2020年10月21日
「Act Now for the Future 〜未来のための今〜」福井県医師会会長のご講演から得たこと
新たなことへの挑戦や新たな知見を得ることは、前に進む力が生まれるもの。
昨日はまさに、2つの前進する活力を得た1日でした。
まずひとつ目は、午後に開催された敦賀市議会の広報広聴委員会。
こちらのほうでは、今年度の「議会報告会」の進め方と「議会だより」の内容確認を協議した訳ですが、とりわけ「議会報告会」については、コロナ禍に鑑み、これまでの集合形式を止め、初の議会チャンネル放映とYouTube掲載にて開催することとしており、この日は収録・編集をご担当いただく嶺南ケーブルネットワーク(RCN)さんにお越しいただき打ち合わせを行いました。
RCNさんとは細かな収録方法などを確認した後、パワーポイントでの報告資料作成後、1月中旬には各委員会ごとの収録、2月中旬に放映、YouTube掲載することまでを確認しました。
市議会基本条例にも年に1回以上開催するとしている「議会報告会」ですので、コロナ禍とはいえ簡単に止めるだけではいけないと新たな試みを提案したものであり、各委員会、議員各位の協力のもと具現化に向け、引き続き進めていきたいと考えます。
ふたつ目は、18時30分より福井ユニオンププラザで開催された「2020・F-TOP21講演会」。
※F-TOP21とは「福井総合政策フォーラム21」の略称
講師に福井県医師会会長の池端幸彦氏をお招きし、「福井県における新型コロナウイルス感染症のこれまでの経緯と今後の対策 〜いかにして福井県の医療崩壊を防いだのか〜」と題した講演を聞けるということで、福井県の新型コロナ対応に関し、いわば第一線で修羅場をくぐられた方のお話しとあって大変楽しみに出席をしました。
4月の第1波ピーク時には、一歩間違えれば医療崩壊の危機すらあった福井県内医療において、リーダーシップを発揮され福井県・各医療機関との連携のもとその危機を回避した実体験と医療のプロとしての知見を聞くことが出来たことは、私にとって目から鱗の内容ばかりでした。
【ご講演される福井県医師会の池端会長】
ここでは要約して記載しようかと思いましたが、このお話しは皆さんにも是非お知り置きいただきたいとの思いから、私が疑似メモとして記録したものをそのまま掲載することにさせていただきます。
以下、乱文はお許しいただき、お読み取りいただければ幸いに存じます。
◉感染症・新型コロナ全般
・医療を守るためには経済が回らないといけない、経済を回すためにも医療を守らなければならない。即ち、医療と経済は両輪。
・感染症にゼロリスクはない。ゼロリスクを求めるのであればロックダウンするしかない。
・COVID-19(コービッドナインティーン)と呼ぶのが医師流。
・コロナ=王冠。突起を持った形のウイルスであることから「コロナ」と名付けられた。
・最近のウイルスは変わり身が早く、捉えにくいという特性がある。
・ウイルスと細菌の違い。細胞膜、細胞質、核がそろったものが細胞。ウイルスは細胞ではなく、核酸の回りをエンブローブと呼ばれる膜で覆われている。
・細胞は一人で生きていけるが、ウイルスは寄生しないと生きていけない(いわゆる寄生虫)。
・ウイルスは単独では増殖できないので、人の細胞の中に入り込んで増殖することでしか生きられない。
・SARS-1は威力が強すぎて、人が死んでしまうため失敗した(ウイルスの立場で言えば)。人とともにウイルスも死ぬため消滅した。
・COVID-19は、その反省からか(ウイルスの立場で言えば)比較的弱いため、寄生しやすくなっている。
・来年のオリンピックまでに撲滅させることは不可能と考えており、コロナとは上手に付き合っていくしかない。
・Go-Toを批判してもCOVID-19は死なない。正しく怖がることが重要。
・ワクチンは人体実験もしないといけないので、少なくとも2年は要する。
・子宮頸がんワクチンを例にすると、副作用をどこまで考えるかが問題。日本ではワクチンを止めてから子宮頸がんは増えている。
・スペイン風邪は4,000万人死亡。エボラ熱で1万1,000人が死亡。5〜10年に1回はこうした新たな感染症が発生している。
◉福井県の新型コロナウイルス 感染症第1波を振り返って
