2024年8月29日
敦賀2号審査に係る審査書案「了承」を受けて
昨朝は、嵐の前の静けさといった穏やかな天気の中、名子での辻立ち。
非常に強い勢力の台風10号は九州南部に上陸した後、九州から本州を舐めるように進む予報となっています。
辻立ちの際は笑顔でしたが、襲来する台風に向けて気は引き締めて。
繰り返しになりますが、全国各地で経験している「まさか」の災害に備えていきましょう。
【辻立ちポイントから見た敦賀湾。空と吹く風は秋めいていました。】
さて、大々的に報道されているという意味では、こちらも嵐と言えば良いのでしょうか。
原子力規制委員会は28日の定例会合で、日本原子力発電敦賀発電所2号機(以下、敦賀2号)の新規制基準適合に関する原子炉設置変更許可申請について事実上の不合格となる審査書案を了承しました。
不許可処分となるため経済産業相や原子力委員会への意見聴取は不要で、本日29日から1カ月間、任意の審査書案に対する科学的・技術的意見の募集(以下、パブリックコメント)を実施することも決めました。
パブリックコメントを踏まえ、10月以降に正式に結果(おそらく不許可)が示される見込みとしています。
私としては台風と同じく、この進路(方向性)は予想されていただけに、審査の結果取りまとめ案(審査書案)が報告された、昨日の第27回原子力規制委員会の模様(YouTube)も淡々と視聴していた次第です。
以下に、委員会にて提示、説明された、文章ベースの「資料1 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査の結果の案の取りまとめ(1/2)」と図等を用いた概要版「同(2/2)」をリンクいたしますが、資料(2/2)における、論点となったK断層の「①活動性」と「②連続性」それぞれ、それらを踏まえた「③審査まとめ」の部分のみ抜粋しますのでご覧ください。
【①K断層の「活動性」まとめ】
【②K断層の「連続性」まとめ】
【①②を踏まえた③K断層の審査「まとめ」】
※上記、資料1(1/2)及び(2/2)の原本は、以下リンクよりご覧ください(下にスクロールするとあります)
→「第27回 原子力規制委員会 配布資料」はこちらから
この3枚のスライドをご覧になってお分かりいただけるよう、「評価結果の信頼性が乏しい」、「評価が安全側にされていない」などとした上で、「(活断層であることを)否定できない」とし判断がされています。
これが、規制側が言う「十分な時間を掛けて」、「科学的・技術的に行われた」審査の結果であり、やり方であることを、次に立証していくために今一度深く胸に刻むところです。
一方、規制庁からの審査書案説明の後、意見を求められた委員からは、「専門的なことに踏み込んだ判断を私ができる訳ではないんですけれども、元々この分野の判断がシロクロつけることが簡単にできる分野ではないと認識しております。だけれども、我々の立場として、かなりの確からしらをもって、活動性、連続性を否定できない限り許可はできないという立場に立って結論を出していただいたと。そういう認識でありまして、そのことについて私は了承しています。」とありました。
現在のわが国がおかれたエネルギー事情を考えれば、既設原子力発電所1基が稼働するか否かは、国益を左右する重大なことであるのに対し、堂々と「専門的なことに踏み込んだ判断を私ができる訳ではない」というような委員を、発言を否定しない他の委員の皆様はどう思っていらっしゃるのか。
いずれにしても、このような発言をされる委員に「判断」されるのが、今の日本の原子力規制であるとと、またまた愕然とした次第です。
なお、発言した委員は、敦賀2号の審査に関し、「科学的技術的な限界」、「(再補正することに)勝算はあるのか」、そして今回と3度、耳を疑う発言をされていることを記録として留めておきたいと思います。
これらを踏まえ、昨日は福井新聞記者からの電話取材に答え、今朝の朝刊では次のように掲載されています。
電力総連の組織内議員の山本武志敦賀市議は「敦賀2号機は国全体のエネルギー安全保障の観点から必要不可欠。敦賀市の人口や財政、地域経済にも大きな影響を及ぼす」と主張。敦賀原発敷地内の断層について、「過去に国内外の※地震学、地震工学者らで構成する国際チームが明確に『活断層ではない』と評価している。今後の追加調査で活断層でないことが科学的、技術的に立証されることを期待したい」と述べた。
※取材で答えたのは「地質学」ですが。
ここで、過去に「活断層でない」と評価した国際(レビュー)チームとは、以前にこのブログでも紹介した、英国シェフィールド大学のニール・チャップマン教授を始め、国内外の地質学、地震工学、リスクアセスメント、原子力を専門とし、政府機関、原子力産業、原子力規制機関及びIAEAのような国際機関とともに幅広く活動している科学者から成り、2013年3月と5月には敦賀発電所も訪れ評価しています。
こちらも再掲となりますが、このチームの評価では、結果を以下のようにまとめています。
【国際レビューチームが提出した評価結果概要(抜粋)】
詳しくは、以下のリンクより、過去ブログをご覧ください。
→2024年7月31日ブログ「本日の原子力規制委員会にて『敦賀発電所の原子炉設置変更許可申請書』の今後の対応を協議」はこちら
専門的な判断ができないと仰る方が結論づけた「可能性を否定できない」と国内外一級の有識者が評価した「明確に活断層ではない」。
シロクロつけることが簡単にできる分野ではないと言っていては、永遠に「可能性」の世界のままであり、今後の追加調査ではっきり「シロクロ」を、もしくは「かなりの確からしさ」が導かれるものと、信じ、期待して止みません。