2024年9月26日
敦賀発電所2号機の審査書(案)に対する「パブリック・コメント」を提出
9月24日のブログでご紹介した、ひばりケ丘町の「町界町名地番整理事業」に伴い、土地の名称及び地番号変更が行われたことについて。
実施日当日の24日には、これに伴う「本籍」の変更に関する通知と家族分の証明書、続く25日は「住所」の変更に係る同書類が届き、スピーディーな周知に驚くところ。
区としては、届いた証明書をもって、まずはマイナンバーカードや運転免許証など、本人確認に必要なものから順次、変更手続きを行なっていただく旨呼び掛けているところですが、市の担当部署におかれては、おそらく3連休返上で作業いただいたこと、さらには郵便局員の皆さんも、より早く届けるべく配達いただいたことに感謝するところです。
なお、令和5年度に「町界町名地番整理事業」を議決した“ひばりケ丘町”と“萩野町”の事務作業(町の区域設定や新旧地番対照表の作成等)に係る費用は、それぞれ「1,298万円」、「1,727万円」となっており(令和5年度決算資料より)、それだけの作業ボリュームを伴う事業であることも参考までご紹介しておきます。
さて、話しは変わり、現在パブリックコメントを募集している敦賀発電所2号機(以下、敦賀2号)の審査書(案)。
原子力規制委員会が発出した意見募集の正式な名称は、「日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(案)に対する科学的・技術的意見の募集について」とあるものですが、9月28日0時の締切を前に、昨日私も提出した次第。
【原子力規制委員会HPから展開される「e-GOV パブリックコメント」の意見提出ページ】
→上記「e-GOV パブリック・コメント」意見提出ページへのリンクはこちら
意見募集ページにある、原子力規制委員会が示した敦賀2号審査書案(案)に対し、論点の第一にある「K断層の活動性」に関する評価について4項目、審査のプロセスに対しては、①広く第三者の専門家の評価を受けるべき、②申請者の追加調査の申出を認めるべき の2項目について意見しました。
技術的な部分は、これまでの審査会合などでの議論を確認したうえで、また原子力規制委員会が自ら掲げる「活動原則」や審査の指針となる「審査ガイド」などと照らして意見書を作成した次第ですが、文字にして約6,000字(A4で6ページ)となったことから、ここでは意見のみご紹介し、それぞれの理由については割愛いたします。
※審査のプロセスに関しては、要約が難しいため全文掲載します
以下、提出したパブリック・コメント
1.審査書(案)に対する意見について
意見1
<該当箇所> P.14 9行目〜22行目
2.D-1トレンチ内におけるK断層の分布と性状
(3)D-1トレンチにおけるK断層の変位・変形
ii.原電道路ピットにおけるK断層の変位・変形
規制委員会がK断層の活動性を評価することはできないとするa〜cの理由すべて。
<意見>
申請者の評価に対する規制委員会の考えを記載するとともに、一度途切れたK断層が、存在しない地層に再び現れていたかもしれないとする可能性の妥当性を記載すべき。また、上載地層が消滅している場合の手法として有効な鉱物脈法による評価についても関連づけて記載することに加え、申請者が8月2日開催の第24回原子力規制委員会 臨時会議の場で申し出た、上載地層が存在しない場合の追加調査を受け入れなかった明確な理由も付すべきではないか。
意見2
<該当箇所> P.15 1行目〜2行目
3.K断層の活動性
(4)K断層の活動性の評価
規制委員会は、K断層の活動性の評価について、以下のことから、K断層は後期更新世以降(12~13 万年前以降)の活動が否定できないと判断した。
<意見>
「活動が否定できないと判断した」を「活動を十分に否定できていないと判断した」に修正すべきではないか。
意見3
<該当箇所> P.15 14行目〜17行目
3.K断層の活動性
(4)K断層の活動性の評価
ⅱ.K断層の変形・変位
a. D-1トレンチでは、全体的に連続して分布する地層が存在しておらず、活動性の評価に用いる③層について、浸食で形成された溝(チャネル)に堆積した地層により連続性が断たれ、面的な広がりがなく局所的な地層で構成されているなど、活動性を評価する地点として妥当とはいえない。
<意見>
「D-1トレンチでは、全体的に連続して分布する地層が存在しておらず、活動性の評価に用いる③層について、浸食で形成された溝(チャネル)に堆積した地層により連続性が断たれ、面的な広がりがなく局所的な地層で構成されているなど、活動性を評価する地点として妥当とはいえない。」とする科学的根拠・妥当性について、上載地層法を用いて活動性評価を行っている他の地域での評価実績も考慮しつつ、客観的データを用いて示すこと等により、規制者としての説明責任を果たすべきではないか。
意見4
<該当箇所> P.15 24行目〜28行目
3.K断層の活動性
(4)K断層の活動性の評価
ⅱ.K断層の変形・変位
c.原電道路ピット及びふげん道路ピットにおけるK断層について、K断層は、上方に向かって断続的に出現する特徴を有していることを踏まえると、既に除去され、現在は存在しない地層で再び現れていた可能性があるが、現状では上位の地層におけるK断層の変位・変形の有無が確認できないため、K断層の活動性を評価することはできない。