・3月18日に福井県第1号発生。
・4月10日のピークでは病床占有率が72.1%まで上昇し、本当に医療崩壊の危機になる可能性もあったが、検査の分担をするなど県内医療機関の協力体制のもとその後低下させることが出来た。
・4月12日に開設した「入院コーディネートセンター」で管理を一元化できたのも効果的であった。
・4月15日からは、県医師会長、看護協会長、DMAT、県担当者による定例ミーティング(隔日)にて意思決定スピードを早めた。
・医療関係者を守るためにも情報は開示すべきとの思いで記者会見も行うこととした。報道関係者の認識を正す意味合いも含め、質問対応は徹底的に。正直に話すことで途中からは良い関係性のもと、事実そのままの記事が掲載されるようになった。
・医療科学の世界は確率の問題であり、ミスがあれば必ず引くという勇気が必要。
・福井県は全員入院が基本。実態として、人工呼吸器管理などが必要な重症者は全体の5%。軽症のまま治癒が80%。
・全国ではECMOで2〜3割を救うことが出来たが、福井では3名に使用したが救えなかった。
【第1波を振り返ってのまとめ】
・初動の遅れは致命的であったかもしれないが、情報共有の重要性、多職種の意思疎通の重要性、D-MAT(入院コーディネーター機能)と「福井県感染制御ネットワーク」の活躍、風評被害への対応などにより、厚労省内でも「福井県はよくやった」と言われる対応が出来た。
・出口戦略を含む今後の課題、広報活動の重要性とそのあり方、コロナ禍後の医療機関の経営の見通しなどについては、現在進行形で考えている問題。
◉今後の取り組み
・医学統計的にはまだ言えるまでにないが、ウイルス弱毒化の可能性はある(若年層は重症化しないなど感染状況の傾向から)
・感染症法における入院勧告等の権限の運用見直し(軽症者の自宅療養など)がされたが、福井県は原則入院を続ける。
・検査体制の抜本的な拡充として、一般の医療機関等がPCR等行政検査委託契約を締結。県内全医療機関(530)の約半分にあたる246医療機関が協力してくれたことは大変ありがたいこと。これにより各地域のかかりつけ診療所や地域外来・検査センターに電話予約のうえ、相談・検査することが可能となる。
・PCR検査をすることで医療機関も安心できる。
・検査する医療機関については、風評を懸念し公表していないが、地域の医師会にて把握のうえ、患者に迷惑が掛からないよう(たらい回しなど)相互に紹介する医療機関は決めてある。
◉まとめ
・感染率が低い集団のスクリーニング検査(全員PCR検査)の功罪。感染率については、全世界で約0.435%、日本国内は約0.068%、福井県内では約0.033%。県内人口を全員検査したとすると感染者総数763人、PCR検査陽性者数534人、偽陽性者数229人、偽陰性者数763人となり、統計的に試算される偽陽性者、偽陰性者の数に鑑みた意味合いを考えなければならない。
・コロナで死ぬ人をなくすことが大事で、コロナの人を見つけることは本質ではない。
・何も感染リスクのない人を全員検査することはナンセンスである。
・これからは、「あれはダメ、これはダメではなく」、「ここまではいいよ」と示唆をしていくことが重要。
・感染症を制するものは経営を制する。
・CHANGE!or DIE!!など、COVID-19感染対策の極意
【前カルビー社長の松本晃氏の「経営学語録」を池端会長が改編したもの。確かに経営と感染症対策は通ずるところありですね。】
こうしてお話しを聞き、COVID-19との付き合い方について一層理解することが出来ました。
さらに前を向いて、進む力を与えてくれた池端会長、医療関係者の皆さん、この場を設定いただいたF-TOP21にこの場を借りて感謝申し上げます。
最後に、池端会長が大切にしているとお話しされたこの言葉に、私自身元気付けられたことから、そのことをご紹介し、本日のブログを閉じさせていただきます。
「Act Now for the Future 〜未来のための今〜」
あらゆる「今」は「未来」につながっている、「今」を懸命に生きれば、明るい「未来」はあると。
【福井に向かう途中の杉津パーキングからの眺め。夕陽の沈んだ敦賀湾を照らす立石岬灯台の灯りは未来へと導く道標か。】