「浮世絵」の世界を楽しく学ぶ

ブログ 敦賀の歴史・文化

新たなジャンルの知識を得ることは、実に楽しいこと。
 
先日来ご案内しておりました、気比史学会のミニ歴史講座を昨日開催しました。
 
会場の「ちえなみき」ホームページ、気比史学会のXやインスタグラム、Facebookそれぞれのアカウントでの告知をご覧いただき、日曜の午前中にも関わらず10名の皆さんにお集まりいただき感謝。
 
テーマは「超入門!浮世絵の楽しみ方」。
 
ナビゲーター(講師)に、福井県地域おこし協力隊 歴史観光マネージャーの加治まやさんをお迎えし、まさに「楽しく歴史を学ぶ」ひと時となりました。
 
「浮世絵」に関しては、現在放映中のNHK大河ドラマ「べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜」をご覧になっておられる方も多いかと思いますが、人気俳優 横浜流星さん演じる「蔦重」こと蔦屋重三郎は、かの有名な浮世絵師、喜多川歌麿や東洲斎写楽を世に送り出した、今で言うところの出版プロデューサー。
 
NHKの言葉を借りると“日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上(かみ)に目を付けられても面白さを追求し続けた人物”とのことであり、人気を博しているところ。
 
そうした話題とも連動するかの如く設けられたこのテーマですが、冒頭、加治さんからは、浮世絵の「浮世」とは「憂き世」と掛けられており、それが転じて現世である。
 
江戸の人や社会、流行の風俗が描かれたものが成り立ちであること。
 
一方、西洋の風俗画といえば、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」(1658頃)、ピーター・プリューゲルの「野外での婚礼の踊り」(1656年頃)がありますが、そうしたものと「浮世絵」とはまた一線を画すものとのご紹介がありました。
 
その後、浮世絵には、菱川師宣の「見返り美人図」などで有名な、筆で描かれた「肉筆浮世絵」(江戸時代初期からあり)と、「浮世絵版画」(1670年頃〜)があること。
 
「浮世絵版画」は、
 ①下絵:絵師(例えば、葛飾北斎)が描く
 ②彫り:職人が彫る
 ③摺り:摺師が摺る(狂いなく何回も重ね摺りする作業は「見当をつける」の語源となっている)
の工程で、類まれな技術を用いて制作されていたこと。
 


【色の種類ごとに、何度も重ね摺りされて浮世絵が生まれる】
 
浮世絵の種類には、美人画、役者絵、武者絵、名所絵、風刺絵、寄せ絵に遊び絵などの種類があり、多くの画像をもとに、加治さんから特徴的な作品や技法を説明いただくことで、私自身、浮世絵の魅力を大いに感じることができました。
 

【本物の歌舞伎役者と比べた「役者絵」。見事な再現もさることながら、その伝統が今も変わらず続いていることにも驚き。】
 
なお、「美人画」は、文字どおり綺麗な女性を描いた絵ですが、庶民の娘さんだったり、遊女だったりで、著名な作品に描かれた娘さんや働く茶屋などが大人気になったこと。
 

【蚊帳の中にいる女性を描いたものですが、この蚊帳の網目はどうやって彫ったのか?】
 
「名所絵」は、江戸時代に庶民が旅を楽しむようになり、今で言うポストカードの感覚で作られ、買われていたのではとの紹介もあり、福井に縁のある浮世絵も紹介いただきました。
 
下図の1枚目は福井の九十九橋、2枚目は敦賀の気比の松原。
 


 
地元敦賀の風景に、参加者間で、あそこが二村?あれは夫婦岩では?と盛り上がりましたが、こうして浮世絵1枚を研究していくことは郷土研究にもつながるきっかけにもなると思った次第です。
 
こうして、浮世絵1枚1枚の細部を丁寧に説明いただいたほか、例えば、庶民の娘や遊女の着物をファッションとして捉えるなど、まさに「楽しみ方」を教えていただいた、ナビゲーターの加治まやさん。
 
誠にありがとうございました
 

【やさしい語り口でお話しいただいた加治まやさん】
 
今回のミニ歴史講座は、開催趣旨のとおり「歴史を楽しく学んだ」ところでありますが、単に「学ぶ」に留まらず、浮世絵に表れるよう、江戸時代とは「滑稽(こっけい)」を楽しむ文化。
 
何かと型にはめられた、世知辛い現世となっている感がありますが、そうした気持ちの余裕をもって、過ごしていければと思った次第です。
 

【会場のちえなみき2階 セミナー&スタディの様子。参加いただいた皆さん、誠にありがとうございました。】