2020年7月8日
「避難確保計画」策定に向けた福井県の取り組みについて
敦賀市も本日は激しい雨が降り続いています。
現在「大雨(土砂災害、浸水害)警報」発報中、笙の川の水位も「はん濫注意水位(1.70m)」を超え1.80mまで上昇(8日5:00現在)しています。
RCN防災チャンネル(CH092)などにて気象情報を注視のうえ、皆さんくれぐれも警戒いただきますようお願いいたします。
さて、昨日「肝に銘ずる」とまで申し上げたからには、即行動です。
九州地方の豪雨に関し、とりわけ留意すべきとした高齢者施設などの避難について、昨日のブログで取り上げた「避難確保計画」の策定状況などの調査並びに実態把握を行いました。
まずはこの「避難確保計画」について少し解説。
言うまでもない、近年相次いで発生している大規模自然災害による甚大な被害。
今後も気候変動の影響により、風水害の更なる頻発化・激甚化が懸念され、風水害に対する事前の備えがより一層重要となっていることを踏まえ、平成29年に改正された①水防法、②土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策法の推進に関する法律、③津波防災地域づくりに関する法律の各法では、被災の恐れのある地域において、市町村地域防災計画に定められた「要配慮者利用施設等」の所有者または管理者に「避難確保計画」を義務付けているものであります。
この「要配慮者利用施設等」ですが、実際に「敦賀市地域防災計画」を見ると、医療機関や教育・保育施設、老人福祉関係施設、障がい者支援施設が挙げられ、このうち浸水、土砂災害の発生可能性のある施設が対象となっています。
昨日、課題認識として取り上げた各施設の「避難確保計画」の策定状況については、国土交通省発表による平成31年3月時点でのデータとして、全都道府県で対象となる要配慮者利用施設数「67,901」に対し、避難確保計画を策定した施設数は「24,234」で策定率は「35.7%」の結果。
さらに主な都道府県別の策定率を見てみると、
まず地元「福井県」は「11.3%」
次に北陸三県では、富山県が31.0%、石川県は66.1%
関東圏では、首都東京が23.9%、茨城県31.7%、千葉県42.4%
東海地方では、愛知県49.1%、静岡県は何と78.0%(おそらく全国最高)
関西は、大阪府が9.4%、お隣の滋賀県は14.5%
中国地方で気になったのは、岡山県の3.0%
そして九州で大雨特別警報が発報された各県について、福岡県は25.2%、佐賀県26.0%、長崎県8.3%、そして熊本県2.9%
北と南、日本海側と太平洋側、台風通過頻度が高そうなど、何か傾向や特徴はないかと見てみましたが、地域別で特筆すべきことはなさそうでした。
さらには、市町村別のデータも公表されており、ここは福井県内を紹介しますと、
県都福井市が9.1%
鯖江市(人口規模が敦賀とほぼ同じ)は17.1%
県内で最も高かったのが小浜市で41.9%
そして、我が敦賀市は「25.3%」でありました。
このようなデータ並びに法改正により求められる自治体、施設管理者の役割、避難確保計画の内容などについても把握した後、実態は聞くが早しと市役所の危機管理対策課にお伺いし、お話しを伺ってきました。
すると何と、福井県ではまさにこの「要配慮者利用施設の避難確保計画」の策定に力を入れており、実効性ある具体的な取り組みを進めるべく、令和元年度には「講習会プロジェクト」と題し、施設管理者の皆さんに、避難確保計画作成の必要性や作成方法等に関する理解を深めていただくこと、検討いただいた避難確保計画(案)を踏まえ、他の参加者との意見・知見の交換を行い、自施設の避難確保計画の充実や見直しを図るための切っ掛けを提供する目的で、講習会プロジェクト(要配慮者利用施設の避難確保計画作成に係る講習会)が開催されていました。
このプロジェクトにて参画したのは、永平寺町、越前市、南越前町、そして敦賀市の4市町。
ご当地敦賀市では、令和2年2月5日に敦賀市福祉総合センターあいあいプラザにて敦賀市内の洪水浸水想定区域内、土砂災害警戒区域内に立地する要配慮者利用施設「98施設」の管理者が参加のもと開催、座学に加え、ワークショップ形式で参加者同士の意見交換がされたとのこと。
【敦賀での講習会プロジェクトの様子(福井県ホームページより)】
【同じくワークショップの様子。熱心に議論されている雰囲気が伝わってきます。】
さらには、この取り組みの成果は数字に表れ、令和2年3月現在では計画策定件数「55施設の増」、策定率においては「58%」までアップしました。
今年度においては、未策定施設への働き掛けと作成支援を行うほか、策定した施設での訓練実施の促進及び取り組み状況の把握を行っていくとのことであり、行政主導・指導のもと施設管理者とともに進めていることを把握することが出来ました。
お話しを伺ったうえで、法改正で義務化した意味合いは、自ら計画を策定することで危機意識と責任感を高めること、策定した後も「策定したことに満足せず」各施設の入居者の状況や訓練での課題などに応じて見直しを行うことで、いざと言う時に実効性あるものしていくとのことで理解。
本件に関しては、先月も国土交通省からより詳細で丁寧な「(避難確保計画の)解説」や「作成の手引き」なども発出されており、国が前面に出て「自然災害」に対する強い意思を表しているとも認識した次第であります。
自然災害での被害を最小限に食い止めるためには、ひとり一人が「悲観的に」「当事者意識」を持って対応することが不可欠。
「肝に銘じた」思いを忘るることなく、今後は策定した施設の実態を確認するなど「現場目線」を持って、「策定率100%」に向けた取り組みが数字ありきでなく実効性あるものにすべく、活動にあたっていきます。