2024年12月9日
カナダで深地層処分場サイトが決定
これまでも、原子力発電を巡る開発や規制に関し、日本と海外諸国との違いを紹介してきましたが、本日は原子力産業新聞の記事で知った、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の地層処分について。
日本においては、令和6年11月22日、原子力発電環境整備機構(NUMO)が、北海道寿都郡寿都町及び北海道古宇郡神恵内村における文献調査の報告書及び要約書を公表し、同日、NUMOの山口理事長が鈴木北海道知事に報告書等を手交したところですが、一方カナダ。
カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は11月28日、同国の使用済み燃料を処分する深地層処分場の建設地をオンタリオ州北西部のワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)イグナス地域に決定したと発表しました。
カナダでは、原子力発電所の使用済み燃料を再処理せずに深地層処分する方針であり、2002年に設立された NWMOが、カナダの中・高レベル放射性廃棄物の安全かつ長期的管理を任務とし、2010年から使用済み燃料の深地層処分場のサイト選定プロセスを開始していたところ。
当初、22自治体が処分場の受け入れに関心を表明し、NWMOは集中的な技術研究を重ね、2地点に絞った結果、今年11月中旬には、先住民族であるWLONがイグナス地域の西およそ48kmのレヴェル湖エリアに処分場の誘致意思を示したと発表。
なお、イグナスの議会は今年7月、住民投票の結果、処分場の誘致に前向きであることを決定していました。
今後は規制評価段階に入り、NWMOは処分場の建設許可が2033年までに発給されると見込んでおり、以降の建設期間を経て、2040~2045年に操業を開始したい考えで、サイトとなるレヴェル湖エリアの結晶質岩層の特性にもよりますが、処分場は地下約500m、面積約6㎢に建設される予定とのこと。
サイト決定を発表したNWMOのL.スワミCEOは、その意義を強調するとともに、誇りをもって、「本プロジェクトはカナダの環境問題を解決し、気候目標を支援するもの。カナダ人と先住民が主導し、同意に基づく立地プロセスで推進された。これが歴史を作るということだ」と発言しています。
【写真左がNWMOのL.スワミCEO(原子力産業新聞より引用)】
このように、22の自治体が手を挙げたことはもとより、スワミCEOからあった、「カナダ人と先住民が主導し」の言葉の背景にあることが日本との違いと感じたところ。
そうした意味において、北海道の寿都町、神恵内村には改めて、心から敬意を表するところですが、高レベル放射性廃棄物の最終処分という国家的課題は、これまで原子力発電のメリットを享受してきた、日本国民全体で、且つこれ以上先送りすることなく解決すべき問題。
日本においては、この問題を「核のごみ」、「トイレなきマンション」(のトイレを意味する)などと揶揄する言葉ではなく、カナダのように、地層処分の意味合いを広く理解のうえ、科学的思考をもって、原子力立地地域であるか否かに関係なく、取り組んでいかねばなりません。