敦賀発電所2号機審査に関する二つの識者コラム

ブログ 原子力

昨日は、もんじゅ敷地内に設置する新試験研究炉について残念とするブログを書きましたが、一方、ここ数日、既設原子力発電所に関しては良いニュースがあったところ。
 
ひとつは、中国電力の島根原子力発電所2号機(以下、島根2号)が23日、約13年ぶりとなる再稼働(発電開始)を果たしたこと。
 
ふたつ目は、北海道電力 泊原子力発電所3号機(以下、泊3号)の新規制基準審査について、24日に開催された原子力規制員会(以下、規制委)の審査会合で全ての説明を終え、約11年に及ぶ審査を事実上終了。
 
今後は、安全対策などを修正した補正書を規制委に提出し、来年中に「合格」を得たい考えとありました。
 
島根2号の再稼働は、女川2号に次ぎBWRで2基目、泊3号は東日本で同じく女川2号、柏崎刈羽6、7号に次いで4基目の審査合格に向け見通しが立ってきたとあり、大変喜ばしく思うとともに、ここに至るまでの関係者のご尽力に心から敬意を表する次第です。
 
さて、そうした中、原子炉設置変更許可申請書の許可が認められなかった敦賀発電所2号機(以下、敦賀2号)においては、再稼働を目指すことに変わりなく、現在、再申請に向けた追加調査の検討を進めるところ。
 
私自身、一旦、法に基づく判断が下されたことを真摯に受け止めていることを前置きした上で、敦賀2号審査を巡る規制委の対応に関し、ここ最近あった、客観的視点からの識者コラムを2件ご紹介いたします。
 
時系列的に紹介しますと、1件目は、国際環境経済研究所 天野 健作氏(大和大学社会学部教授)が2024年11月14日に同研究所ホームページに投稿した『敦賀2号「不合格」にみる公正審査の疑わしさ』。
 
およそ12年間に及ぶ長期にわたる論争が決着した。とはいえ、何か腑に落ちない。日本原子力発電(以下、原電)が擁する敦賀発電所(福井県敦賀市)2号機は2024年11月13日、原子力規制委員会(以下、規制委)により、再稼働に向けた審査において、正式に「不合格」となった。新規制基準に照らし、敦賀2号は直下に活動層があることを「否定できない」と判断されたのである。規制委は2013年からこれまで、各地の原子力発電所27基を審査してきたが、初めての“落第”だ。
 
筆者は、2012年の規制委の発足直後から、記者として約4年にわたって東京・六本木にある規制委のビルに日夜通い続け、規制委の審査を見続けてきた。現地での活断層調査にも同行するなど、規制委の実態をつぶさに観察してきた経験がある(拙著『原子力規制委員会の孤独』に詳しい)。現在は大学教員として、環境問題の研究や教育に携わっているが、“古巣”の動向については、常に是々非々の立場で見守り続けてきた。果たして、今回の規制委の判断は胸を張って「公正」「中立」と言えるだろうか
 
とのイントロダクションにはじまり、「悪魔の証明」を求める規制委、「活断層は否定できない」、論調分かれるメディア、原電の逆襲は?の項目立てで述べられ、以下の通り結んでいます。
 
近く次期(第7次)エネルギー基本計画が策定されるが、原子力発電所の活用は増えこそすれ、減ることはない。規制委の審査への欺瞞が解消しない限り、こうした不幸な結論が今後も出てくる可能性がある。発足から12年経った規制委は、公正な審査のあり方を再検討し、規制委それ自体の組織を見直す必要があろう
 
→『敦賀原発「不合格」にみる公正審査の疑わしさ』全文はこちら
 
2件目は、クリスマスの昨日、原子力産業新聞に掲載された小島正美氏(元毎日新聞社編集委員)のコラムで、タイトルは『敦賀2号機の不許可理由「可能性を否定できない」は科学的な判断か?』
 

【同コラムのインターネット表示画面】
 
原子力関連で令和六年(二〇二四年)最大のニュースと言えば、福井県の敦賀2号機の再稼働の不許可だろう。「不許可」自体もビッグニュースだが、それを決めた原子力規制委員会の「活断層の可能性は否定できない」という主観的な判断理由も、歴史に残るだろう。ただ何か釈然としない気持ちがわいてくるのはなぜだろうか
 
との書き出しから、不許可の理由は「活断層の可能性を否定できず」、処理水に反対した地方紙はおおむね不許可を称賛、「悪魔の証明」は危うい論理、産経新聞だけは果敢に反対の論陣を張る、「予防原則の乱用」が怖い との構成にて述べた後、こちらも以下の通り結んでいます。
 
最後にひと言。今回の不許可報道で私が危惧の念を抱くのは「予防原則の乱用」が広がる恐れだ。「良くないことが起きる可能性が否定できない」という論理がまかり通れば、どんなテクノロジーも為政者の思うままに規制できてしまう
(中略)
もう一言。原子力発電所を動かすかどうかは、日本全体の未来を左右する極めて社会経済的な問題である。原子力規制委員会(五人の委員)に経済学やエネルギー、社会心理学など社会工学的な専門家がいないのはどうにも腑に落ちない。国民の代表である政治の側からの参戦をもっと期待したい
 
→『敦賀2号機の不許可理由 「可能性を否定できない」は科学的な判断か?』全文はこちら
 
(注)コラム中の「原発」は「原子力発電所」に、「敦賀原発」は「敦賀2号」に置き換えていますのでご承知置きください。
 
以上、本日は2件のコラムをご紹介しました。
 
規制委が、極めて「独立性」の高い3条委員会であるが故、「独善性」に陥らないようにとはこれまでも述べているところ。
 
欧米諸国の例も参考に、日本の原子力規制のあり方、改善すべき点等については引き続き、自分なりに研究してまいります。