2025年10月12日
心の中に生きる水戸天狗党の「清廉の義」
「幕末の悲劇」とも称されている「水戸天狗党」。
元治元年(1864年)に藤田小四郎らを中心に筑波山で挙兵した後、京にいる一橋慶喜を頼り、朝廷に尊王攘夷を訴えようと約千名が行軍。
その年の12月、風雪の中、木ノ芽峠を越えて敦賀の新保村に着陣したものの幕府軍に捕らえられ、首領の武田耕雲斎、藤田ら天狗党は、ここ敦賀の地で処刑されるという幕末の歴史。
水戸天狗党の行動については賛否、是非がありますが、総大将の武田耕雲斎先生以下、烈士411柱の御霊を祀るのが敦賀の松原神社であり、当時から連綿と敦賀水戸烈士遺徳顕彰会や市民の皆様の手によって守られ、顕彰されてきていることに心から敬意と感謝を申し上げる次第です。
その松原神社では、毎年10月10日に例大祭が斎行されており、ちょうど一昨日、私も参列したところです。

【例大祭が斎行された松原神社】
この例大祭には、敦賀市長や教育長、県議会議員、敦賀市議会議員をはじめ、市内の関係者はもとより、市外からは水戸市、常陸太田市、潮来市よりそれぞれ市長、議長を始め多くの皆様がご列席のもと、厳粛な雰囲気のなか執り行われ、遺徳を偲ぶとともに、安らかに眠られんこと祈りを捧げた次第です。
なお、天狗党の関係から、水戸市と敦賀市は水戸烈士没後100年(1965)には姉妹都市となり、以降、相互交流が続けられているところですが、今年はそれから60年。
今後末永くの友好関係をお願いするとともに、両市の益々の発展を祈念するところであります。
また、例大祭を終えた後は、参列者一同で神社の向かいにある「武田耕雲斎等墓」(幕府が下した斬首刑により敦賀で命を落とした353名の名前が墓石に刻まれている)を参拝。
国を思う一心で行動を起こし、純粋な「誠」と「義」、まさに「散って燃ゆる」武士道を貫いた、耕雲斎先生らの墓前に静かに手を合わせました。

【参列者一同、耕雲斎先生らの墓前に線香を手向けました】
こうした水戸天狗党の遺徳・顕彰に関しては、挙兵160年の昨年開催した、気比史学会主催の敦賀市民歴史講座(第4講)において、中央大学資料館事務室(法と正義の資料館・大学史資料館)学芸員の岩立将史氏を講師にお迎えし、『水戸天狗党ーゆかりの地における慰霊・顕彰と評価一』をテーマにお話しいただきました。
そこでは、水戸天狗党ゆかりの地における慰霊・頭彰を概観したうえで、各地域で出版された書籍などの叙述から天狗党の評価をご教授いただいた訳ですが、水戸市、下仁田市(群馬県)、下諏訪町(長野県)、飯田市(長野県)、敦賀市のそれぞれが、墓標や留跡碑の建立、祭りの開催などの行事を行なっていること。
「ゆかりの地における『戦前』と『戦後』の天狗党の評価を分析する」では、「戦前」が表現は異なるものの、各地域において天狗党=勤王(国家功労者)と評価している点が共通していること、(皇国史観の影響か)、「戦後」が茨城県や長野県、福井県において、天狗党の行動が明治維新の契機となった旨が述べられている点が共通しているとし、戦前から戦後にかけて、天狗党は「勤王(国家功労者)」から「明治維新の契機となった人々」と評価が変化している(好意的に捉えている点は共通か)との結びがありました。
なお、敦賀においては、元治2(1865)年2月に処刑された際に形成された「五塚」を、慶應2(1866)年頃には一所に集めて八間四方「墳塋」(ふんえい)したうえ、明治元(1868)年には、12間四面の方塚となり、墓石を建立しています。
さらに、明治2(1869)年7月、敦賀の真言宗行寿院峻山は水戸藩を通して太政官に天狗党の祭祀の許可を出願。
明治8年1月、松原神社創建と天狗党の祭祀が許可され、明治11年10月10日、祭粢料500円が滋賀県(当時の敦賀は滋賀県)に下賜されており、以降、先に述べたよう、例祭日である10月10日に連綿と「例大祭」を執り行ってきています。
このように、昨年の講座を思い返し、敦賀の人々が、水戸天狗党を「勤王」の「有為の士」、「義士」として敬意をもって祀ってこられたことをあらためて認識した次第。
結びに、例大祭で常陸太田市長の祭文にあった、水戸天狗党を表する言葉は「清廉の義」。
心が清らかで私欲なく、正しいと思った道を進むこと。
激動の幕末に貫いたその「義」は、混沌とする現世においても深く、自身の心の中に生きるものであります。
<参考>
水戸天狗党を取り上げた、過去の「やまたけブログ」(5件)をご紹介いたしますので、関心のある方は以下リンクよりご覧ください。
→①天狗党の志士に思いを馳せる(2019年11月3日ブログ)
→②幕末の悲劇「天狗党」〜武田耕雲斎からの手紙〜(2021年7月10日ブログ)
→③水戸「弘道館」で幕末の歴史に思いを馳せる(2023年8月7日ブログ)
→④筑波山での挙兵から160年〜松原神社例大祭にて水戸烈士の遺徳を偲ぶ〜(2024年10月11日ブログ)
→⑤『水戸天狗党ーゆかりの地における慰霊・顕彰と評価一』〜敦賀市民歴史講座(第4講)〜(2024年10月13日ブログ)






