大分県豊後高田市の移住・定住施策を学ぶ

ブログ まちづくり

嶺南広域行政組合議会の行政視察2日目は、大分県豊後高田(ぶんごたかだ)市へ。
 
嶺南地域も同様、全国的に人口減少が進む中、「住みたい田舎ベストランキング」において、12年連続ベスト3を達成している同市の移住・定住の取組み状況を視察しました。
 
なお、このランキングは、全国の市町村を対象に宝島社が独自のアンケートを実施した結果により決定されたもので、豊後高田市は、このランキングで初代1位を獲得。
 
その後もベスト3以内のランクインを続け、全国で唯一「12年連続ベスト3」を達成していることに加え、今回は全国初となる4年連続※全部門第1位に輝いています。
 
※全部門
①「人口3万人未満の市」のうち、全世代対象の総合部門
②若者世代・単身者が住みたいまち部門
③子育て世代が住みたいまち部門
④シニア世代が住みたいまち部門
 
視察では早速、地域活力創造課のご担当の方から取組み内容をお伺いしましたが、まず平成17年の1市2町合併当時(人口約24,000人)から人口増施策を実施しているとあった上で、移住者のアンケート結果からは「自然の景観が住みやすい」との回答が多く、充実した各種施策の前に、功を奏している理由には、豊後高田市の魅力「山 里 街 海 温泉」があるのではとのお話が印象に残りました。
 

【説明いただいた資料の表紙からもその思いが伝わってきます。】
 
このうち、「街」に関しては、一番元気な時代にあった昭和30年代の商店街を、行政・商工会議所・商店主が協力し、「昭和の町」として保存再生。
 
まち起こしとして活用し、映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(故西田敏行氏出演)のロケ地となり、撮影の際には200〜300名のスタッフが滞在したほか、現在は年間約40万人の観光客が訪れているとの紹介がありました。
 
また、「人口増」と「新たな観光振興」を掲げる同市の実際の人口データでは、大分県内の全部過疎の自治体では、人口減少率が一番低いことに加え、国勢調査に基づく人口推計では珍しい、平成22年vs平成27年で上方修正されています。
 
さらに人口動態では、ここ10年、転入者が転出者を上回る「社会増」(令和5年は75人増)が続いていることや、①県外からの転入者が多い、②県を跨いで移動する女性の転入超過者がプラス であることが、同市の転入者の特徴とご教授いただきました。
 
(補足)令和5年度は、121世帯 247人が移住。10年間では1,339世帯、2,903人が移住(現人口の約13%にあたる)。
 
具体的な施策については、住む場所、働く場所、子育て環境の充実をきめ細やかに実施され、住む場所については、「空き家バンク事業」や「空き家リフォーム事業」、「空き家マッチング事業」などを実施。
 
空き家の紹介は、固定資産税納付書送付時にチラシを同封していることや地域のサロンでも紹介するなど、常時100軒程度が登録。
 
毎年30軒程度が利用され、約30軒が登録されるなど、市民の方々にも浸透、協力いただけているものと感じました。
 
面白い取組みとしては、県外からお孫さんが親の故郷(豊後高田市)へUターンする場合に奨励金を支給する「孫ターン奨励金」(10万円)や県外から妻の故郷にIターンする場合の「愛ターンお婿さん奨励金」(10万円)があり、趣向を凝らした展開がされていました。
 
就労支援については、市内企業への就職希望者を応援する「豊後高田市就職応援企業ガイド」を設置のほか、最新の求人情報掲載、奨学金返済支援事業などを実施。
 
“全国トップレベルの本気”を掲げる「子育て支援」では、主に以下の取組みを実施。
 
・高校生までの医療費無料
・0歳~中学生までの給食費無料
・市内保育園保育料と公立幼稚園授業料の完全無料
・子育て支援拠点施設「花っこルーム」を市内4カ所に整備
・子育て応援誕生祝い金で最大200万円を支給
・妊産婦の医療費無料
・高校授業料の完全無料(市外の学校に通う生徒を含め、全世帯に拡充)
・子育て応援入学祝い金(小中高入学ごとに)5万円
・高校生までの入院時の食事代無料化
・高校生に対する昼食の無料提供(給食センターでつくった弁当を提供することで準備中)
 
その他、全国モデルにもなる無料の市営塾「学びの21世紀塾」や「土曜日講座」、「放課後寺子屋講座」など、県内トップクラスの学力を誇る教育環境の充実を図っていることも特徴的でした。
 
ここまで各種事業をきめ細やかに、拡充し続けていることを聞いて、気になるのは財源。
 
同市では、ふるさと納税を「子育て」限定し寄付いただいており、その原資約4億円をこれら事業に充てているとのことでした。
 
結びに、成果を挙げていることに対する、ご担当の方からあった言葉は「市の総合力を上げていく」こと。
 
何かに特化するというのではなく、総合的な政策を結びつけていくこととの意味でしたが、確かにその通りと大変勉強になった次第です。
 
市役所での座学の後は、先ほどご紹介した「昭和の町」を視察し、豊後高田市を後にしましたが、こうした取組みを「嶺南広域行政組合議会」という圏域の単位で学んだことに意義があるもの。
 
この先、嶺南地域も人口減少の波が迫る中で、地域間「競争」でなく地域間「協調」で何をすべきなのか。
 
今回得た知見も参考に、組合議会の一員として考えていきたいと思います。