「103万円の壁」引き上げを巡る「交渉のボール」やいかに

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「落胆し、怒っている」
 
20日、X(旧Twitter)でこう投稿したのは自民党の高市早苗前経済安全保障担当相。
 
その思いの矛先は、18日の自民、公明、国民民主3党による所得税の非課税枠である「年収103万円の壁」の引き上げを巡る協議で自民が示した案に対してで、さらに高市氏は「党所属国会議員の多数意見とは思えない自民の提案。税制調査会インナーの皆様には、今一度、熟考して頂きたく存じます」と記しました。
 
18日に再開した協議で自民は、令和7年度税制改正大綱に盛り込んだ非課税枠の一律123万円への拡大(国会に法案提出済)を見直し、新たに基礎控除の特例を設ける案を提案したものの、その内容とは、年収200万円以下は37万円、年収200万円超500万円以下は令和7〜8年の特例措置として10万円上乗せ、年収500万円超は据え置くとするもの。
 

【18日の3党協議で自民党が提示した案(日本経済新聞WEBより抜粋)】
 
この案に対し、国民民主党は所得制限をかけず一律で積み増すべきだと要求したほか、公明党も所得制限をかけて160万円に引き上げる案は受け入れない姿勢を示し、自公で検討のうえ、改めて協議することに。
 
なお、協議の後に述べた双方の交渉担当者の主張が対照的で、自民党の宮沢洋一税調会長が「国民民主が言うことに基づいて提示したつもりだったが、あまり評価されなかった」と語ったのに対し、国民民主党の古川元久税調会長は、「本当に国民の側に立っているのであれば我々と一緒に声を上げてもらいたい」と呼び掛けたうえで、自民案を「基礎控除は最低生活にかかる費用には税をかけないということ。年収制限を設けるのは筋としておかしい」と批判しました。
 
Xでは、冒頭の高市発言も波紋を呼ぶとともに、壁の上に壁、年収制限に時限的措置の自民案に対して多くの批判の声が挙がったところ。
 
ところが、こうした世論や自民党批判を察知してか、3党の税制調査会幹部らが21日に開いた協議では、公明から自国に対し示された、(※)160万円までの非課税枠拡大は維持し、年収制限を18日時点の自民案の500万円から850万円に引き上げる案に対し、自民の宮沢洋一会長は「問題ない」との見解を示し、国民民主は持ち帰ることに。
 
3党は25日にも再び協議に臨むとあります。
 
(※)公明党案
◉年収850万円を上限に4段階に分けて基礎控除の特例を設ける。
◉年収200万円以下の人には37万円、200万円超~475万円は30万円、475万円超~665万円は10万円、665万円超~850万円は5万円をそれぞれ上乗せ。
◉200万円以下のみ恒久的措置とし、ほかは令和7、8年に限定する。
 
一貫して非課税枠の一律178万円への拡大を主張してきた国民民主党の古川元久税調会長。
 
18日の自民党案に対し、「(返ってきたボールは)獲れない暴投だ」とコメントされていましたが、昨日の案は受け止める範囲となったのか。
 
まさに「交渉のボールのやり取りやいかに」といったところ、今後は国民民主党が投げ返す番。
 
真っ向ストレート勝負なら、「年収制限なし178万円」譲らずですが、その球筋に注視です。
 
<参考>
17日に敦賀市議会の議員説明会であった「中期財政計画」によれば、法案提出されている「123万円」への引き上げに伴う、令和8年度の市民税(個人)の減収分は約0.8%(約3,000万円)と見込んでいることを、参考まで付しておきます。