2025年3月9日
国登録無形文化財登録はゴールではなくスタート 〜「再発見!敦賀のおぼろ昆布」ミニシンポジウム〜
空気はまだ冷たいものの、比較的天気に恵まれているこの週末。
昨日は、以前のブログでもご紹介した、北陸三県で初開催となる「Out of KidZania in つるが2024」(アウトオブキッザニア)が敦賀市総合運動公園などで開催され、その様子がテレビの特集番組やニュースで取り上げられていました。
キッザニアは、こども達が 好きな仕事にチャレンジ し、楽しみながら社会の仕組みを学べる「こどもが主役の街」のことで、その言葉のとおり、敦賀にある様々なジャンルの仕事を子ども達(保護者の方も)に楽しく知ってもらおうと企画されたもの。
将来、敦賀に定着をという狙いがある訳ですが、本日も開催されるこのイベントで、何をおいても楽しく体験いただければと思うところです。
イベントの詳細は、以下のブログ(再掲)よりご覧ください。
→2024年2月24日ブログ『「Out of KidZania in つるが2024」参加者募集中!』はこちら
また、こちらも以前のブログにて、「悠久の歴史と文化を有する敦賀にとって大変嬉しいニュース」と書きました「敦賀のおぼろ昆布製造技術」が国登録無形民俗文化財に登録されることが決定したことについて。
→2024年1月26日ブログ『祝!「敦賀のおぼろ昆布製造技術」が国登録無形文化財に登録』はこちら
本年1月24日(金)に国の文化審議会が開催され、同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、登録無形民俗文化財の登録について、文部科学大臣に答申された(福井県では初めての無形民俗文化財登録)訳ですが、昨日は、「登録決定記念イベント 再発見!敦賀のおぼろ昆布」と題したミニシンポジウムが敦賀市立図書館で開催され、参加してまいりました。
開催チラシにあった内容は以下。
◉基調講演 「食文化の保護継承と無形民俗文化財について」 文化庁 大石 和男 文化財調査官(食文化部門)
◉成果報告 「敦賀のおぼろ昆布製造技術の調査成果と今後の展望」 龍谷大学政策学部 石倉 研 准教授
◉学生発表 「おぼろ昆布産業の現状と展望」 龍谷大学政策学部石倉ゼミ
◉座談会 上記の大石氏、石倉氏、福井県昆布商工業協同組合 森田 貴之 理事長、敦賀市教育委員会事務局文化振興課 奥村香子係長による
大石調査官からは、文化財の体系や文化庁からの視点、石倉准教授ならびに龍谷大学の学生さんからは、調査研究を踏まえての現状と展望について、それぞれ興味深い内容を拝聴した次第です。
【ミニシンポジウムの様子(市立図書館3階 研修室にて)】
加えて、大変貴重な視点やご示唆をいただいたのが「座談会」。
石倉准教授がファシリテーターをお務めになり、上記3名をパネラーとして行われましたが、文化庁、昆布業界、文化行政のお立場それぞれから「おぼろ昆布」の価値あるいは今後について、次のようなお話がありましたのでご紹介いたします。
<国登録無形文化財に登録を受けて>
(奥村)日本遺産登録あたりから取り組んでいるが、今回の文化財登録はゴールではなくスタート。文化財登録されたことを契機に知っていただくことで、「おぼろ昆布」の良さが深まっていくこともあり。産業に従事されている方のお手伝い、業界や市民の皆さんにとっても良くなるよう取り組んでいきたい。
(大石)文化財予算は少なく、年間1千億程度。文化庁としては、背中を押すくらいの感覚。文化財は、地域のアイデンティティと結びついているため、地域の民さんで後押しして欲しい。新幹線効果によって、他の地域に呼び掛けていこうという視点が大事。
(森田)敦賀といえば「おぼろ昆布」と言われるよう取り組んでいきたい。
<今後のこと>
(森田)職人として選択されにくい職種という現実はある。お店では、職人の手すきを実際に観光客の方に見てもらうことに加え、体験もしてもらっているが、そういう取組みを通じ、職人に接客いただくことで、作り手のストーリーも含めて「おぼろ昆布」を買ってもらう。付加価値をつける一助になればと。
(奥村)なぜ登録を目指すのか。誰が見ても分かる価値、肩書きを手に入れるということではないか。これからストーリーを広げていくのが行政の役割であり、市役所の組織体制が今後「文化交流部」として市長部局に移る(予定)ことを考えると、仕事上もマッチしてくる。皆さんに楽しんでもらうことで、滞在してもらうための動機づけになればと思う。
(大石)「バッテラ」は、おぼろ昆布を作らないと出来ない。つまりは、おぼろ昆布を残すということは、バッテラも残るということで貴重。ほとんどが機械製造という中で、おぼろ昆布は手作業でしか作れないレアなもの。クラフトとしての価値がある。なお、おぼろ昆布を食べる場所があまり無く、もったいない。おぼろ尽くしの料理など、ぜひお店を開拓していただきたい。
(奥村)行政的に気をつける点としては、おぼろ昆布は、生業(なりわい)にして生活している産業であるということ。そういう意味でも、業界の方と話をさせていただきながら、良い方向に持っていきたい。
(大石)文化庁でも「100年風土サミット」でネットワーク、知恵を広げていきたい。郷土料理はブームでもある。
(奥村)敦賀の港が、物資輸送の重要な中継点であったことを表すのが「昆布」だった。今後は、食べて広めるという視点も大事にしたい。
私のメモをもとに記載したため、表現が少し異なっている点があればご容赦いただきたいと存じますが、私にとって大変有意義な、そして今後の展開として「鍵」となるようなワードや視点をいただくことが出来ました。
なお、調査から報告書まで作り上げた奥村学芸員の存在自体を心強く感じたのは、私だけではないと思いますが、仰るよう、生業や産業であることを大事にしながら、世界に誇る「食文化ストーリー」を広め、磨き上げることに引き続きご尽力いただけますようお願いする次第です。
「みなとまち敦賀」と「おぼろ昆布」。
敦賀市民の一人として、その歴史と関係性を改めて認識する機会をいただいたことに感謝申し上げます。
(投稿後追記)
私も毎朝、熱々ご飯に「おぼろ昆布」を乗せて食べています(参加されていた方には意味が分かるかと)。
【会場後方に展示されていた「おぼろ昆布」のパネル。今後、市内各所でも展示されてはと。】