2025年6月25日
ホルムズ海峡封鎖とわが国のエネルギー危機
米国がイランの核施設を攻撃した。報復へ、イランは世界のエネルギー供給の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖するとの観測が消えない。日本は燃料のほとんどを輸入に頼る。原油は一定量の備蓄があるものの、事態が長期化すれば原油価格の高騰が電気代などに波及する。経済活動全体の下押し圧力となる恐れもある。
これは、23日にあった日本経済新聞の記事。
こうした状況を受け、武藤経済産業大臣は24日の閣議後の会見で、ホルムズ海峡が封鎖された場合の対応について「安定供給に支障が生じるおそれがある場合には、IEA=国際エネルギー機関やその加盟国と緊密に連携しつつ、必要があれば、石油備蓄の活用を検討することも含めて、適時・適切に対応していく」と述べました。

スペースシャトル「コロンビア」から見たホルムズ海峡(1991年6月撮影)。ペルシア湾(上)とオマーン湾(下)の間の狭い海峡で、世界の原油の約20%が通過する。右はイラン国土、左はアラビア半島(NATIONAL GEOGRAPHICより引用)
備蓄放出といえば最近は「米」ですが、今度は石油かと、食料そしてエネルギーの自給率の低さにあらためて危機感を抱くところ。
なお、石油の備蓄に関しては、2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略に起因する国際エネルギー市場の深刻な需給ひっ迫に対応するため、国際エネルギー機関(IEA)が、2022年3月と4月に二度の閣僚会合を開催し、石油備蓄放出の協調行動について合意。
これを受けて、日本は、民間備蓄石油の放出(1,350万バレル)に加えて、「石油の備蓄の確保等に関する法律(昭和50年法律第96号)」(以下「石油備蓄法」という。)第31条に基づき、国家備蓄石油の放出(900万バレル)を行った経験があります。
石油備蓄法に基づく国家備蓄石油の放出は、1978年の国家備蓄制度の創設以来、初めてのことでした。
6月13日に閣議決定した、2024年度版のエネルギーに関する年次報告(通称:エネルギー白書)を見ると、第2部『第1章 安定的な資源確保のための総合的な政策の推進』の冒頭には以下の記載があります。
日本では、一次エネルギー供給の多くを、海外から輸入する石油・石炭・天然ガス等の化石燃料が占めており、また省エネ機器や再エネ発電機器等に必要不可欠な原材料である鉱物資源についても、その供給の大宗を海外に頼っています。
このような脆弱性を抱える中、近年では、資源確保を取り巻く環境は大きく変化しています。具体的には、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化、世界的な脱炭素化の潮流に伴う上流投資の減少等が挙げられ、日本として、エネルギー安定供給に向けた継続的な取組が不可欠となっています。
〈引用終わり〉
日本は原油の約9割、天然ガスの1割弱を中東地域から輸入していることを踏まえれば、チョークポイントであるホルムズ海峡を通らない輸入先の確保等、供給源の多角化を進めることや、中東の産油国をはじめとする資源供給国との良好な関係を深化させることが重要です。
また、同白書の第4章『原子力政策の展開』では、同じくロシアによるウクライナ侵略、中東情勢の緊迫化等を受け、エネルギー安全保障への対応が急務となっているとし、加えて、DXやGXの進展により電力需要増加が見込まれる中、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況にあること。
こうした背景を受け、2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスの取れた電源構成を目指すとともに、脱炭素電源を確保するため、再エネか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再エネと原子力を共に最大限活用していく方針が示されました。
縷々述べましたが、ホルムズ海峡封鎖が現実に起きた場合、国内の備蓄が底をついても海外から輸入する(根本的な問題は置き)という米と違い、原油はそれができない。
ただでさえ「電力需給ひっ迫の夏」を迎える中、さらなる危機に直面していると言っても過言ではありません。
エネルギー資源のないわが国が、いかに自給率を高めていくかは先の大戦後からの課題であり、夢物語や理想(再エネ100%で賄うとか)ではなく、「極めて現実的」(原子力の最大限活用)な政策でなければならないことをご理解いただきたく存じます。






