2024年8月1日
敦賀2号に関わる今後の対応は「日本原電社長との意見交換」を踏まえ判断
これも北陸新幹線の開業効果なのでしょうか?
今年度、他市町の議会の方々が敦賀市を視察に訪れる回数が増えており、既に昨年と同回数に達しているとのこと。
いわゆる「行政視察」と呼ばれるもので、先進事例を学び、自分のまちや議会活動に活かすことが目的な訳ですが、昨日午前は、愛媛県四国中央市議会 議会運営委員会の皆さんがお越しになり、副議長である私と議会運営委員会の大塚佳弘副委員長とで対応いたしました。
その名の通り、愛媛の東端にある四国中央市は、徳島、香川、高知の3県と接する四国のド真ん中にあり、市町村合併を経て、今年市政誕生20周年を迎えたことに対し、歓迎の挨拶の中で、私からもお祝い申し上げるとともに、視察先に敦賀を選択いただいたことに感謝の念をお伝えしたところ。
視察の目的は、主に「議会報告会について」ということで、大塚副委員長から敦賀市議会の取組みをご説明いただいた後、質疑の場では、さらに具体的な内容や考えなどをお伝えした次第。
先方からは、周知や資料作成など、議員自らが対応していることや政策形成サイクルを回していることへの評価のお言葉をいただきましたが、お話ししたことが少しでも四国中央市議会様の取組みにお役に立てたなら幸いです。
さて、視察対応とやや重なる時間帯で行われていたのは、敦賀発電所2号機に係る原子力規制委員会。
議題2として挙げられた「日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査会合の審査結果及び今後の対応」について議論された様子を、YouTubeにて追っ掛け確認しました。
まずは規制庁の審査チームより、7月26日に行われたK断層の「連続性」の議論を含め、「活動性」と併せた審査の結果が報告されましたが、「非常に判断が難しい」、「安全な判断がされていない」、「(事業者が)説明しきれていない」などのオンパレード。
その後、原子力規制委員からの質疑がありましたが、質疑を行った上で杉山委員からは、「明確な答えは分からないんだっていうのが科学技術的な限界なのかなっていう印象を持ちました」との言葉があり、愕然としました。
杉山委員が「科学技術」の言葉をどういう思いで使われたのか分かりませんが、文部科学省ホームページにある、「科学技術基本法」における「科学」、「技術」及び「科学技術」について(尾身幸次著「科学技術立国論-科学技術基本法解説」より抜粋)では、
◉「科学技術」とは、「科学に裏打ちされた技術」のことではなく「科学及び技術」の総体を意味する。
◉「科学」とは、一般に、事がらの間に客観的なきまりや原理を発見し、それらを体系化し、説明することをいい、「技術」とは、理論を実際に適用する手段をいう。
とあります。
これに照らせば、原子力安全と国民の利益を追求すべき立場の方が、これに限界を感じ、諦めたとも取れる発言と理解するものであります。
また、質疑に回答する審査チームからは、「事業者の説明では、延びていないということが説明できておりませんので、延びているということを前提にせざるを得ない。そう考えると、耐震重要施設の下に12万〜13万年以降に活動した断層があってはならないという基準を満足していないということになりますので、そこの部分を事業者が説明しきれていないので、我々としては「無い」ということを明確に言えてない以上、「ある」とせざるを得ないということであります。」との説明がありました。
以前に、原子力規制委員会が法的根拠なく設置した有識者会合に係る、敦賀2号機敷地内破砕帯問題への一連の対応を捉え、原子力国民会議が投稿した文面には、まさにこれと同様の発言を捉え、次のように述べています。
(やや長いですが、原文そのまま引用)
これらの発言は、「活断層の存在を否定できない場合、存在しないことを証明するか、それができなければ、存在すると見なす」と言っているようなものである。これは悪魔の証明といわれているもので、普通は、要求してはならないことである。規制当局が規制対象である事業者にこんな事を要請して平気でいられるという神経は到底理解できるものではない。逆に規制当局にしても、そのような要求を自らに出されてもとても対応できるはずはないだろう、とどうして思わないのか。自らも解決できない要求を出して平気でいられる理由は何なのか。普通なら、かくかくしかじかの条件が整えば活断層は存在しないとしてもよい、という現実的な条件があってしかるべきである。このとき、初めて、この要求は現実的な意味を持つ。しかし、その判断基準は示されていないし、作れないだろう。規制当局も含めて、この世界で解決困難な問題を事業者に要求してはならない。このようなことを理解できない規制当局の存在とは一体何だろうかと思わざるを得ない。」
詳細は、原子力国民会議ホームページ「原子力百家争鳴の会(評論)」を以下リンクよりご覧ください。
→活断層に関するまやかし議論の分析例:悪魔の証明問題(2016年9月16日:原子力国民会議HPより)
委員会に戻り、この日の結論としては、「審査チームから報告のあった内容について特段の異論なし、日本原電の社長との意見交換を踏まえ、今後の対応方針を判断する」と締め括られました。
なお、昨日午後行われた原子力規制委員会の定例会見で、敦賀2号の今後の対応について質問された山中委員長は、「立論の方法を変更しなければ当然、我々審査チームの否定を覆すことはできないというふうに考えておりますし。その期間が極めて短いものであるならば、(再補正申請の)可能性としてはないことはございませんけれども、到底、今日の説明を聞いているとそれを覆せるような、立論の方法が短期間で、早急に出てくるというふうには考えられませんし、どういう方法をとらえるのかということを具体的に8月2日の段階で(日本原電社長から)ご説明いただけるとは想像しておりません。ただわかりませんこれは当日の説明を聞いた上ですぐさま判断をしたいというふうに思ってます。」
社長との面談は、事業者とコミュニケーションを図るという意味でのアリバイづくりでないことを祈りますが、絶対的な権限を持つ委員長でさえ、さも「結論ありき」とも取れる考えに映るのは、私だけではないと思う次第です。
規制組織に変化を期待するのは止め、こういう組織なんだと、被規制側である事業者がマインドチェンジして対応するしかないのが現状ですが、果たして本当にそれが、日本の原子力規制行政として、あるいは規制側と被規制側である事業者との関係として「あるべき姿」なのか、疑問と忸怩たる思いはますます大きくなるばかりです。