2020年10月9日
北海道寿都町及び神恵内村の判断に、国民の一人として敬意を表します
この2日間は、我が国の原子力政策における大きな課題である「核燃料サイクル」の前進に向けて、二つの進展がありました。
ひとつは、7日にありました日本原燃のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料加工工場(青森県六ヶ所村)の安全対策が、原子力規制委員会にて新規制基準に適合しているとする「審査書案」を了承したこと。
これは事実上の「審査合格」を示し、今後、一般からの意見公募などを経て正式合格となる予定です。
そして、もうひとつは、昨日8日、北海道寿都町が町議会の判断も踏まえ、原子力発電所で生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定プロセスの入り口に当たる文献調査への応募を決めたこと。
数万年もの間、放射能を持ち続ける高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋設して安全に隔離保管する「最終処分法」が制定されてから約20年を経ての実質上、本格的な動きとなります。
※平成19年の高知県東洋町は応募したものの、その後住民の反対により断念。
これに関しては、埋設処分の安全性研究の内容や冷静な議論を求めて、8月14日の自身のブログでも考えを記載しておりますので、参考まで以下ご覧いただければと存じます。 →→→外圧なき「高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定」議論を望む
この文献調査に関しては、同じく北海道の神恵内村が調査への請願を採択しており、この北の大地の2町村の判断に対し心より敬意を表するところであります。
参考までに、この地層処分を実現していくためのプロセスは次の図のようになっており、この「文献調査」は、法律に基づく3段階の処分地選定調査の第1段階に当たるものです。
【経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより】
また、地層処分の仕組みや地域の科学的特性については、一人でも多くの方に関心を持っていただき、理解を深めていただくことが必要とし、国においては「科学的特性マップ」(2017年7月公表)により、地層処分を行う場所を選ぶ際にどのような科学的特性を考慮する必要があるのか、それらは日本全国にどのように分布しているかといったことを分かりやすく示しており、その地域特性区分(分類基準)は以下のようになっています。
【同じく経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより。もちろん北海道の両町は「緑色」に該当しています。】
こうした考え方やプロセスを経て、地域の意向と対話重視で進めるものであり、自治体の首長や知事の反対があれば無理に進めない、つまりこの文献調査においても最終処分の建設と直結するものでないことを理解しておくことは、特定の地域のみならず、全国の複数の地域から応募されることにつながり、実現の可能性の枠を広げるという観点からも重要なことと考えます。
こうした中、8日未明には、同じ寿都町内に住む77歳の男性が片岡町長宅に放火未遂とのニュース。
幸いにも町長が直後に気づき消し止めたことで大事に至らず安堵しましたが、恐らくこの日の判断を不満に思った感情的行動であり、絶対にあってはならないこと。
裏を返せば、こうした感情的行動や誹謗中傷を受けることも覚悟のうえで、「何が国益に資するのか」、「次世代に課題のツケ回しをしない」との崇高な信念を持って毅然として行動を続ける片岡町長を始め、寿都町議会、住民の皆さんには重ねて敬意を表します。
これについては、請願を採択した神恵内村に対しても全く同じ気持ちであります。
冒頭述べましたように、原子力発電所から出る高レベル廃棄物の最終処分の問題は、長年の国家的課題であり、「トイレなきマンション」などと揶揄され続けてきたもの。
その課題解決に向けては、まだ小さな一歩かもしれませんが、この小さな二つの町と村が判断したことは、とてつもなく大きいもの。
私たちは同じ国家に暮らし、課題を共有するものとして、決して傍観者になるのではなく、自分ごとに置き換えて、中立で正しき知識のもと冷静に今後の議論・動向を見守るべきであります。
皆さまにおかれましては、その点何卒ご理解いただき、過度の恐れや誹謗することなく、冷静な議論の進展にご協力いただけますよう宜しくお願いいたします。