眠ったままの設備容量「2,148万キロワット」

エネルギー ブログ

季節は本来、梅雨のはずですが、連日テレビでは「猛暑」のニュースが流れるところ。
 
真夏を思わせる暑さとなっていますが、これに伴い増加するのが「電力需要」。
 
公平性と正確性を期すため、最近の電気新聞の記事を引用すると、
 
◉電力広域的運営推進機関(広域機関)は5日、関西エリアで夕方の時間帯に需給が逼迫したことに伴い、東京電力パワーグリッド(PG)など5社に電力融通を指示した。同日は厳しい暑さで冷房の利用が広がり、想定より需要が増加。調整用電源のトラブルも影響したようだ。6月の東北エリアに続き、融通を受けるケースが相次いでいる。
 
◉午前中から厳しい暑さに見舞われ、電力融通を受けた東京エリアで8日、高気温に伴う電力需要の増加で需給が逼迫した。広域予備率は同日午前に3%台にまで低下。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は午前9時~正午に20万キロワット供給するよう、中部電力パワーグリッド(PG)に電力融通を指示した。複数の火力電源が計画外停止しており、供給力が万全でなかったことも影響したようだ
 
このように、東西ともに電力融通により需給逼迫を乗り越えている、いわば「綱渡り」状態とも言える訳ですが、火力発電所も緊急稼働や増出力運転などにより、懸命の対応をされていることも認識しておかなければなりません。
 

【7月9日の各ブロック電気使用状況(OCCTO需給関連情報より)】
 
そうした中、重要を極めるのが「次期エネルギー基本計画」ですが、経済産業省・資源エネルギー庁は8日、計画策定に向けた「※総合資源エネルギー調査会 第58回基本政策分科会」で、脱炭素電源の確保について意見を聴取。
 
※総合資源エネルギー調査会:経産相の諮問機関。同分科会長は隅修三・東京海上日動火災保険相談役。
 
原子力は経年化により設備容量が減少していくため、新増設に早急に対応すべきとする意見が相次ぐとともに、再生可能エネルギーの導入量も足元で減少傾向にあるため、政策の強化が必要とし、国の積極的な関与により電源開発の予見性を高める施策が不可欠という声が占めた
 
事務局は、データセンターや半導体工場が経済成長の基盤となる中、電力需要の増大に対し脱炭素電源が不足すれば、経済成長に悪影響を及ぼす問題意識を提示したうえで、再エネや原子力、系統増強や蓄電池の導入促進に向けた支援策について聴取したとあります。
 
こうした議論を見る限り、現実的なエネルギー政策構築に向けた真っ当な議論がされているものと認識するところ。
 
なお、冒頭に述べた、いま現在の恒常的な需給逼迫を改善するため、鍵を握るのは既設原子力発電所の早期再稼働であることは言うまでもありませんが、同時に経済効率性を含めた長期運転も重要であり、昨日は、原子力規制委員会から40年超運転の認可を受けた関西電力高浜原子力発電所3、4号機(PWR:出力87万キロワット)について、福井県の杉本達治知事は、「(2基の)運転延長に理解を示す」と容認する考えを示したところ。
 
40年超運転に合わせて関電が実施する蒸気発生器(SG)の取り換え計画についても、安全性が向上するとして了承され、賢明な判断がされた訳ですが、忸怩たる思いは、やはり眠ったままの審査中プラント。
 
以下のスライドは、8日の第58回基本政策分科会で資源エネルギー庁が提出した資料の抜粋ですが、現在再稼働していない原子力発電所の設備容量は「2,148万キロワット」。
 

【資源エネルギー庁提出資料による「(原子力発電所)既設炉の最大限活用」】
 
「たられば」を言えば、柏崎刈羽の1基を速やかに再稼働すれば、東京電力管内の需給状況は相当改善するとともに、企業や国民も猛暑のなかでの「節電」を強いられなくて済むことになります。
 
この「宝の持ち腐れ」とも言える、原子力の「2,148万キロワット」ものポテンシャルを使わずして「需給逼迫」だとする日本の姿を、さぞかし他国はあざ笑っているかと思う訳ですが、この中には、地盤審査の佳境を迎えつつある我が敦賀発電所2号機も含まれています。
 
いま現在の需給の状況(供給力不足)、さらには2030年に向けて電力需要が大幅に増加することが明らかなことを踏まえれば、敦賀2号の「116万キロワット(定格出力)」も極めて重要な電源であり、「活動性を否定できない」の一言に屈する訳にはいきません。
 
繰り返しになりますが、敦賀2号をはじめ、審査中のプラントすべてを早期に稼働させることが、日本が現在置かれた状況を改善する唯一の手段であり、原子力規制委員会が「経済合理性は知ったことではない」と言うのであれば、安全を第一義にそれを追求するのは政治の責任であると考える次第。
 
何故なら、政治には国民の生命と財産、そして豊かな暮らしを守る使命と責任があるのですから。