<意見>
このような評価は「科学的な判断」といえず、申請者からの追加調査の申出を認めることなく結論付けた根拠を含め記載すべきではないか。
2.審査のプロセスに対する意見について
意見1 広く第三者の専門家の評価を受けるべき
本件審査の過程においては、第22回原子力規制委員会(令和6年7月31日)の場で委員からは、「明確な答えは分からないんだっていうのが科学技術的な限界なのかなっていう印象を持ちました」との発言があったことに加え、第27回原子力規制委員会(令和6年8月28日)では、規制庁からの審査書案説明の後、意見を求められた同委員からは、「専門的なことに踏み込んだ判断を私ができる訳ではないんですけれども、元々この分野の判断がシロクロつけることが簡単にできる分野ではないと認識しております。」とあった。
このように、高い専門性が求められる地質構造等に関わる審査に対し、委員自らが、本来追求すべき科学技術や自らの能力に限界を感じるような発言があったところであり、規制委員会は「高い専門性を伴う科学的・技術的な審議」を経ずに非専門家間で重要な判断を行ったことが明白である。
こうした状況や本件審査書案においても、明確な活動性を言うのではなく、「可能性を否定できない」や「不確かさ」などをもって判断されようとしていることを踏まえれば、まさに原子力規制委員会の活動原則にある、「国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒める」ことが求められているものと考える。
また、原子力規制委員会「敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド」の「5.調査及び調査結果の信頼性」では、以下の記載がある。
基準地震動及び基準津波の策定等に関する調査に当たっては、調査手法の適用条件及び精度等に配慮し、目的に応じた調査手法により実施されることが必要であり、可能な限り、最先端の調査手法が用いられていることが重要である。また、立案段階の調査計画を含め調査結果・評価に係る全てについて公表されることが望ましく、広く第三者の専門家の評価を受けることによって調査結果の信頼性と精度が向上する。その際、一部の整合していないデータについても、その整合しない理由とともに公開されることが重要である。
なお、外部の学識経験者等に評価を依頼する場合には、中立性の確保が必要である。
ついては、原子力規制委員会が自ら定める「活動原則」、「審査ガイド」に照らせば、本件審査にこそ、広く第三者の専門家の評価も踏まえたうえで調査、評価すべきであったと考えるが、それを行わないとした規制委員会の考え方、あるいは第三者の意見や評価を求める基準について明らかに説明すべきである。
意見2 申請者の追加調査の申し出を認めるべき
令和6年7月24日に行われた原子力規制委員会の定例会見において、地層・地盤審査に関し問われた山中伸介委員長は、「非常に証明が困難で時間がかかったサイトもあるが、丁寧に評価をしていけば、事業者はキッチリとそれを証明することができるという問題なので、あくまでもこれは悪魔の証明ではないという、私はそういう見解です。」と述べている。これは、原子力規制委員会と申請者との間で丁寧なコミュニケーションを図り、申請者が重ねる追加調査から得られた最新知見や科学的データをもって、審査が進められてきたことを示すものと認識する。
一方、敦賀発電所2号機の審査に関しては、現申請書の範囲内か否かはあるにせよ、第1272回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合(令和6年7月26日)においては、追加調査の実施を申し出た申請者に対し、「そちらで将来やられるのはご自由」との発言がされている。
また、第24回原子力規制委員会 臨時会議(令和6年8月2日)では、「新しい立論方法に関して具体的に乏しい、期間が非常に不明確、多少データが付け加わったところで審査チームが出した技術的な評価というのが変更になる可能性というのは極めて乏しい」などとの見解が示され、結果して原子力規制庁の確認結果に基づき、審査書案を取りまとめることが指示されている。
前述の山中委員長の考えと今回の取扱いを比べるに、まずは、評価に関わる新たな科学的技術的データが得られる可能性のある追加調査を自ら否定をしていること、根拠を示すことなく、データが付け加わったとて評価が変更になる可能性は極めて乏しいと予断していること、さらには、申請者への「ご自由に」との発言は規制側と被規制側相互のコミュニケーションの観点から看過できないものと考える。
ついては、山中委員長曰く「丁寧に評価」するために不可欠な、科学的技術的データが補完される追加調査の申し出(現申請書の範囲内のものまでも)を、本件審査に限って何故求めなかったのか、あるいは受け入れなかったのか。
活動原則にある「孤立と独善を戒める」とする「透明で開かれた組織」として追加調査を認めるべきと考える。
以上が、私の提出した意見の概要です。
意見提出の締め切りは9月28日0時までとなっておりますが、より多くの意見が提出されることを期待するとともに、原子力規制委員会殿におかれては、集まった意見に真摯に耳を傾けていただき、修正をお願いする次第です。