『第7次エネルギー基本計画』の原案が示される

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先日発行した「やまたけNEWS(第22号)」でも触れた、次期『第7次エネルギー基本計画』について。
 
恒常的な電力需給ひっ迫と電気料金高騰に喘ぐわが国においては、安価で安定的な電力供給が強く求められるところであり、「原子力か再エネか」の不毛な二項対立ではなく、他国依存度の低い脱炭素電源を幅広く確保していくことが、日本再生の生命線。
 
加えて、2017年以降、世界で建設された32基の原子力発電所のうち、27基がロシアと中国であり、このままでは早晩、原子力技術分野が中露に掌握されてしまうことから、「エネルギー安全保障」の観点からも、現行計画にある「原子力依存度を可能な限り低減」の文言を削除することによって、将来に亘って活用する意思を明確にすべきと述べたところ。
 
その『第7次エネルギー基本計画』が17日、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会計画にて原案が示され、全文に目を通しました。
 
 →「エネルギー基本計画(原案)の概要」はこちら
 →「エネルギー基本計画(原案:全文)」はこちら
 
部分的に『第6次』とも見比べながら読み進めましたが、前回と同様、エネルギー政策の原点としてまず「福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組む」ことを第一に挙げつつ、基本的視点に掲げる「S+3E」(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)の観点では、置かれた状況を含め、より丁寧に書かれている印象を持ちました。
 
また、基本的考え方の総論では、「DXやGXの進展による電力需要増加が見込まれる中、それに見合った脱炭素電源を十分確保できるかが我が国の経済成長や産業競争力を左右する状況にある。脱炭素電源を拡大し、我が国の経済成長や産業競争力強化を実現できなければ、雇用の維持や賃上げも困難となるため、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していくことが極めて重要となる。」と、まさにNEWSで述べたことと同じ認識に立っていることを確認。
 
原子力に関しては、同じく冒頭述べた、これまでの「原子力依存度の可能な限りの低減」の文言を削除したことは良かったと。
 
原子力発電の「優れた安定供給性、技術自給率を有し、他電源とそん色ないコスト水準で変動も少なく、一定の出力で安定的に発電可能」とのメリットを強調した上で、立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションの深化・充実、バックエンドプロセスの加速化、再稼働の加速に官民挙げて取り組む。
 
新増設・リプレースについては、「廃炉を決定した原子力を有する事業者の原子力発電所サイト内での、次世代革新炉への建て替えを対象として、(中略)具体化を進めていく」と記載されたほか、次世代革新炉の開発・設置に向けては、研究開発を進めるとともに、サプライチェーン・人材の維持・強化に取り組むことが明記されました。
 
一方、『既設炉の最大限活用』の項では「再稼働加速タスクフォース」等の取組み、『次世代革新炉の開発・設置』では〝規制当局と共通理解の醸成を図る”とありましたが、主語はいずれも事業者。
 
とりわけ、喫緊の課題である電力需給の改善に向けては、長期化している適合性審査を加速させることが不可欠であり、規制機関の体制強化や審査の効率化を図ることが必要と考えますが、計画にこれを書くことはタブーなのか。
 
また、他の電源についても同様、考え方が示された上で、2040年のエネルギー需給見通しに関しては、発電電力量は1.1~1.2兆kWh程度、電源構成では、再生可能エネルギーが4~5割、原子力が2割程度、火力が3~4割程度と提示されました。
 

【参考:2040年度におけるエネルギー需給の見通し(令和6年12月17日 基本政策分科会資料より抜粋)】
 
電源比率に関しては、2040年までの既設原子力の再稼働、次世代革新炉によるリプレースなどの進捗予想の中で脱炭素電源比率を引き上げねばならないことを考えれば、「致し方ない」と思いつつも、主力電源を「再エネ」に置くことにはやはり違和感を唱えるところ。
 
先日、各電源のコスト試算も発表されましたが、重く乗っているのは、再エネ比率上昇に伴う統合費用の増加であり、さらには、年間約3.5兆円にも及ぶ、国民の皆さんかが負担している「再エネ賦課金」を思えば、将来主力にすべきはやはり「原子力発電」と考える次第です。
 
とはいえ、火力発電の活用なども含め、前回に比べれば「現実的」となった基本計画案であり、引き続き、年内にも最終原案を固める見通しとされる今後の議論を注視する所存です。