力の話題では、東京電力福島第1原子力発電所事故で溶け落ちた燃料(デブリ)の試験採取が10日、2号機で始まりました。
 
準備段階で機器の接続ミスが発覚し、開始直前に延期を決定したデブリ採取ですが、9月5日には、「2号機燃料デブリ試験的取り出し作業中断に関する原因と対策」に関する会見にて、福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントなどから説明があった上で再開したもの。
 
廃炉工程で最難関と位置付けられるデブリ採取。
 
堆積物の除去が完了した貫通孔から「テレスコ式試験的取り出し装置(※1)」を進入させるため、事前に工場で取り出し装置のモックアップによる機能検証等を行ってきた上で、昨日は、ガイドパイプ(内筒)に押し込みパイプを接続し、燃料デブリ試験的取り出し作業に着手(取り出し装置の先端治具が隔離弁を通過)。
 
今後は、先端治具をペデスタル(※2)底部へ吊り下ろし、燃料デブリ(3g以下)を採取するとのこと。
 
※1 テレスコ式試験的取り出し装置
  原子炉格納容器底部にある燃料デブリを採取するための、釣り竿(伸縮型)の装置
※2 ペデスタル
  原子炉圧力容器を下部から支える、配筋をコンクリートで覆った筒状の構造物
 

【「テレスコ式試験的取り出し装置」の説明図(東京電力ホールディングスHPより引用)】
 
なお、デブリは極めて強い放射線を出し、平成31年の同2号機内部調査では、毎時43シーベルトという人が近づけば数分間で死に至る放射線量が確認されていることから、採取では作業員の被曝(ひばく)を防ぐため、重装備に加え、1日当たりの作業時間を約2時間に設定。
 
厳しい環境下で限られた時間という制約の多い作業だけに、安全に作業を進めるためには事前の計画と準備がより重要となります。
 
このデブリ採取。
 
世界で唯一、1979年に起きた米国のスリーマイル原子力発電所の例があります。
 
この事故では、メルトダウンした1基の原子炉燃料が溶け落ち、約130トンのデブリが発生。
 
事故から6年後に、米政府と電力会社が取り出しに着手し、岩石を砕くボーリング機がデブリの硬い層で破損するなど、作業は想定よりも難航したものの、90年には総量の99%を取り出しました。
 
極めて高度で、長い年月を掛けての作業になることは言うまでもありませんが、このように人類には「不可能を可能」にする叡智と技術があります。
 
令和33(2051)年までの廃炉の実現に向けて、安全を大前提に試行錯誤を重ねながら、着実に進めていただくことをお願いし、女川同様、こちらも応援する次第です。