2025年4月7日
『取材を通して見たろう者の生活』〜敦賀市聴覚障がい者福祉協会主催「春の記念講演会」より〜
自然とは何とも非情なもので。
敦賀市内の桜がほぼ満開となった昨日は、強い風と時折の雨。
年に一度、待ち侘びて咲いたタイミングで、試練を与えるかの天気を憎らしく思ったところ。
一方、一気に散ってしまうのではと心配した桜は、一部花びらが落ちてしまったものの、これをグッと堪えるかのように咲き続けており安堵。
逆に自然の強さを感じた次第です。
今が主役の桜。
この後は、静かに散る姿に、日本人の心、情緒を感じたいものです
さて、そうした風情に浸りつつ、昨日午後は、敦賀市聴覚障がい者福祉協会主催の「春の記念講演会」に参加してまいりました。
講演会は、『取材を通して見たろう者の生活(聴覚障害者放送通信機構の役割)』と題し、「目で聴くテレビ」でディレクター兼手話キャラクターとしてご活躍されている重田千種様のお話しを拝聴。
重田様は、大阪府出身で「デフファミリー」に育ち、現在は福岡県在住。
なお、「デフファミリー」とは、家族全員が聴覚障害(難聴)のある家族のことを指し、英語の「deaf(聞こえない人、聞こえにくい人)」と「family(家族)」を組み合わせた言葉のこと。
小学校から一般学校に通い、大学・大学院でろう者・難聴者の心理を学び、現在は、障害者放送通信機構が提供している「目で聴くテレビ」で活動されており、豊富な経験と知識を有しておられる方であり、手話通訳者のお言葉を介しての講演会は初めてでしたが、重田様の笑顔とお人柄もあって、終始明るく、やさしい雰囲気で進められました。
【講演会のチラシ】
以下、メモに書き留めた点だけご紹介いたします。
◉「目で聞くテレビ」(手話と字幕の番組)は、情報保障、情報発信の2本を柱に1998年に開設。
◉今では、YouTubeなどでも放映している。
◉ろう者に対しては、直接差別と間接差別とあるが、求められるのは形式的平等ではなく「実質的平等」。
◉1965年当時、差別は当たり前の時代にあって、言われたことは「“当たり前”を疑え」。“当たり前”が続くと、(差別の)被害者が増えてしまうことから、ほったらかしにせず声を挙げることが大事とされた。
◉1966年に開催された「全国ろうあ者青年研究討論会」であった“三禁句”は、①「仕方ない」と言うな、②「当たり前」と言うな、③「忙しい」を言うな であった。言っても何も変わらないという意。
◉令和6年能登半島地震の際は、すぐに現地に駆けつけたが、その際聞いた言葉は「避難所は刑務所だ」。音の情報しかない避難所では、例えば食料の配給などがあっても分からず、情報のない社会となった。数日経って、手話通訳者が配置された。
◉避難所へのアイドラゴン配備は非常に有効であり、市役所や社会福祉事務所、道の駅に配備しているところもある。
◉鳥取県と徳島県では、災害時の手話通訳者派遣について、連携協定を締結している。
◉災害以外でも、例えば電車の遅延等の際にも、文字や絵の情報は重要。
◉2年前には「ろう者世界大会」が韓国で開催された。
◉デフ・オリンピックの陸上100m競技で優勝した日本人選手もいて、ろう者に希望を与えている。
最後に、ご自身が活動されている「目で聞くテレビ」の役割について、
①テレビの情報を保障し、安全な行動につなげたり、生活上必要な情報を伝えること
②様々な情報を発信し、仲間たちを元気づけたり、生活に潤いをもたらせること
③被災地の現状を伝えることで、支援の輪を広げること
→「目で聞くテレビ」ホームページはこちらから
→YouTube「目で聞くテレビ」はこちらから
約1時間半の講演は、自身にとってはまさに違った視点からの貴重なものであり、重田様のお話しや思いに大変感銘を受けた次第です。
特に印象に残ったのは、「差別」と「避難所は刑務所」の言葉。
音のない世界で生きる、聴覚障害者の方々の立場に立った対応や施策が一層重要と、改めて認識する機会になった次第です。
お伺いしたことは、自身が生活する上でのことはもとより、議員としても今後に生かしていきたいと考えます。
結びに、このような講演会にお声かけいただいた敦賀市聴覚障がい者福祉協会様に感謝申し上げるとともに、ご講演いただいた重田様の今後ますますのご活躍を心から祈念いたします。