世界は「原子力を3倍にするためのファイナンス」

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原子力規制委員会は16日、関西電力高浜発電所1号機(以下、高浜1号)の高経年化技術評価に関する保安規定の変更を認可。
 
劣化評価が適切に実施されていることを確認した上、評価の結果を踏まえた施設管理方針の内容も妥当としました。
 
高浜1号機は11月に運転開始から50年を迎えることから、国内初となる50年超運転のプラントとなる見込みであり、今後引き続いての安全安定運転を期待いたします。
 
こうして原子力発電の長期利用を着実に進めることは、わが国の脱炭素化並びに電力の安定供給に向けて極めて重要と認識するところ、国民民主党においては、衆院選の公約に「原子力発電所の建て替え(リプレース)や新増設を進める」と、どの党よりも踏み込んだ政策を掲げている一方、これを進めるには、技術開発や建設にに取り組もうとする事業者の環境整備が鍵を握るところ。
 
そうした中、5月より「エネルギー基本計画」改定に向けた検討を開始している総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会は10月8日、10回目となる会合を開催し、電力システム改革が直面する課題や最近のエネルギーをめぐる国際情勢などを踏まえ議論しました。
 
冒頭、資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は、今回のテーマに関連し「こうした議論をしている間にも大きな変化が生まれている」と絶え間ない世界の潮流変化を強調。
 
一例として、9月にマリオ・ドラギ氏(前欧州中央銀行〈ECB〉総裁・前イタリア首相)が、EUの産業競争力強化に向け公表した「The future of European competitiveness」(通称、ドラギレポート)の他、同月の米国コンステレーション社によるスリーマイルアイランド原子力発電所1号機の再稼働と、その全発電量を20年間にわたりマイクロソフト社に供給する計画発表などを紹介し、「欧米に見られる脱炭素化の大きな動きだ」と指摘しました。
 
また、杉本達治委員(福井県知事)は、立地地域の立場から、「既設炉、革新炉を問わずに、事業者が安全対策を十分に行えるよう、国が事業環境整備を行うことが重要。原子力の必要規模・開発の道筋など、原子力の将来像をより明確にする」ことを改めて要望。
 
資源エネルギー庁からは、9月の国連総会サイドイベント「原子力を3倍にするためのファイナンス」会合における世界の主要金融機関14社(ゴールドマンサックスなどを含む)が原子力への支持を表明したことも紹介。
 
同調査会の原子力小委員会委員長も務める黒﨑健委員(京都大学複合原子力科学研究所教授)は、脱炭素電源それぞれのメリット・デメリットを認識した上で、原子力発電のビジネス化に関し、「リードタイム・総事業期間が長いことに尽きる。最初に大規模な投資を図り、安定的に長く利用するもの」と、その特徴を説明した上で、「事業の予見性が重要」と述べ、民間による投資の限界に言及しつつ、国による関与の必要性を指摘しました。
 
なお、同分科会で示された事務局(資源エネルギー庁)提出資料を以下にリンクしますが、「電源の脱炭素化に向けた事業環境整備」について記されたスライドを抜粋掲載しますのでご覧ください。
 
 →基本政策分科会(10月8日)資源エネルギー庁提出資料はこちら
 


 
会合の結びに隅分科会長は、「脱炭素化と産業競争力を両立させる現実的な政策」の必要性をあらためて強調し、今後、具体的な制度設計が図られるよう、次期エネルギー基本計画に「しっかりと方針を盛り込んでいく」との考えを述べたよう、国の政策会合では、ここまでの議論がされています。
 
翻って、先の政治でのエネルギー政策論議はどうでしょうか。
 
「原子力ゼロ」や「再生可能エネルギー100%」で電力を賄うといった絵空事は論外とし、とりわけ原子力発電のような「票にならない政策は選挙で言わない」ことを続けていては、国力は低下するばかりと考えます。
 
奇しくも「エネルギー基本計画」改定に向けた議論と並行しての衆院選となっておりますが、「票にならないことこそ」真剣に、各党の考えをぶつけ合っていただくことを期待する次第です。